呟 き
(7) LIBERTYレーベルの「幻の名盤」と「知られざる名盤」
TENORS HEAD−ON/BILL・PERKINS & RICHIE KAMUCA
LIBERTY LRP 3051
BILL PERKINS (ts) RICHIE KAMUCA (ts) PETE JOLLY (p)
RED MITCHELL (b) STAN LEVEY (ds)
1956
パーキンスと言えばPJ盤の‘オン・ステージ’、カミュカと言えばモード盤の‘カルテット’が通り相場。その二人のtsが共演した本作はレーベルのイメージから来るのか、地味であまり話題に登らない。
しかし、粟村氏流に言うところの単なる加算を遥かに上回る出来映えで、僕の好みで言えば本作>‘オン・ステージ+‘カルテット’の数式である。パーキンス、カミュカ共にレスター・ヤングの流れを汲み、単独アルバムでは、音色、フレージングの違いがはっきり判るが、僕の稚拙な耳では本作での、二人は時々判らなくなるほど似ている。ジャケットのブロンド女性然りである。
テナーのバトルものと違って、テーマを少しずつ崩しながら付いたり離れたりする2本のtsから醸し出されるサウンドはまるで陽炎の向こうに見える蜃気楼のような言いようの無い世界を創り出している。
「幻の名盤読本」のなかでもインパクトの弱い印象を受けるが、聴いて驚く逸品。中でも‘Indian Summer’が出色のできであるが、バラード曲‘I Want A Little Girl’、ブルース曲‘Blues For Two’、そして、B面の4曲も極上です。最後にリズムセクションについては、全く耳に残りません。それほどパーキンスとカミュカのtsが素晴らしいのです。
これだから、円盤探しは止められない。
<参考>
DOUBLE OR NOTHIN’/HOWARD RUMSEY’S LIGHTHOUSE ALL STARS
featuring Benny Gorson、Lee Morgan and wynton kelly
LIBERTY LRP 3045
LEE MORGAN、CONTE CANDOLI (tp) BENNY GOLSON、BOB COOPER (ts)
FRANK ROSOLINO (tb) WYNTON KELLY、DICK SHREVE (p)
RED MITCHELL、WILFRED MIDDLEBROOKS (b) CHARLIE PERSIP、STAN LEVEY (ds)
1957
ディジー・ガレスピーのビック・バンドがロス・アンジェルスにやって来た時、H・ラムゼイのグループと意気投合して吹き込まれた一作。厳密な意味では‘ウエスト・コースト・ジャズ’の範疇には入らないが「知られざる名盤」の一枚として是非紹介したい。
本作は‘イーストとウエストの邂逅’的作品の中でもテンションの高さでは群を抜いている。特にモーガンとカンドリ、ゴルソンとクーパーのソロの受け渡しは、一聴、さりげないものの裏に隠されたプロ意識は相当なものです。スタイルこそ異なっているものの自分のペースを崩さず相手にも合わせる技は、さすがです。
まだ18才のモーガンのフライイング気味なソロ・スタートも愛嬌。また、ロソリーノのtbが実にイイ味を出しています。曲では、8曲中、ゴルソンが4曲を占め、その他、クーパーの一曲を除き、ディジー、G・グライス、シルバーとイースト系のオリジナル曲が採り上げられている。
楽しそうにスタジオ(ライトハウス?)入りするメンバーを使ったジャケットもなかなか洒落ている。「幻の名盤読本」にも掲載されていないこれぞ「知られざる名盤」です。
(RCA LPM 1162)
AL COHN、BILL PERKINS、RICHIE KAMUCA (ts) HANK JONES (p)
BARRY GALBRAITH、*JIMMY RANNY (g) JOHN BEAL (b) CHUCK FLORES (ds)
1955
(2003/9/9)