CD 2

FIRST SESSION / GRANT GREEN

BLUE NOTE  27548

GRANT GREEN (g)  WYNTON KELLY (p)  PAUL CHAMBERS (b)
PHILLY JOE JONES (ds)

1960

GRANT GREEN (g)  SONNY CLARK (p)  BUTCH WARREN (b)
BILLY HIGGINS (ds)

1961

2001年になって発表されたグラント・グリーンの「幻の初リーダー」が本作。二つのセッションが納められているが、クラークのセッションは、ついでに、といった感で、ケリーとのセッションが本番。40年もの間、‘お蔵入り’されていた本作は、メンバーを見るだけで、よだれがでそうだが、‘ボビ・ハチ’のケースと同様に、初リーダー作としては、インパクトに欠ける出来だったのが、お流れになった主因であろう。
グリーンのgは、彼の特徴でもあるホーン・ライクでブルージーなプレイでそれなりに歌ってているものの、肝心のリズムセクションの張りの無さが、全体のレベルを押し下げている。
半年前には、同じメンバーであの「KELLY AT MIDNITE」を吹き込んでいるだけに不思議です。グリーンを引き立てようとして逆に生気のないパフォーマンスになってしまったようです。もっとgと有機的に絡まっていかないと平板に終わってしまいます。特にギター・カルテットでは。ケリーが絶頂期であっただけに悔やまれます。
ほぼ一年後のソニー・クラークとのセッションの‘Woody'n' You’(take4、7)では、さすがに改善されている。そうした意味でも本作品は、グリーンの愛好家の蒐集対象と言っていいでしょう。


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STANDARDS / LEE MORGAN

BLUE NOTE  CDP-23213

LEE MORGAN (tp)  JAMES SPAULDING (as fl) WAYNE SHORTER (ts)  
PEPPER ADAMS (bs)  HERBIE HANCOCK (p)  RON CARTER (b)  
MICKEY ROKER (ds)  

1967

録音時期は、レギュラー盤で言えば、「CHARISMA」と「THE SIXTH SENSE」の間。この辺りには、後年、発表された音源が多く吹き込まれているので要注意です。
但し、本作はアナログでは、発売されておらず、
1998年にCDにて初めてリリースされました。Pはハンコックになっているが、アレンジは、お馴染みのD・ピアソンが担当しており、得意のソフトに聴かせる内容になっている。バリバリのHOTなプレイを期待する方には、不向きですが、さすが、‘つわもの達’、ツボを押えた好演が続きます。

とは言うものの、ショーター、ハンコック、カーターの3人は、当時まだ、マイルス・クインテットの一員として最先端?を行っていたことを思うと不思議な気になります。どちらが、本当の姿? どちらも本当の姿とすれば、プロとは、凄いものなんだなぁ。また、スタンダーズといっても、‘God Bless The Child’以外はマイナー?な曲が多く、既成概念を持たずに聴ける点も、プラス要因かもしれない。分厚いサウンドから浮び上る各人のキレのあるソロはなかなかゴージャスです。


(6/6)

NO ROOM FOR SQUARES / HANK MOBLEY

BLUE NOTE 4149

LEE MORGAN (tp)  HANK MOBLY (ts)  ANDREW HILL (p)
JOHN ORE (b)  PHILLY JOE JONES (ds)
                                         1963
DONALD BYRD (tp)  HANK MOBLY (ts) HERBIE HANCOCK (p)
BUTCH WARREN (b)  PHILLY JOE JONES (ds)
                                         1963

この作品は、RVGエディションの輸入CD盤で紹介します。というのは、僕の好きな‘CAROLYN’、‘NO ROOM FOR SQUARES’のオルターネイト・テイクが入っていて、マスター・テイクに勝るとも劣らない出来映えだからです。‘Soul Station’からはじまる「モブレー3部作」の陰に隠れた本作は好みは別にして聴き所は少なくない。

二つのセッションで構成されていますが、、2年間の療養生活を終え、カンバックを期するモーガンの復帰後、最初の録音、また、ブルーノートでの初デビューとなる(初録音は約1ヵ月前のOur Thing/J・HENDERSON)A・ヒルと当時はまだ新鋭のハンコック(マイルス・クインテット入団直前)との聴きき比べ、そしてこの頃出番の少なかったD・バード(この後暫くして、ヨーロッパへ渡る)のtp等々ですが、なんと言っても
モブレーの気迫のこもったアグレッシヴなtsが聴きものです。

