(2006. 6. 26)
フラナガンほどではないにしろ名脇役としてバロンの評価、人気はそれなりに高い。
そのバロンのリーダー作の中でも断トツの人気を誇るのが本作。スティングの‘Fragile’の名演?もさることながら、何といっても吉祥寺のご領主様の厚い庇護の下、機会ある毎に紹介された事に依るところが大である。
また、同時にゲルダーの90年代を代表する名録音盤というオマケまで付けば興味がそそられるワケだ。しかし、僕のオンボロ装置では残念ながら、リードのツンツン・ベースは楽しめても、肝心のバロンのpはそれほど魅力的な音を出してくれない。ボリュームをチョット上げると音の表情がかなり変わるので、多分、音量に関係するのだろうが、普通の家庭では恐らく顰蹙を買うだろう。並みのシステム、音量ではその好録音ぶりを堪能できないかもしれない。
さて、本作の特徴は、ソロの一曲を除き残りの8曲がそれぞれ7〜9分台とピアノ・トリオものとしては異例の長さで、トータル・71分もある。その意図するものが何か、ちょっと解せない。バロンの意欲と好意的に解釈したいところですが、世の中、そう甘くない。聴き方によってはラウンジ・ピアノぽく聴こえなくもありません。でも、これが、現代ジャズ・ピアノの典型と言われれば反す言葉もない。
そんな中、僕が主に聴くのは7曲目からの‘The Moment’、‘Soul Eyes’、‘How Deep Is The Ocean’の3曲。とりわけM・ウォルドン作‘Soul Eyes’の沈み込むような叙情性が心に響く。リードのアルコが曲想にぴったり合っている。コルトレーンも‘COLTRANE’(インパルス)で取り上げているこの‘Soul
Eyes’はあまり知られていないが、なかなかの名曲だと思います。
この曲を取り上げるあたり、やはり、バロンの長いキャリアを感じさせます。
ラスト・3曲、これが本作の本当の聴きもの。
1991
KENNY BARRON (p) RUFUS REID (b) VICTOR LEWIS (ds)
RESERVOIR RSR CD 121
(2006.1.7)
インパルスと契約更改する度に、契約金のアップと録音からリリースまでほぼ全権を手に入れたコルトレーンは果たして幸せだったのだろうか?ひょっとしたら、そのプレッシャーから自分を自ら追い詰めていったのでないだろうか?
ライバルであり、親友でもあったとされるロリンズは、‘EAST BROADWAY RUN DWON’(1966年)を発表した後、親会社・ABCレコードの重役から「こんなレコードを作るから、売れないんだ!」と叱責され、傷付いた彼は、その後、長い間、レコーディングを拒んだという話を、ふと思い出した。
ps パーソネルのクレジットでは、全曲、コルトレーンはtsを吹いていると表示されているが、‘Tranesonic’(オルタネイト・テイクも含む)では、asを吹いている。
今日は朝早くから、家族全員出払って、夜まで一人きりの一日。
聴き始めの絶好のチャンス。「一年の計はコルトレーンにあり」なんてバカなフレーズが脳裏を過った。さぁ、何にしようと迷ったが、ここは襟を正し、正座して聴くしかない、とすれば、やはり後期コルトレーンか。
そこで、1995年にリリースされながら、最初の3、4曲を聴いただけで封印したままの未発表作品(Offering、一曲を除く)、本作(輸入盤CD)を思い出した。
僕が本作を封印したワケと言うと、こんな荘厳なジャズを耳にすると、他は何も聴けなくなる、と至って単純な動機だったのだ。当時は。
10年ぶりに本作をトレイに押し込む、2006年、第一発目の「ジャズ」だ。
天を仰ぐコルトレーン、いかにも、といったジャケットだ。
1967.2.15
JOHN COLTRANE(ts, as) ALICE COLTRANE(p) JIMMY GARRISON(b)
RASHIED ALI(ds)
IMPULSE IMPD 169
(2005.1.19)
