困った迷盤、苦手な名盤・人気盤 vol.1
BRILLIANT CORNERS / THELONIOUS MONK
RIVERSIDE RLP 12-226
Ernie Henry (as) Sonny Rollins (ts) Theronious Monk (p、celeste)
Oscar Pettiford (b) Max Roach (ds)
1956
名盤中の名盤、と言われるこのゴードンのレコードは、苦手だ。tsのワンホーン・カルテット、B・パウエル、K・クラークからなるリズム・セクション、そしてお馴染みのスタンダードナンバー、と聞けばもうそれだけで7〜8割がた名盤の資格、充分。パリの自由な空の下、tsはブローし、pはスイング、bはビートを弾ませ、dsはドライヴする、演奏内容も申し分ない。しかし、名盤にケチを付けるつもりはないが、聴くにつれ、何故か、もうイイヤと針を上げてしまう。
何かが足りない、スパイシーが足りないのだ。隠し味といってもいい。スパイシーって何だ、と言われそうだが、つまり、4人の名手達の演奏から期待する創造的スリル、というか、Somethig Newが希薄なのだ。
このレコードのファンの方、ごめんなさい。
1年後、同じパリで吹き込んだ「One Flight Up」は、メンツは格下にもかかわらず、Somethig New,楽想が高い。
余分な事を考えずに素直にこの「名盤」を堪能できる人が羨ましい。
IN THE WORLD / CLIFFORD JORDAN
STRATA−EAST SES 1972-1
CLIFFORD JORDAN (ts) JULIAN PREISTER (tb) DON CHERRY * (tp)WYNTON KELLY(p) WILBER WARE (
b) RICHARD DAVIS ( b)
AL HEATH * (ds)
side2
KENNY DORHAM (tp) ROY HAYNES (ds) ED BLAKWELL ( ds)
1963
1969
SUPER NOVA / WAYNE SHORTER
不思議なことに、ショーターほど批評家からジャズ・ファンまで、こんなに「ウケ」のよいミュージシャンは、あまりいない。だが、本音のところは、どうなのかな、と考えていたところ、某氏の「ジャズ名盤を聴け!」と、なんともアジテイトな本に、ボロクソに書かれていた。やはり、そう、思っている人もいるのだなぁ、と思いました。
僕が本作を、輸入中古レコードで、手に入れたところ、ジャケットの中に前の所有者のと思うが、SJ誌のディスク・レヴューの切り取りが、直輸入盤として初めて発売された時(70年)のものとそれから後年の再発時のもの(二人)が、二枚とも入っていました。どちらも(三人の評論家とも)、「恐れ入りました」マークが付いています。その根拠は、異口同音に「新しいジャズ」の方向性を示しているから、です。が、さぁ、本当にそう、なっていったのだろうか?評論家の宿命と言えば、それまでだが、答えは、前の所有者が、二枚のレヴューを切り取りまでして聴き込んだレコードを手放した事実が物語っているのではないでしょうか。
ps もう一つ不思議に思う事は、ショーターは、いつも、だれかの(ブレイキー、マイルス)の傘の下とか、ウエザーレポートや、ナシメントなど、他の力を借りてばかりで、どうして自分の力だけでグイグイとジャズを引っ張って行かないのだろう。みんな、それを期待していたのに。いつのまにそんな処世術を身に付けたのだろう。彼のそうしたスタンスが 「黒魔術」からきているとしたら、もったいない話だ。
もっと自信を持って演って欲しい、と思うのですが。ショーターが嫌いではないので、誤解の無きよう、念のため。
WAYNE SHORTER (ss) JOHN MCLAUGHIN、SONNY SHARROCK、
WALTER BOOKER (g) MIROSLAV YITOUS (b) JACK DEJOHNETTE (ds)
CHICK COREA (ds、vib) AIRTO MOREIRA (perc) MARIA BOOKER (vo)
1969
*あくまでも、個人的、私見です。
ps テープ編集は最終的に25テイクの中から3つのテイクを繋ぎ合わせそうです。
なお、‘Brilliant Corners’は‘MONK'S BLUES’(1968)で再演されていました。失礼しました。
DOWN HOME / ZOOT SIMS
BETHLEHEM BCP 6051
ZOOT SIMS (ts) DAVE McKENNA (p) GEORGE TUCKER (b)
DANNIE RICHMOND (ds)
1960
本作は「名盤」との評価の高いレコードですが、僕は苦手と言うより、その良さが判りません。ややアップ・テンポの曲をただスイングさせているだけに聴こえてなりません。楽しいだけならごまんとある、とまでは言いませんが、もう少しアイディアというか「一捻り」が欲しいですね。ズートの野暮ったさがモロに出てしまった感がします。
それに加えて、マッケ(ン)ナの安っぽいヘラヘラピアノ、何とかの一つ覚え(失礼)みたいなリッチモンドの鈍重なdsとくれば、いくらタイトルが「ダウンホーム」と言えども勘弁してほしい。タッカーが一人で頑張っても多勢に無勢、討死している。
考えてみると1960年といえば、ジャズが大きな転換期を迎えていた頃です。全く時代性が感じられないのも不思議と言うか、その能天気さに驚かずにはいられない。
ズートの良さは時代性を超えた所にある、と言うならば、例えば、ブルーノートのユタ・ヒップ盤での深遠なプレイとか、豪快にして珍しくもあか抜けたパフォーマンスを聴かせるフォンタナの「クッキン」の方が出来は遥かに上と思います。
ズートの本当の力量はこの「ダウン・ホーム」如きではないはず。
‘the great’とは、チト、大げさすぎやしませんか?もっとも当人がリクエストしたわけではありませんが。
本作品は未CD化のみならず、されにくい状況のため、ちょっとしたコレクターズ・アイテムの一枚になっており、円盤屋での人気が高い。
但し、レーベル全体が白(左)が1stプレスで、白黒は2ndプレスとの情報を得ていますので、ご参考に。