だが、それ以上の聴きものは実は
モーガンのtp。50年代の優等生ペットから一転してヤクザなペットです。‘CAROLYN’ではインテリ・ヤクザ風の囁きを聴かせますが、‘NO ROOM FOR SQUARES’での肩で風を切る一流ヤクザ・フレーズはどうだ、鳥肌ものです。これはもう、悪魔の吹くペットですね。しかし、その素晴らしさが長続きせず、また、悪習に戻ったしまったのは真に残念。
それから、崩れそうで崩れない危ないバランス感覚が新鮮なヒルのPは一見合いそうもないフィリーと意外と相性がいい。バード、ハンコックの入ったセッション(2曲)の躍動感溢れる演奏も楽しめます。‘Up A Step’のアレンジが特にイカしている。もう一つ、全篇に渡ってフィリーの小気味のよいドラミングも特筆ものです。

時折、発せられるモブレーの唸り声が本作の意気込みを象徴しているが、このあと、後戻りしていまうモブレーの胸の内は、何だったのだろう。
本作は、ハード・バップを棄て切れなかったモブレーの悲哀を示唆しているかのようです。でもそんなモブレー、好きです。この作品、僕の愛聴盤の一枚でもあります。

ps 同じRVGエディションでも国内盤と輸入盤では「音」が若干違うように聴こえますがどうなんでしょうか?
   輸入盤の方が高域が伸びていて、しかも中域が薄くなっていないと、思うのですが(他のCDで試聴)。
   僕だけかな? それにかなり安い。
   


(2003/8/12)

INDEX

IN A SILENT WAY / MILES DAVIS

COLUMBIA  CK 86556

MILES DAVIS (tp)  WAYNE SHOTER (ss)  JOE ZAWINUL (or)
CHICK COREA & HERBIE HANCOCK (elp)
  JOHN McLAUGHLIN (elg)
DAVE HOLLAND (b)  TONY WILLIAMS (ds)

1969

月に一、二度近くの温泉施設に朝湯に出掛ける。帰ってから我慢していたビールを片手に時々聴くのが本作。ギンギンのハード・バップや、フリーではせっかくののんびりした気分に合わない。そんな時、このマイルスの「牧歌の里」はピッタリ。単純なリズム・パターンをバックに50年代を思わせるマイルスのtpが心地よく、マクラフリンのエレキ・ギターのソロが始まると決まって眠りに誘われる。レコードと違ってCDはストレス・フリーで眠りに陥れるからありがたい。

しかし、素面というかマジで聴くと、とたんに
「アホ盤」になる。それが本作の肝。マイルスは、と言うかテオ・マセロの狙いは「此処」なのである。70年代を迎えるにあたり、小難しくなり過ぎた「モダン・ジャズ」をもう一度、聴き手に近い存在にしょうとしたワケだ。だが、後戻りはできない。そこでターゲットをなまじっかジャズを知っていない若い層に絞った。退屈とも思えるリズムをbとdsに刻ませ、陳腐極まりないリフ・フレーズをコリア、ハンコック、ザヴィヌルに弾かせる。そしてソロイストを際立たせようとしている(もっともバカバカしく感じたショーターは彼本来を放棄したかのような投げやりなソロを吹いている)。

また、急に激しいリズムをトニーに叩かせ、ハイライトを作るあたりミエミエの演出までしている。つまり徹底して演奏レベルをジャズをあまり聴き込んでいない層に合わせているのだ。だからずっとジャズを聴いてきたファンからブーイングが出たのも当然である。
しかしマイルスが「もっと簡単で優しいジャズを演ろうょ」と自ら「アホ」を買って出た(マセロのアドバイス?)と思えばなんて事はない。ここがマイルスの凄い所。しかし、最近の物書き屋の一部に詭弁を弄して本作を妙に持ち上げようとする動きがある。マイルスにしてみれば傍迷惑千万。だれが提灯持ちを頼んだのか?マイルスの本心が解っていない。解るはずもないが。

