チョット
   気になる一枚 vol.5

ROLLIN’ / FREDDIE HUBBARD

PAUSA  PR 7122

FREDDIE HUBBARD (tp flh)  DAVE SCHNITTER (ts ss)  
WILLIAM CHILDS (p  el p)  LARRY KLEIN (b)  CARL BURNETT (ds)

1981

わが国のジャズ・ファンの中でこのレコードを持っている人が果たして何人いるのだろう。1,000人もいないと思う。ハバードの知られざる傑作であり、レア盤である。81年5月、ドイツの‘VILLINGEN JAZZ FESTIVAL’でのライブ録音。
日本でもかって、リリース(82 or 3年?)されたことがあります。SJ誌で駄盤同然のレヴューであった。僕は輸入盤で既に聴いていたので意外であった。その評者はおそらく当時のハバードの一般的評価・人気を気にしてか、あるいはまともに聴かずして書いたか、どちらかであろう。
マイルス王国日本にあってDB誌で人気No.1になったハバードは目の上のたんこぶだったのかもしれない。CBSで緩んだ作品を連発したハバードを識者達はここぞとばかりこぞって袋たたきしたものだ。

それから10年後の1993年の「新・幻の名盤読本」の中で‘CD化して欲しい幻の名盤・400選’に忽然と本作が再び現れたのである
。しっかりと聴いている人達がいるんですね。tpでは輝くトーンで鋭く、時にはグルーヴィーに、flhでは豊かで美しい音色でしっとりと、しなやかに歌い上げ、全7曲、48分に亘ってフレディのスケールの大きい最高のパフォーマンスが聴かれる。
嵐のようなアンコールの後の曲は何だったのだろう。

ジャズ・トランペッターを目指す者ならば、一度は必ずアイドルにすると言うハバードはやはり、稀代のソロイストと同時にスタイリストだ。
しかし、93年には、既に唇の障害を患っていたとは、なんという巡り合せなのか。このジャケットのような屈託の無いフレディの姿をもう一度、見てみたい。

One Of Another Kind
Here's That Rainy Day
Cascais

Up Jumped Springtime
Byrdlike
Brigitte
Breaking Point

ps 本レコードは元来、MPSレーベルに録音され、No.は0068284が付けられている。でも、MPS盤は見たことがない。
ライセンスを受けた「PAUSA」レーベルは米国・カルフォルニアにあります。

(2003.10.7)

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FIRST PRIZE! / EDDIE DANIELS

PRESTIGE  PR 7506

EDDIE DANIELS (ts cl)  ROLAND HANNA (p)  RICHARD DAVIS (p)
MEL LEWIS (ds)

1966

66年のウィーン国際ジャズ・コンテストのts部門で優勝(タイトル通り)したダニエルスがその後すぐに吹き込んだ初リーダー作。これは掘出しもの。トップのボサ・ノバの名曲‘Felicidad’とラストのスタンダード曲‘How Deep Is The Ocean’のなんと素晴らしい事か!
ゲッツを思わせる透明感溢れるサウンドでテーマを情感を込め吹いた後の一転してJ.R.モンテローズばりの男っぽく変化に富んだ創造的なアドリブが圧巻。‘Felicidad’(9:45)、‘How Deep Is The Ocean’(10:35)とともにかなりの長尺物だが、役者揃いのリズム・セクションをバックにダニエルスはその実力を遺憾なく発揮している。若干24才ながら盛りあげ方もツボを心得ており、思わず「いいねー」と声が出てしまう。
tsの他、clで3曲吹いていますが、
このclがまたいいんだなぁ。as奏者の吹くclと違ってts奏者のダニエルのcはサウンド自体に芯があり、それに感覚がモダンで一般的なclのイメージと全く異なり聴きものです。その評判が高いせいか、その後、clに専念するようになり、豪快にして洗練されたtsが聴かれなくなり、残念です。サド=メル・オーケストラの一員としても名が知られています。最近、亡くなったニュースを耳にしたような気がします。聞き違えであればいいのですが。
いずれにしても、この本作を聴くとホント、素直に「気持ちのいい作品だ」と唸ってしまいます。
エサ箱で見掛けたら、逃さずGETしてください。知られていないせいか、値ごろです。


