チョット
   気になる一枚 vol.6

SWAMP SEED / JIMMY HEATH

RIVERSIDE  RS 9465

JIMMY HEATH (ts)  DONALD BYRD (tp)  DON BUTTERFIELD (tuba)
JULIUS WATKINS and JIM BUFFINGTON (frh)
HAROLD MABERN (p)、 *HERBIE HANCOCK (p)  PERCY HEATH (b)
ALBERT HEATH (ds)、 *CONNY KAY (ds)  

1963

ヒースも麻薬禍により服役も含め53〜59年の約6年間、ジャズミュージシャンとして活動を棒に振った一人であった。そのため、59年、やっと初リーダー作‘THE THUMPER’をリバーサイドに吹き込んだ時には既に33才になっていた。その後、64年までに計6作を録音し、本作は第5作目。昔からヒースの代表作として定評のあるレコードである。

本盤は、以前、円高の時(1ドル=90円台)に少し手を出した海外オークションで入手したもの。たまの出張(東京)の際では、なかなかお目にかかる事がなく、オークション・リストで見つけ入札した。初めから落とすつもりだったので確か高目(自分では)の90ドルを付けたと思います。海外オークションでは他にも数枚手に入れましたが、コンディション等でのハズレは幸いにも経験しませんでした。本盤も盤質、ジャケット共に記載通りN-でアタリでした。この海外オークションは、結構クセもので下心を出すとなかなか落ちなく、狙っているレコードが出るとつい高値を付けてしまう。まぁ、おもしろいと言えばおもしろいが。後から円盤屋で安いものを見つけると自分自身が情けなくなる。しかし、本盤はその後、都内でほぼ同じ価格で出ていたのでヨシとした記憶があります。でも、今はもっと低いのではないでしょうか。なにしろ、ヒースの人気はあまり高くないから。

ヒースはソロイスト、作・編曲家としてそれなりの評価を受けているが、とりわけマイルスからコルトレーンの後釜に誘われた話が有名である。だが、当時ヒースはヤク問題で当局の監視下に置かれ、自由に演奏活動が継続できず断念したようである。確かにヒースのtsは引き締まったトーンで大ブローもハッタリもない好感の持てるプレイを身上とするが、アドリブ自体はそれほど妙味に富んだものではない。ヒース自身、そうしたウィーク・ポイントを自覚していたのだろう。tpの他にtb、frh等を加えサウンドに変化を求める作品が多い。本作でもfrhを2本、そしてtubaまで加え編曲家としての側面を強く打ち出している。出来映えは極上とまでは言えないものの彼の代表作として恥ずかしくないレベルは保持している。ただ、4曲に参加している当時、新鋭であったハンコックのフレッシュなピアノが一番の聴きものとなるのも時代の趨勢であろう。


(2004/3/12)

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ジャケットからして地味なレコードである。そのせいかどうか解らないが、以前は一部のマニア以外、見向きもしなかったような記憶があります。しかし、最近、このオリジナル盤は異常?な人気を博している。先日、都内のある円盤屋(廃盤専門店ではない)で目を疑う高値で棚に飾ってあった。ズートが入っていることがその主因であろう。
実は僕はそれほど熱心なズート・ファンでもなく、あまり高く買っていない。理由はなんだろう? こんなことを言うと、ズート・フリークの方達から石を投げられるかもしれないが、独断と偏見で言わせて頂くと、多分、何時のどれを聴いても殆んど変わらないからであろう。ジャズを聴き始めた60年台後半の剛速球、魔球如きクセ球、そして暴投にも似たレコード達に囲まれた生い立ちが、いつの間にかハーフ・スピードの真ん中高目のストレートにタイミングが合わなくなってしまったのかもしれない。

しかし、少なくとも‘COOKIN'’と本作の2作は例外である。ここでは、サイドメンの一人でありながら、主役がズートである事は衆目の一致するところ。BNでズートとはやや意外であるが、これがイイ。チョロチョロしたtpの存在さえ忘れさせる程、この日のズートはリキが入っている。女(ヒップ)にいい所を見せたかったのだろう。洋の東西を問わず力のある者なら当然そうするだろう。
曲では‘コートにすみれを
がコルトレーン、J.R.モンテローズと並び名演の誉れ高い。ts奏者好みの曲なのかもしれない。

さて、リーダーのはずのヒップはどうかと言えば、目の前でこれだけ男前のプレイをされては、淑女?になるのも致し方ないのでは。これ
(ジャケットにポイント)で、勘弁してやってください。

WITH ZOOT SIMS / JUTTA HIPP

BLUE NOTE  1530

JELLY LLOYD (tp)  ZOOT SIMS (ts)  JUTTA HIPP (p)
AHMED ABDUL-MALIK (b)  ED THIGPEN (ds)

1956


(2004/4/22)