本盤は
もう一つ別の問題を抱えている。要するにテープ編集だ。一曲目では同じ演奏をテープで繋いでいるような箇所が有り、2曲目は初めと終わりに同一のテープが使用されている。ミュージシャンとしてのモラルが問われる点だ。
かつて、ピアニスト・佐藤允彦は
「良心的な音楽家がすべきことではない」と指摘している。
ジャケット(CDでもそう言うのかな?)のマイルスの表情からして、この時点で既に「オレの演っている音楽をジャズと呼ぶな」と‘In A Silent Way’で言っているような気もする。そう考えると本作の位置付けが明確になるし、これ以降、テープ編集が日常化?していく。それが何を意味するのか、マイルス自身が一番よく知っている。

本作を「アホ盤」と聴くのが正常な感性。ムリに消化させる必要はない。


(2004/2/9)

レコードでは、ロゴが右上の角です

WITH WARNE MARSH / ART PEPPER

CONTEMPORARY  S 9001  

ART PEPPER (tp)  WARNE MARSH (ts)  RONNIE BALL (p)
BEN TUCKER (b)  GARY FROMMER

1956

THE WAY IT WAS! / ART PEPPER

CONTEMPORARY  S 7630 (LP)

side A   上記と同様
side B
  PEPPER(as)
    *RED GARLAND (p)  PAUL CHAMBERS (b)  PHILLY JOE JONES   1957
    *DOLO COKER (p)  JIMMY BOND (b)  FRANK BUTLER (ds)      1960
    *WYTON KELLY (p)  PAUL CHAMBERS (b)  JIMMY COBB (ds)
   1960 

このCDはペッパーのコンテンポラリー・レコードにおける初リーダー作でありながら、当時、お蔵にされ、1972年になってLP(下)でその一部(4曲)がリリースされた1956年11月26日に録音された音源の全貌を収めたものである。2曲のオルタネイト・テイクと世界初発表・3曲そのオルタネイト・テイク1曲を含む全10曲である。なお、LPではリリースされていないと思いますが。
出来についてはお蔵にされるほどではないが、双頭セッションのイメージが強く、ペッパーのコンテンポラリーでの初リーダー作としてはインパクトが弱いと判断されたのだろう。そして2ヵ月後、あの名盤が吹き込まれたのである。初発表の3曲ではブルース曲‘ウォーニン’、‘サヴォイでストンプ’でのペッパーがやはり素晴らしい。その点、マーシュはチョット、損な役割に廻っている。また、B・タッカーのブンブン丸も聴きものである。

また、データが正しければ、同じ11月26日に「幻の名盤」として知られる‘FREE WHEELING /  T・BROWN’(Vanguard)も録音されている。プロとはホント、凄いものだ。

72年、輸入盤でリリースされた本盤(LP)は当時、あまり騒がれなかった。そのワケはA面(4曲)がコンポラの幻の初リーダー・セッションということが判らず、むしろお蔵入り音源の寄せ集めみたいなイメージが付き纏っていたように思います。あまりにもあの名盤の印象が強すぎるのだろう。
本作でよく話題に登るのが、むしろB面の‘AUTUMN LEAVES’(「INTENSITY」の未発表曲)。ライナー・ノーツ(英文)でペッパーが‘an example of me at my best’と後にペッパーと結婚するローリー・ミラー(当時)のインタビューに答えているからだ。それを大袈裟に誇張した評やコメントを見かけるが、そうすると、「INTENSITY」から外したL・Koenigの耳はタコだったワケだ。
それはそれとして「INTENSITY」という作品はペッパーの諸作の中でも異色で彼を知るには欠かせないレコードだが、この未発表曲‘AUTUMN LEAVES’が‘intensity’なプレイには違いないけれど、既収録曲以上にダントツにイイ出来とは思い辛いのも事実。チョット恣意的な発言のようにも聞こえないでもない。そうでなければ、わが国のファンに絶大?な人気を受けているあの明るさのなかにも哀感を秘めた音色とフレージングは仮の姿だったのだろうか?でも、案外そうかもしれないぁ。本音と虚像の狭間で揺れ動くのはジャズ・ミュージシャンの宿命だろう。
なお、本ジャケットの写真は‘Meets The Rhythm Section’の録音時に撮影されたものです。


(4/12)

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