独り言 (20)  テナー・バラードの名演  スパイク・ロビンソンの‘The Shadow Of Your Smile’

 
 



  
 

Spring Can Really Hang You Up The Most / SPIKE ROBINSON



 



CAPRI 71785


SPIKE ROBINSON (ts) TED BEAMENT (p) PETER IND (b) BILL EYDEN (ds)


1985. 7. 17 England



 

ヨーロッパ系ジャズに詳しい方、また、かなり年季の入ったジャズ・ファンの間では、S・ロビンソンの名はそれほどマイナーではありませんが、僕のように3大ジャズ・レーベル(プレステッジ、リバーサイド、ブルーノート)を中心にジャズを聴いて育った者にとって、ロビンソンの名は知っていても、なかなか耳にする機会はありませんでした。
 
アメリカ人(1930年 ウィスコンシン州生れ)ですが、イギリスを舞台に活動していたからかもしれません。

先日、‘Days’で恥ずかしながら、ロビンソンのtsを初めて聴いた次第です。そして驚いた!一聴すると、ゲッツに聴き間違えてしまいそうですが、ゲッツの透明感ある音色に温かみと艶を加え、情感たっぷりな歌い方がロビンソンの個性で、聴き始めてすぐ違いに気が付きました。



帰宅し、慌ててネットで検索すると、アマゾンで、しかも、嬉しい事にLPで入手可能だったので、即、オーダーを入れました。


改めて、一枚、じっくりと聴き込みました。いゃ〜、ホント、素晴らしいテナー・バラード集ですね。

乱暴な言い方をすれば、「癒し系テナー」と言う表現も有りかな?と思いますが、それだけでは収まらない馥郁たるロビンソンのテナー・サウンドが聴き手をすっぽりと包みこみます。それにありきたりのソロ・ワークに終わらず、熟練された深みあるソロ構成が見事です。


本作の魅力は、そうしたロビンソンのtsはもとより、収録曲が真にイイ!それにメンバーもイイ!特にP・インドの参加が効いていますね。


収録曲は
A面が、‘LOVE WALKED IN’(GERSHWIN)、‘TALK OF THE TOWN’(KAHN/COHN)、‘SOME TIME AGO’(MIHANOVICH’、‘FOR YOU,FOR ME,FOR EVERMORE’(GERSHWIN)

B面が、‘GHOST OF A CHANCE’(ASCHER/POWER)、‘THE SHADOW OF YOUR SMILE’(MANDEL/WEBSTER)、‘SPRING CAN REALLY HANG YOU UP THE MOST’(LANDESMAN/WOLF)



録音はインドが主宰する‘Wave Studios’によって、ロンドンのクラブ‘The Bass Clef’(インドが経営も)で行われている。インドと言えば、言うまでなく、トリスターノ一門の出で、マーシュやコニッツとの共演で知らぬ人はいませんね。

なお、CAPRI RECORDSはコロラド州デンバーに拠点を置くインディペンデント系ジャズレーベルで、なぜかインドのWAVE レコードからのりりースではありません。


実は‘Days’で聴いたのは‘THE SHADOW OF YUOR SMILE’の一曲だけでしたが、もうこれで充分、一発で殺られた。カデンツァ風のイントロから、ロビンソンがテーマを吹き出し、ワンテンポ遅れてヴォ〜ンと入るインドのb、この辺り、ゾクゾクしますね。この美しすぎるメロディを更に魅力あるものに掘り下げ、硬軟、強弱を絶妙に織り交ぜながらドラマチックに歌い上げるロビンソン、「只者」ではありません。エンディングに入らず、このままずっと吹き続けて欲しいと、願ってしまうほどです。


そしてラストを飾るタイトル・ナンバー、‘SPRING CAN REALLY HANG YOU UP THE MOST’これまた、素晴らしいです!!!

他の5曲も文句なしの名演!ポジテイブ・サプライズの連続です。

ま、とにかく騙されたと思って聴いて下さいな。






ところで、ジョニー・マンデルの名曲、‘THE SHADOW OF YUOR SMILE’は、映画の主題歌という理由なのでしょうか、意外にジャズ・メンが取り上げていません。

そんな中、僕が大好きな演奏は、ペッパーが東京でライブ録音したこちらです。






BESAME MUCHO / ART PEPPER



ペッパーもロビンソンも、甲乙付け難いダントツの名演ですね。
 
 
なお、ロビンソンは2001年、アメリカから憧れて渡ったイギリス・ロンドンで死去している。享年71歳。






(2012. 5. 26).


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