THE MOST MINOR / JOHN LAPORTA

EVEREST  LPBR 5037

ブラインド・ホールド・テストで本作を出されたら、かなりの人が戸惑うかもしれない。知っていれば簡単だが、知らなければ、なかなか難問である。多くの人がH・マジック?と言うかも知れない。でも、チョット違う。同じアカデミックな演奏でも、本作のラポータはよりハード・バップ的なノリでasを気持ち良く鳴らしている。

ラポータの名はミンガスのワーク・ショツプやサボイのK・クラークやH・モブレー名義の片面のセッションで知られているが、その存在は正にタイトル通り、‘The Most Minor’。
とは言っても、パーカー、ガレスピー、マイルス、トリスターノ等一流ジャズメンとの共演もしているかなりの知られざる実力者でもある。
「幻の名盤読本」には、54年録音の‘Quintet’(Debut DLP10)が紹介されているが、このEVEREST盤もレーベルの稀少性もあって、かなりRAREである。それに本盤はas(cl奏者でもある)1本に専念している点も貴重である。

さて、本作の印象で、形容し難い程の清々しさを憶えるのも、パーカーの‘Billie's Bounce’他、エリントン・ナンバー、スタンダード・ナンバーをその清涼感あるトーンでクリーンにフレーズを繋いでいくラポータのasに尽きます。タイトル・ナンバーでの深々としたプレイにもその偉才ぶりが窺われる。
それに、ラストにラテンの‘Frenesi’を配するあたり作曲も含め只者ではない。
たまには、こうしたJAZZもイイものである。

JOHN LAPORTA (as)  JACK REILLY (p)  DICK CARTER (b)
CHARLES PERRY (ds)

1958 or 1959?


(2004/5/15)


THE FIRST RECORDINGS / ALBERT AYLER

SONET  SNTF 604

ALBERT AYLER (ts)  TORBJORN HULTCRANTZ (b)  SUNE SPANGBERG (b)

1962

Vol.2 (DIW 25034)

初めからアイラーが解ったわけではない。最初に聴いたのはあの“SPIRITUAL UNITY”。
場所は京都「シャンクレール」。まだ、ジャズを聴き始めて一年足らずの初心者の時である。何か異物を体内に注入されたような不快感を覚えたが、周りを見渡すと、皆、頭を垂れ、神妙?に聴き入っているではないか。
はたと思った。こういうジャズを演るミュージシャンとそれを解読?できるリスナーが現実にいるとは、なんてジャズはアマゾンの密林の如く奥深く、ヒマラヤの山の如く高く険しいものかと。「シャンクレール」を出るとき、僕の好奇心と向学心は熱く燃えていた。それから、3、4年後、絶作となった“LAST RECORDINNG 1、2”を聴き、多くの人達がそうであったように、初めてアイラーが解った。それまでに“BELLS”なんか好きで結構聴いていたが、“LAST RECORDINNG 1、2”はまるで別格であった。

本“THE FIRST RECODINNGS”(上)は元々はバード・ノーツというレーベルから200枚ぐらいの限定盤(タイトルはSOMETHING DIFFERENT !!)で出され、後年(69年?)、ソネットから再発されたものである。
下の“Vol.2”もサンプルでほんの10枚ほど出されたらしく、伝説化されていたが、90年、DIWがバード・ノーツのオーナー、ノルドストローム氏と交渉、リリースにこぎつけたものである。

アイラーは若い時に「リトル・バード」と言われるほどのテクニシャンだったと聞く。この2枚に納められているスタンダードやロリンズ、マイルスのオリジナル曲を聴くと,テーマ部分では確かにその片鱗が窺い知れる。後年のようなスピリチュアルな世界には程遠いが、反面、彼がやろうとしたジャズの原型がここにある。

62年10月25日、ストックホルムの‘アカデミー・オブ・モダン・アーツ’でのライブ録音。母国を逃れ、異国の地でストリート・ミュージシャンのような演奏活動を通しながらも、己の信念を貫くアイラーの姿が克明に刻まれている。

アイラーは、当時のジャズシーンの中で一般的には、死ぬまで「疎外」され続けたが、今はどうなんだろう?
「ジャズはメロディ、旋律だ」と説く御仁がおられるが、それはジャズの一側面であっても本質ではない。演奏する側の赤裸々な精紳に触れ、感動、感銘を受ける、それが本質ではなかろうか。その一つの入口がこの2枚だ。

では、収録曲を。メロディだけに終わらぬメロディがここに有る。
“THE FIRST RECORDINNGS”
 * T’LL REMEMBER APRIL  * ROLLIN’S TUNE  * TUNE UP  * FREE
“Vol.2”
 * SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE  * I DON’T KNOW WHAT TIME 
   IT WAS  * MOANIN’  * GOOD BAIT
なんと、あのモーニン」を演っており、僅かながらの聴衆の反応がちょっと聴きものです。
ここにはアイラーと聴衆の間に「疎外」という壁はない。


禁断の園へ、超えてはならぬ一線をアイラーは越えたのだ。

(2004/11/5)

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