呟 き
(15)  数奇な運命を辿った一枚 

GROOVY/ FREDDIE HUBBARD

FONTANA  883 290

FREDDIE HUBBARD (tp)  PEPPER ADAMS (bs)  WIILLIE WILSON(tb)
DUKE PEARSON (p)  THOMAS HOWARD (b)  LEX HUMPHRIES (ds)

1961

この作品は本来、tbのウイリー・ウィルソンの初リーダー作として、幻のレーベルと名高い「JAZZ LINE」、33-03のナンバーでリリースされる予定であったが、「JAZZ LINE」の倒産のため、リリースされず、68 年(or 69年)、オランダ・フォンタナから
ハバードの名義の‘GROOVY’で初めて陽の目を見たレコードである
。僕の持っているレコードの裏ジャケットに最初の所有者?のサインで「28,2,1969」と書かれている。恐らく購入日であろう。

アメリカでは、ほぼ同時期の69年、ピアソン名義の‘DEDICATION!’(下左)でリリースされ、わが国では、75年になって、ハバード名義‘NO.5’(下右)となって初めて復刻された。その後、92年にフォンタナと同じジャケット(fontanaの代わりにJAZZ LINEのロゴマーク)でも再発、外盤では、BLACK LIONから、‘MINOR MISHAP/F・HUBBARD’のタイトル(ジャケットも変更)で再発されてもいる。

ジャケット数は計4種類に及ぶが、W・ウィルソン名義は1枚もない。
内容は全て同じである。但し、BLACK LION盤は曲によって、オルタネイト・テイクに差し替えられている。

なお、ウィルソンは2年後の63年に死去してしまい、その経歴、活動は殆んど知られていない。
レコード会社の倒産
版権の移籍、リーダーの死、という運命のいたずらに遭いながらも、こうしてレコード化された事は、それ自体喜ばしい限りである。

全7曲中、‘The Nearness Of You’、‘Time After Time’の2曲はtp、bsの抜けたtbカルテットになっている。ウィルソンのtbはどちらかといえばC・フラーにも似て、大らかでで朴訥な奏法が特徴である。バラード曲‘Time After Time’では情緒纏綿に歌い上げ、聴くべきものを持っている。だが、聴きものは、ずばり、若獅子ハバードのブリリアントtp。ホント、胸のすく快演だ。トップのT・フラナガンの名作‘Minor Mishap’での溌剌.としたソロなど、ワクワクしてくる。

2ヵ月半前、コルトレーンの“OLE”にドルフィーと共に参加、19日後には、BNに“READY FOR FREDDIE”(4085)を吹き込み、その前後にジャズ・メッセンジャーズの花形ポジションを手に入れる。上り坂の、まだ23才。ラッパ吹きなら、誰でも憧れるだろう。

幻のマイナー・レーベル「JAZZ LINE」で正規にリリースされたレコードは“BASH/D・BAILEY”、と“HUSH/D・PEARSON”の2枚だけで、本作と
ピアソンのトリオ盤
は当時、未発表のままに終わっていた。

また、「JAZZ LINE」の前身ともなる「JAZZ TIME」では、ボイド、ビショップ、
ベイリーの3作がリリースされたが、いずも一時「幻の名盤」として騒がれた。

「JAZZ LINE」で4枚、「JAZZ TIME」で3枚、、計7枚が全てと思っていましたが、もう一枚
HAGOOD HARDYという人が録音しているようで、いまだに未発表のままという。このHAGOOD HARDYについては、全く知りません。

右隅の写真は「幻のtb奏者」、W・ウィルソン

左下の“DEDICATION”は70年代初めに音源の出所、素性が判らなかったが、取り敢えず購入したもの。74年発刊の「幻の名盤読本」の中の“BASH/D・BAILEY”(JAZZ LINE )の項でウィルソンの未発表テイクが“GROOVY/F・HUBBARD”(FONTANA)として陽の目をみた、との記述を読んでも、その時、この2枚が頭の中で繋がらなかった。翌年、TRIO盤‘NO.5/F・HUBBARD’が復刻され、音源の正体が判ったものの、どうしても実物を見たかった。
ただ、ひたすらに“GROOVY/F・HUBBARD”(FONTANA)を捜し求め、80年代の半ば?、都内の、とある円盤屋でやっと本盤を見つけた。当時としては結構高かった。そして、ようやくこの3枚が合致、数奇な経緯が解明したのである。

この3枚の相違点は、曲名が1曲、異なっている。ハバード盤の‘Number Five’がピアソン盤では‘Miss Berhta D.Blues’に変更されている(内容は同じ)。また、FONTANA盤(上)、TRIO盤(右下)はSTEREOだが、PRESTIGE盤“DEDICATION”は所謂「ニセステ」である。何故なのか、この辺りの事情は解りませんが、音質の劣化はやや音が拡散する程度でモノラルに切替えて聴くと意外にガッツのある音になります。
普通、この手はあまり通用しないが、元がモノラルのニセステだから通用するのだろう。

音質はやはりFONTANA盤、PRESTIGE盤、TRIO盤の順です。マスターテープの経年劣化に因るのでしょう。
なお、曲順も若干異なり、“DEDICATION”盤の配列の方が、私見ですが優れていると思う。

PRESTIGE 7729

TRIO PA 3081


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(2004/11/26)

JAZZ LINE 33-01

JAZZ LINE 33-02

JAZZ TIME 002

JAZZ TIME 003

ps 「JAZZ LINE]、「JAZZ TIME」レーベルの未紹介アルバムは次の4枚で、なかなか味のあるジャケットばかりです。この4枚とボイド盤
計5枚、つまり、オリジナル・リリースされたレコードのカヴァー・デザインは全てGary Gladstone、一人の手のよってなされている。
画像では判りにくいが、全く同じデザイン・コンセプトに基づいている。字数の多さを巧に消化させ、見事です。

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