薄幸のマイナーなts奏者である。だが、わが国では今、彼の名、人気はメジャー級である。プロによるガイドブックはもとより、アマチュアのHP(弊サイトもそうですが)までティナの作品が紹介されている。ビギナーでも知らぬ人はいないだろう。
ブルックスは計4枚のリーダー作をBNに吹き込んだが、初リーダー作はボツに、おまけに3、4作までもお蔵にされた。まともにリリースされたのは2作目の‘TRUE BLUE’だけ。3枚目は、言わずと知れた“BACK TO THE TRACKS”である。
本作はラストの4作目。モザイクのSET BOXで日の目を見たが、単体では38年後の99年に初めてCDでリリースされた。なかなかイカした写真です。アングルが絶妙だ。
ペイズリー柄のシャツもレトロな雰囲気を醸し出している。CDだからワイン色でも良いが、これがLPだったら、ワイン色ではどうかな。否、意外にイイかもしれないなぁ・・・。
さて、ブルックスの録音は本作が最後である。
2ヶ月前の“RED’S BLUES/F・REDD”もボツになっている。でも、ライオンの判断に狂いはなかった。ライオンに計算違いが一つだけあり、「それ」に気がついたのである。
その時から、ティナ・ブルックスの名はジャズ・シーンの舞台から消えていった。
辛い言い方だが、歴史も嘘をつかなかった。
74年8月、NYで死去。享年42才。 あぁ、無常。
1961
JOHNNY COLES (tp) TINA BRTOOKS (ts) KENNY DREW (p) WILBUR WARE (b)
PHILLY JOE JONES (ds)
BLUE NOTE TOCJ - 66075
(5/4)
なかなか渋いジャケット(?)である。本当はレコードでずっと探していたが、一度見送って以来パッタリ縁がなくなり、たまたまCD盤(FSレコード)を見つけ辛抱できず買ってしまった。H・シルバー・クインテットのドラマーとして知られているブルックスの初リーダー作である。メンバーもローソン、ボハノン以外、同僚で固められているが、布陣からして3管編成A・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズを意識しているのは想像に難くない。
ただ、‘BIG SOUND,MORE FIRE’をグループ・コンセプトとするジャズ・メッセンジャーズとは違い、むしろソウルぽさを打ち出しているのは賢明な選択である。リーダーのブルックスの派手さはないが、小気味の良いドラミングに乗って山椒は小粒でもピリッと辛いと言う表現がピッタリ当て嵌まる作品に仕上がっている。
メンバーでは、B・ミッチェルがジャケットでも太字でクレジットされ、格上の扱いがされている通りいいソロを取る。H・シルバー・クインテットでC・ジョーダンのピンチ・ヒッターとして参加し、そのままレギュラー・ポジションを奪ってしまったJ・クックの成熟したts、デビュー当時のC・フラーを彷彿させるボハノンのtb、ローソンのフレッシュなピアノ・ソロ等、聴き所はそれなりに少なくない。
しかし、そうした好演奏をスポイルしているのがこの「音」である。どうにも不自然だ。マスター・テープから採取した「音」ではないように思われる。恐らく、ステレオLP盤からディスク・ダビングし、イコライザーで補正、更にモノラルにミックス・ダウンしたのではないか。もし、そうだとしたら、つまらぬ事をしたものだ。本来の「音」で聴いたら印象がもっといいはずです。それとも、録音自体、或いはテープの保管状態がよくなく止む得ずそうしたのだろうか?
いずれにしてもB級作品ながら、「知る人ぞ知る隠れ居酒屋」風情が本作の最大の魅力。
やはり、レコードを探すしかないか。ジャケットの雰囲気も良いし。
1963
BLUE MITCHELL (tp) JUNIOR COOK (ts) GEORGE BOHANON (tb)
HUGH LAWSON (p) EUGENE TAYLOR (b)ROY BROOKS (ds)
WORKSHOP JAZZ W 20
BEAT / ROY BROOKS
CD vol.3