(追記) ダニエルスは嬉しい事に存命中でした。失礼しました。  (2012/2/12)


(2003/12/09)

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RELEASE RECORD.SEND TAPE. / WARNE MARSH

WAVE  LP 6

WARNE MARSH (ts)  RONNIE BALL (p)  PETER IND (b)  
DICK SCOTT (ds)

1959. 1960

マーシュと言えば「モード盤」と「アトランティク盤」と相場が決まっているが、本盤には二つの意味で驚いた。内容がすこぶる良いのと全11曲中、ショート・トラックの一曲を除いてすべて途中でフェード・アウトおよびカットされている。推測だが、なんとか一枚のレコードに納める措置と思われる。もともとプライベート録音で作られた演奏なので2枚のリリースはとても困難との判断であろう。しかし、ここでのマーシュのインプロヴィゼーションは「執念」としか言いようの無いほど恐ろしく深く掘り下げられている。イギリスの評論家、アラン・モーガンが「パーカー以後の最高のインプロヴァイザー」とマーシュを称賛するのも納得できます。
‘Sweet Georgis Brown’、‘You Stepped Out Of Dream’、‘I Remember You’、‘Alone Together’というスタンダードの他、マーシュのオリジナル、ボールとの共作で構成されるが、特にオリジナル・ナンバーでの気迫に満ちたインプロヴィゼーションに感銘を受けずにはいられない。
マーシュというと、トリスターノ一門の高弟のイメージとか、掴みにくい独特のフレージングでチョット近寄り難い面もありますが、「インプロヴィゼーション」にかけては当代随一の名手であったことには違いない。
今まで、時折、本盤を見かけていたがなんとなく見逃していて、昨年末に入手したもの。知らない名盤がまだ、いっぱい有ることを痛感しました。本盤を聴いて、誰だって完全版を聴きたくなるでしょう。CDでもいいから出して欲しい。勿論、アナログで出れば最高ですが。なお、プライベート録音といえども、スタジオで録られているので、音質、バランスに問題は全くありません。因みに僕が聴いているはSTEREO盤です。

右下のポストの消印は1969年の5月になっているので、本盤のリリースはそれ以降と思われます。このユニークなカヴァー・デザインもなかなか秀逸です。


また、このセンターレーベルは2ndプレスでしょうか?

マシュマロの上不さんからのお便りによると、1stプレス、また、完全版は絶望的とのこと。
上不さん、貴重な情報、ありがとうございました。


イヤー、久々に本物のジャズを聴いた気持ちになりました。これだからジャズは止められない。

(2004/1/11)

BRILLIANT CIRCLES / STANLEY COWELL

FREEDOM  FLP 40104

STANLEY COWELL (p)  WOODY SHAW (tp)  TYRONE WASHINGTON (ts)
BOBBY HUTCHERSON (vib)  REGGIE WORKMAN (b)  JOE CHAMBERS (ds)

1969

マイルスの‘BITCHES BREW’が録音された69年8月の約1ヵ月後、同じニューヨークで70年代のモダンジャズ・シーンを担うだろうと嘱望されたホープ達による本作が録音された。精鋭たちの気持ちをストレートに表現したピュアで真摯なこの演奏は行き詰まった感のある当時の「モダン・ジャズ」の突破口になる可能性を充分に秘めているように見えたが、時の女神は彼らに微笑むことはなかった。つまり、異論を承知の上で大局的な見地から言えば‘BITCHES BREW’で「モダン・ジャズ」は終わってしまったと言っても差し支えない現状から顧みると、60年代を加速度を増しながら変貌を重ね続けた「モダン・ジャズ」の精製された一つの結晶とも思える本作でさえ時代の潮流には敵わなかった。彼らのその後の道のりは必ずしも思い通りではなかったようです。

