独 り 言     (12) あの「MUSIC INC」の熱気は今、何処に?


前回のGATOの‘エル・パンペーロ’の項で70年代ジャズはプロデューサーの手によってその幕が切って下ろされたと書きましたが、ミュージシャン自身がプロデューサーも兼ねるといった動きも見逃せない。その代表例がC・TOLLIVERとS・COWELLが主催する「STRATA EAST」(別項参照)
そのC・TOLLIVERとS・COWELLの双頭コンボ‘MUSIC INC’はGATOとほぼ同時期、別流で一世を風靡した人気コンボであった。

できれば、消してしまいたい?GATO前科者の烙印と違って、「モダン・ジャズの本流」ともいえる熱いアコースティク・ジャズを70年代に継承し続けた‘MUSIC INC’の存在は忘れてはならない。然るに、昨今のジャズ・ファンの間ではどうなんだろう?僕の推測では、忘れられたに等しい状況ではないでしょうか。
それは、最近、乱発?されるガイドブックに因るものかもしれない。殆んどの本の切り口が「スタンダード」とか「名曲」、乃至は「人気レーベル」、「ジャズ・ジャイアンツ」で、同じような名盤?ばかり紹介されている。これでは、同工異曲の謗りを免れない。

そうすると、‘MUSIC INC’のようにオリジナル曲中心の演奏、トリヴァー、カウエルのようなマイナー・ミュージシャンは紹介・露出されるケースは極めて少ないのだ。同じ畑を入れ替わり立ち代り耕しているだけで、ちっとも面白くない。これでは、ジャズ・ファンが増えないのも当然だろう。もっと目を広く、違った視点で見ないと魅力あるミュージシャン、演奏を
脚切りしてしまう恐れがある。それに、何でも褒めればいいというものではない。本当の被害者は「ジャズ入門者」かもしれない。

「敷居が高い」、のではなく、「つまらない」のが入門者の本音なのだろう。

さぁ、そこで、あの熱血‘MUSIC INC’だ。今回は、敢えて、オリジナル・メンバーと違う後期のものと定評のある2枚を取り上げてみました。敢えてとは、オリジナル・メンバーの作品はいつか別に紹介する予定です。但し、ストラタ盤でない、最初期の“THE RINGER"(ポリドール盤)は紹介済みです。

COMPASSION / CHARLES TOLLIVER MUSIC INC

LIVE AT THE LOOSDRECHDT JAZZ FESTIVAL / CHARLES TOLLIVER MUSIC INC

TOLLIVER’S BLUEとでも言える物憂げなジャケットのせいか、ほとんど知られていないレコード。 時々、クズ・エサ箱で見かける。しかし、 pの代わりにgが入った珍しいtpワンホーン・カルテットが聴き所である。
A・ファーマーものを思い出すが、1曲目の‘EARL’S WORLD’の出だしから様相が変わる。やはり、70年代です。

この‘EARL’S WORLD’は、ちょとした聴きものである。N・ペイジの与太者風ギターとそれをバックで煽るに煽る破天荒なA・クイーンのドラミングが凄い。それに刹那的ななトリヴァーのtpが絡んでくるあたり、これは危ない演奏だ。どう上手く表現していいのか適切な言葉が浮かばないほどスリリングなリズム、これがイイ。

トリヴァーのオリジナル全4曲で占められており、タイトル曲を除いていずれもお馴染みのナンバー。反面、新鮮味にやや欠けるきらいもある。トリヴァーのtpは、よく突撃ラッパなどと形容され、陰影に欠けるイメージが付き纏っているが、僕はむしろ、抑制の利いたラッパと思っている。特にバラード曲は、妙な感情過多に陥らない抒情性が好ましい。‘TRUTH’なんかがそうだ。

本作以降、あまり噂を聞いていないが、70年代初頭、最も熱く光り輝いていた一人である。
いずれにしても1曲目の‘EARL’S WORLD’が本作の全てと言っていいほど傑出している。
血が逆流する。


STRATA EAST  SES 8001

CHARLES TOLLIVER (tp)  NATHAN PAGE (g)  STEVE NOVOSEL (b)
ALVIN QUEEN (ds)

1977

これは、「常識破り」の一枚である。tpワンホーン・カルテットでここまで熱いグループは、それまで、かって例がなかった。tpはその構造上、リップ・コンディションを保つ為に、あまり長く、激しく吹けない制約を受けるので、単調さを避ける意味で他のホーン等との組合せるのが一般的常識であった。これがワンホーン物が極端に少ない理由である。

