呟 き
(8) 「STRATA−EAST」レーベル
vol.1
「ストラタ・イースト」は1971年C・トリバーとS・カウエルによってNYで設立されたマイナー・レーベル。このレーベルのコンセプトは、プロデューサー集団システム、つまり、ミュージシャンがオーナーであり、プロデューサーでもあること、そして黒人であることです。その基盤となるものが、ベトナム戦争の終結を背景にした音楽環境の変化、とりわけ、いい意味でマイナー音楽であった「モダン・ジャズ」が例えば、マイルスのエレクトリック・ロック路線を導火線として白人音楽(メジャー)への同化?に対する危機感と同時に黒人意識の高揚であることは、容易に想像できます。平たく言えば、反主流<野武士>路線のレーベルと言えるでしょう。わが国でも支持者は随分多かった。
代表作としては、‘MUSIC INC/T・Tolliver & S・Cowell’の諸作、巷で人気の‘IN THE WORLD/C・Jordan’などが挙げられる。
REASONS IN TONALITY / JULIUS WATKINS JA.CO.
SES 1972−2
GEORGE COLEMAN (ts) CLIFFORD JORDAN (ts) JULIUS WATKINS (frh)
HAROLD MABERN (p) LARRY LIDLEY (b) KENO JUKE (ds)
13,2,1972
タイトルは‘REASONS IN TONALITY’となっていますが、正確には、‘Jazz Contemporaries’のメンバーによるA面がワトキンスをリーダーにした‘REASONS
IN TONALITY’、B面はジュークをリーダーした‘3・M.B.’の作品。
NYの‘Village Vangurd’でのライブ・レコ−ディングです。
マイナーレーベルの悲しさか、録音のバランスが悪く、フロント陣がoff状態でリズム・セクションだけがやたら前面に出ている。特にワトキンスのフレンチ・ホルンは蚊の鳴くようなレベルで録音され、二人のtsもどちらが吹いているのか判別できないくらいです。全体の雰囲気から判断して、かなりの熱演であったことには違いないと思いますが、もったいない。
ただ、思いがけない副産物として、pのメンバーンとdsのジュークの予想外の好演というか、二人の力量がこんなに浮き彫りにされた音源は他には見当たらないのでは。メンバーンのpは、後年のM・タイナー風で終始パーカッシブな連打で聞き手に迫るが、タイナーほどの厚かましさがなく、リフの使い方が絶妙でいつのまにか乗せられてしまいます。それにしても、手抜きのないパワフルなpには恐れ入りました。
また、エルビンを小型化したような力感溢れるジュークのドラミングも挑発的で聴きものです。
まぁ、本作は、扇情的なリズム・セクションに耳を傾ける作品と言えなくもない。
但し、A面の出だしから半分くらいはかったるくて、針を上げそうになりますが、少しガマンしてください。
むしろB面から聴いたほうがイイと思います。
裏ジャケット
録音が偏っているので、内容の出来がいまいち把握できないが、少なくとも、72年にこうした演奏(モダン・ジャズ)がNYで、しかもジャズのメッカともいえる‘Village
Vangurd’でなされていたことは、今となっては貴重と記録と思います。
(10/15)
ps 4年前に‘Village Vangurd’に行ってみました。夕方だったのでまだオープンしていなく、近くの‘マック’で時間をつぶし再度覘いてみたが未だでした。休みの日だったのか、もっと遅い時間のオープンか、判りませんが、一人だったので諦めて帰りました。ひょっとして休業していたのかな?
また、マックの味が日本とあまり変わらなかったのには、チョット驚いた。あの頃は治安が良く、一人でぶらぶらしたものです。NYには、日本で言う「外人」という概念はないですね。何度も「外人」に道を聞かれた。