本作は、当時メキメキと頭角を現し、玄人筋に評価の高かったカウエルをリーダーにソロイスト4名がそれぞれ一曲づつ持寄った野心作。アヴァンギャルド・テイストを随所に振り撒きながら時には熱く激しく時にはクールに明日のジャズを目指し己の力を精一杯出し合っている。若いだけに小さく纏まらず伸び伸びとイマジネイティブな世界が描かれているので一気に全曲聴き通しても集中力が途切れることはない。

当時の精鋭達による「モダン・ジャズ」の明日を信じた本作は結果的には「モダン・ジャズの墓標」になったとも言えるが、
69年、まだ熱い息吹は残っていた。


(2004/1/28)

ALL STARS / MILES DAVIS

JAZZ BAND  EB 409

Side 1
MILES DAVIS (tp)  JOHN COLTRANE (ts)  CANNONBALL ADERLEY (as)
RED GERLAND (p)  PAUL CHAMBERS (b)  PHILLY JOE JONES

Birdland,N.Y.C. 3 January 1959

   INTRODUCTION
    WALKIN’
    ALL OF ME


Side 2
MILES DAVIS (tp)  JOHN COLTRANE (ts)  CANNONBALL ADERLEY (as)
RED GERLAND (p)  PAUL CHAMBERS (b)  JIMMY COBB (ds)


The Spotlight, Washington D.C. February 1959
    INTRODUCTION
    SID’S AHEAD
    BYE BYE BLACKBIRD
    STRAIGHT NO CHASER

1988年にフランスからリリースされたブートレグ。あの‘KIND OF BLUE’の直前にラジオ放送用にセットされたライブ・パフォーマンス。データはとりあえず記載されている通りに載せていますが、怪しい所があります。まず、Side 1では‘WALKIN’’は‘BAG’S GROOVE’が、また‘ALL OF YOU’が 正しい。そして、pはガーランドではなく、ケリーではないでしょうか? シングルトーンでは間違いなくケリーに聴こえますが、ブロック・コードになるとガーランドのようにも聴こえます。だが、ケリーがこんなにブロック・コードで弾くとは思えないので、マイルスの注文かもしれない。(*あるディスコグラフィーでは、ケリーとなっています
Side 2では、同じディスコグラフィーによると1959年2月ではなく58年11月1日となっています。
恐らくこちらのデータの方が正しいと思いますが、所詮ブートですからある程度ファジーでいきましょう。

本盤の内容と話が反れますが、お馴染みのスタジオ(‘KIND OF BLUE’録音時)でのワンショットとはやや違うアングルのシーンがジャケットに使われている。このワンカットは見もの。ここではちょっと判り難いが、コルトレーンが相変わらず練習に夢中のさなか、アダレィの言葉(質問?)に耳を傾けるマイルスの真剣な表情に注目してください。これは新しい何かを創造しようと模索する者だけに顕れる眼差しだ。僕は数あるマイルスの写真の中でこのショットのマイルスが一番好きです。この後、マイルスは何と答えたのだろう。なお、マイルスの右にはくわえタバコのエバンスがいるはず。

さて、話を戻してまず音質はどうか、と言うとラジオ放送用にセットされた音源なので思いのほか悪くなく、Side2は鑑賞に充分耐えるクオリティを有していますのでご安心ください。但し、両方とも最後にMCが入りフェード・アウトするのが残念。
中身では、素晴らしいガーランドのソロ(Side2)を聴いてやって下さい。
この演奏スタイルなら彼がピッタリ。久々に呼び戻された(多分これが最後?)ガーランドの水を得た魚のようにキビキビしたpが切ない


(2004/2/20)

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なお、2007年に発刊された「JAZZとびっきり新定盤500+500」にも掲載されました。