オランダのルースドレヒト・ジャズ・フェスティバルでライブ録音された本作は、発売当時、FM放送「ジャズ・フラッシュ」で紹介されるや、トリヴァー、そして「MUSIC INC」の名を一気に全国区に押し上げた記念すべき作品である。但し、オリジナル・メンバーとは違います。

トップの‘Grand Max’から2枚組・約70分、実にヴァイタルな正統派モダンジャズが全編に聴かれる。この‘Grand Max’とは、かってのボス、MAX ROACHに捧げたトリヴァーのオリジナル。ローチがたまたまこのフェスティバルに聴きに来ていた事もあり、持てる力を余さず、全身でtpを炸裂させている。それに母国、アメリカよりもまずヨーロッパで評価されたプレイヤーだけにその張り切りようも格別だ。

ハバードにレッスンも受けたというトリヴァーのtpは、随所にその影響を受けながらも、オリジナリティを失わず、自分の語法できっちり鳴らしていて、好感が持てる。
本作の一番の聴きもの‘Prayer For Peace’ではスピチュアルな側面も見せ、表面的な力強さだけでなく、内面から噴出すような情念さえも描き出している。
これぞ、「MUSIC INC」の真骨頂だ。

30年後の今、改めて聴き直しても、この熱気は些かも衰えていない。それどころか、新鮮にさえ感ずる。これは奇跡に近い。それもこれも「MUSIC INC」の持つホットな精神からくるものだろう。

マイナス点は、時折、マッコイ亜流のワンパターン・フレーズを散らかせるヒックスのpだが、ステージを盛り上げる役目は充分に果たしている。それと、ややダンゴ気味の録音が惜しい。

それにしても、少々粗っぽいが常識破りの「熱さ」、今のジャズに不足しているのはこの「夢中にさせる熱気」である。


BLACK LION 30131/30132

CHARLES TOLLIVER (tp  flh)  JOHN HICKS (p)  REGGIE WORKMAN (b)
ALVIN QUEEN (ds)

1972

(2004/11/17)

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LIVE IN TOKYO / CHARLES TOLLIVER MUSIC INC

STRATA−EAST SES 19745

CHARLES TOLLIVER (tp) STANLEY COWELL (p) CLINT HOUSTON (b) 
CLIFFORD BARBARO (ds)

1973. 12. 7

しっかりとコーティングされたゲートホールドのカヴァが当時のMUSIC INCの人気ぶりを表している。69年の夏に結成されたこのユニットのオリジナル・メンバーの内、bとdsが変わっているが、既に袂を分れていた?はずのカウエルが参加している点がファンにとって嬉しい来日でした。この作品はカヴァで表記されている様に、郵便貯金ホールで公演された11/29と12/7の内、最終公演となった12/7から収録されている。

本アルバムの素晴らしさはその内容もさることながら、プログラミングが実に巧い。全5曲から構成されていますが、喩えるならば、剣道の団体戦の如く、先鋒、次鋒、中堅、副将、大将の順に配置され、しかも、最後は副将、大将となる演奏が切れ目なく連続してビシッとフィニッシュしている。まるで30数年前のライブを目の前にしているような錯覚に陥る。

「包丁一本、晒しに捲いて・・・・・・」の歌の文句ではありませんが、70年代初頭のジャズシーンに殴り込みをかけてきたトリヴァーのけれんみの無いペット捌きが何と言っても聴きもの。
どちらかと言えばやや硬直ぽいイメージのあるトリヴァーですが、、その刹那的なプレイにも、時折、憂い感を漂わせ、どことなくB・リトルにも通ずる個性的なサウンドに気付く。
それに加え、スピリチャアルな面までも持ち合わせている。トップの‘Drought’のイントロ、然りですし、
二曲目の‘Stretch’では後半、 まるで一音一音を綴る様に積み重ねていくソロ・ワークは出色です。

B面に入ってスロー・ナンバー、トリヴァーのオハコもの‘Truth’、イャー、じっくりと歌い上げるトリヴァー、お見事!。ハッキリ言って、出来過ぎですね(笑)。

そして、カウエルのお馴染みナンバー‘Effi’からHOUSTONのベース・ソロを挟んで思いっ切り、テーマを崩しに崩した高速‘'Round Midnight’。ばっちり決めている。

また、カウエルも素晴らしいプレイを聴かせています。


とにかく、間違いなく当時、最高のアコースティク・ジャズがここにある。



なお、このステージのMCをS・カウエルを高く評価し続けていた悠雅彦氏が務めています。


(2009. 2. 18)