呟 き

(16) 黄金の3管ジャズ・メッセンジャーズの始まりは本作から?

A LA MODE / ART BLAKEY & HIS JAZZ MESSENGERS

IMPULSE  AS 7

LEE MORGAN(tp) WAYNE SHORTER(ts) CURTIS FULLER(tb) BOBBY TIMMONS(p)
JYMIE MERRITT(b) ART BLAKEY(ds) 

1961

本作の正式タイトルは「アラモード」ではないが、通称、そう呼ばれている。そして「特異」なレコードである。ミュージシャンとレコード会社との契約がどうなっているのか、良く知らないが、ブレイキーがBNと契約中でありながら、堂々?とインパルスからリリースされている。勿論、ジャケットに‘COURTESY OF BLUE NOTE RECORDS,INC.’とクレジットされてはいますが。
それに、新しくtbを加えた新録音となれば、当然自社のBNからリリースするのが筋ではなかろうか? それを敢えて、所謂「アウト・ソーシング」にしたライオンとブレイキーの狙いは何だったのだろう? まぁ、ここまでくると大凡の仮説が立つというもの。 

ここで、再確認したいのが、
ショーターのメッセンジャーズ入りの時期である。いざ、正確に答えようとすると、ちょっと言葉に詰まる。60年の中〜後半にかけてかな?と思っていたら、何とその一年前、59年の秋に既に参加し、録音(AFRICAINE、お蔵入り、後年リリース)までしているのだ。正直なところ、モーガン、ショーターの2管時代は“A NIGHT IN TUNISIA”を除くと意外なほどインパクトがなく、ライオンが期待、納得した演奏が少なかったのだ。事実、約半数が当時「お蔵入り」されている。そのせいか、記憶さえいい加減になる(汗)。

話を本作に戻すと、新しい可能性を求めて、と言えば聞こえは良いが、そうした局面打開策として、ショーターが進言したとされるtbを加えた3管編成である。しかし、ただ、それだけで充分なのか?という不安が、ライオンとブレイキーの脳裏から離れなかったのではないでしょうか。
だから、初めから、フラーが決まっていたわけではない。このセッションのためだけに呼ばれたのである。ブレイキーはフラーに敬意を払い、オリジナル曲を書いて貰い、トップに据えた。
これが「アラモード」。モーダルでスピード感溢れる優れた曲で、フラーの代表作の一つとなる。また、ショーターの熱いテナー・ソロも圧巻である。

さぁ、そこでどうしてインパルス・レーベルの下で録音、リリースしたのだろう? 
ここからは、全く僕の憶測です。つまり、自社レーベルで通常の過程で制作しない方が、
3管編成に移行する際の問題点を客観的に観察できると考えたのではないか。ひょっとしてテスト盤位のつもりだったのでは。インパルスもスタートしたばかりなので、カタログ数が欲しい事もあり、双方の思惑が一致したのかもしれない(大汗)。イヤー、ライオンの本当の意図は、もう頭の中で出来上がっている「新生3管編成」のよりインパクト有る打ち出し方であったのでは。その方が自然だし、つじつまが合う。

ライオンとブレイキーの不安と言うより、予測が的中したのである。無論、ライオンも録音テープを聴いただろう。「アラモード」以外、何の変わり映えしないマンネリした演奏が出来上がったのである。ついに決断が下された。今までの同グループの最大の功労者二人、tpとpのメンバー・チェンジである。tbは実はフラー以外の奏者がノミネートされたが、リーダーのブレイキーが最終的に決めたそうです。
本作が録音されたのが61年6月13、14日、新体制の初めての公式録音は10月2日の“MOSAIC”であるが、実際には、8月に‘ヴレッジ・ゲイト’でライヴ録音(後年、発表)されており、動きは迅速であった。そして、3管ジャズ・メッセンジャーズの黄金時代の幕が切って下ろされたのだ。
なお、モーガンは本作の後、療養のため故郷・フィラデルフィアに引篭り、ティモンズはトリオ活動に入る。

ショーターはモーガンの復帰後、BNで競演し、ティモンズとは、プレステージ盤に参加しているが、モーガンとティモンズは公式録音ではこれが最後となったのでは。

モーガン、ショーターの2管時代に、当時「お蔵入り」(後年リリース)されたBNレコードは次の通り。

 * AFRICAINE (LT 1088) 1959. Nov. 10
 * LIKE SOMEONE IN LOVE (BLP 4245) 1960. Aug. 4、7
 
* PISCES (GXF 3060) 1961. Feb. 12、May. 27 、1964. Apr. 15
 * ROOTS AND HERBS (BLP 4347) 1961. Feb. 18、 May. 27
 * THE WITCH DOCTOR (BLP 4258) 1961. Mar. 14

PISCES (GXF 3060)
復帰したモーガンが参加した1曲が含まれている。

(2005/2/22)

メンバー・チェンジの真の決断者は「時代」である。個人的な事情が入り込む余地などありえない。ライオンとブレイキーはこの「時代の流れ」を慎重に、しかも的確に読み切ったのである。
その決定的作品がこの「アラモード」であったと思う。そのワリには相変わらずのポーズだなぁ。     

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