FLUTE FEVER / JEREMY STEIG

チョット

気になる一枚 U

CBS SONY   SOPM 159

JEREMY STEIG (fl)  DENNY ZEITLIN (p)  BEN TUCKER (b)
BEN RILEY (ds)

1963

このレコードが、スタイグの「ファースト・アルバム」として、ジャケットを変えリリースされていたもののオリジナル・ジャケット版(盤)と知っているファンは、意外に少ないのではないか?ジャケットの絵と裏のイラストもスタイグの自筆のものだそうです。絵の中に、フルートを吹いている自分自身?も描いている。

それはともかく、彼の特徴であるの熱情的な
‘ハミング奏法(肉声を交えながら吹く)は、それまでの詩情溢れる、美しい音色と言う、フルートのイメージを根底から覆し、彼のデビューは、ジャズ界一大センセーションを巻き起こしています。
曲目は、ロリンズ、マイルス、モンクのお馴染みのジャズ・ナンバーとスタンダード曲で占められていて、ザイトリンのどこか醒めているようで熱いピアノとのインタープレイが聴きものです。
とりわけ、マイルスの超有名曲‘SO WHAT’の熱演は、すばらしいの一言。マイルス、コルトレーン、キャノンボールと言った巨人達にフルート一本で挑戦し、勝るとも劣らぬプレイをスタイグは聴かせてくれます。
スタイグ、21才、ザイトリン25才、若者同士のぶつかりあい、聴き手まで熱くなってきます。まさにタイトルとおり。それにしても、表現力豊かなスタイグのフルートをバッキングするザイトリンのピアノ、ソロも含め新感覚のアプローチは、光彩を放っている本作を聴くと、改めて‘あのころのジャズ’は、本当によかったな、と、つくづく思います。

 6年後、スタイグは、今度はビル・エバンスと「what’s newで競演する。こちらにも、‘lover man’,‘so what’と、同じナンバーを採り上げており、聴き比べると興味深いものがあります。


FLOWERS FOR ALBERT / DAVID MURRAY

INDIANA NAVIGATION  IN 1026

DAVID MURRAY (ts)  OLU DARA (tp)  FRED HOPKINS (b)
PHILLP WILSON (ds)

1976

70年代中期?から起こった所謂「ロフト・ジャズ」のバック・ボーンになったのが‘インディアナ・ナヴィゲーション’レーベル。そしてその看板的プレイヤーが、C・フリーマンとこのD・マレイ。ポピュラーな人気には縁遠いが、熱狂的な信者を持つ、マレイのデビュー2作目がこの‘アルバートへの献花’。僕はこれがマレイのファースト・アルバムと思い込んでいたが、どうやら2作目でした。しかし、マレイの存在を世に知らしめたのが本作であることには、異論はないと思います。

ニューヨークの‘レディース・フォート’でのこのライヴでは、彼が時折見せるあのラジカルなプレイはなく、
アイラーへのトリビュートに相応しく、奥の深い演奏を聴かせている。マレイのtsのルーツには、ロリンズ〜アイラー〜シェップの影響を感じさせるが、本作では、すでにオリジナリティを有してる姿を垣間見る事ができる。一聴、静かに思える演奏に隠された何か得体の知れないパワーは、まるでマグマのように後年、爆発する。けれどマレイの本当の実力が未だに開花していないのが残念でならない。

ps 彼の愛妻‘Ming’は、チョツト、エキゾチィクな大変な美貌の持主で、何枚ものジャケットを飾っている。僕の好みでもあって、マレイを聴きたくてではなく、そのジャケットのために2枚ほど買った記憶があります。マレイさん、すいません。


SEEKING / THE NEW ART JAZZ ENSEMBLE

REVELATION  REV 9

JOHN CARTER (as cl fl)  BOBBY BRADFORD (tp)  TOM WILLIAMSON (b)  
BRUZ FREEMAN (ds) 

1969

名前から想像するように、これはアメリカ西海岸で生まれた初めての‘フリー・ジャズ’スタイルのグループの第一作目。イースト・コーストの一般的な‘フリー・ジャズ’に、10年近い遅れもあり、変な表現しかできないが、非常に洗練?された演奏となっている。
実質的にはカーターとブラッドフォードの双頭コンボの形で、カーターについては、不勉強でよく知らないけど、実力はあります。ブラッドフォードは、録音を残していないものの、あの「O・コールマン・クワルテット」にD・チェリーの後釜に入っているかなりの実力者で、「サイエンス・フィクション」ではチェリーと一緒に参加しているそうです。

さて、本作では、カーターの演奏もなかなか優れているが、聴きものは、
やはり美しいトーンと鋭いフレージングで迫るブラッドフォードのtp。上述のように、ここには、フリー・ジャズの持つあの‘騒音’めいた世界は全く無く、まるで、砂漠のなかのオアシスのような清涼感さえ感ずる。ジャケットはチョット寒々しい様子ですが中身は、いたってヒューマンです。全6曲、二人のオリジナルで、その内、1曲を除き、カーターが書いていますが、作曲力も優れています。久しぶりに聴く本作、聴き応え充分、昔は皆、一生懸命、演っていますねー。
遅れてやって来た‘コールマン・クワルテット’の焼き直しと、片付けてしまうのは早計。その訳は、この後すぐ、B・シールの設立した「フライイング・ダッチマン」レーベルから素晴らしい作品
Flight for Fourを発表するのです。これについては、また、近いうちにご紹介します。


MINOR MOVE / TINA BROOKS

BLUE NOTE  GXK 8162

TINA BROOKS (ts)  LEE MORGAN (tp)  SONNY CLARK (p)
DOUG WATKINS (b)  ART BLAKEY (ds)

1958

「世界初登場シリーズ」の一枚として日本でリリースされたもの。幻の名盤、「バック・トゥ・ザ・トラックス」でコレクター達の注目を一身に集めたタイナ・ブルックスのこれまた、「幻の初リーダー作」がコレ。メンバーを見るとこれが、ビックリ。リーダーを除き、一ヶ月前に録音したばかりの超人気盤「CANDY」のdsにテイラーの代わりに一格上のブレイキーが入っている。こうなれば、おのずと期待のボルテージが上がるというもの。だが、そう簡単に行かないのが、ジャズの難しいところ。そこが、「珍盤」たる所以です
残念ながら‘お蔵入り’されても仕方のない結果に終わった。「CANDY」にR&B系のアーシーなtsが入ると、どうなるか、想像すればお判りと思います。それに、ブルックスのtsがスタンダード(3曲も)を演るには、まだ、未熟であることと、ブレイキーが何故か、精彩がない。もっと、強引に全体をプッシュしていれば変わっていただろう。
とは言うものの、BROOKSが第一線での活躍した期間は、短かっただけにこうした音源は、出来の良し悪しに拘らず貴重です。
二年後、修行を積んだブルックスは、オフィシャルな初リーダー作「TRUE BLUE」(しかもこの一枚のみ)を吹き込み、ハード・バップの名盤として愛聴されている。後年、未発表作がリリースされ、この薄幸なts奏者を愛するジャズファンも多い、と聴く。


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