独 り 言





 

(19) 鬼神と化した MUSIQUE DU BOIS / PHIL WOODS







MUSE  MR 5037


PHIL WOODS (as) JAKI BYARD (p) RICHARD DAVIS (b) ALAN DAWSON (ds)


1974. 1.14




この世の中、果たして完全・完璧なものがあるのか?ないのか?又は、あるはず、否、あるはずがないのか、なかなか難しい。もうかれこれ40年近くも前、本作を聴くまでは、あるはずがない、と言う思いの方が強かった。けれど、このウッズにそうした固定観念を見事にぶち破られた。



72年、あのERMを解散して、アメリカに帰国し、暫く西海岸に居を構えいたウッズが、73年、NYに舞い戻った際、MUSEのドン・シュリッテンが待ち構えていたかのように新録したのが本盤。まだ、自己のグループを結成する間もなかったウッズにシュリッテンが用意したリズム・セクションは、何と!強力変態トリオ。このリズム・セクションで思い出すのは、B・アービンですよね。アービンほどのアクの強さがないと、リーダーが食われてしまいそうです。然も、tsではなくasですから、尚更です。

でも、さすが、シュリッテンの目に狂いはありませんでした。

「完全・完璧」なものは、得てして面白みに欠け、無味乾燥的な側面を持ち気味ですが、この日のウッズに関しては御心配無用です。
それは、本作の選曲、構成の妙にも大きく起因している。
A面、B面のトップはウッズのオリジナル、二曲目は有名なスタンダード曲とルグランの人気曲、そして3曲目はショーター、ロリンズのオリジナルとプログラミングもよく練られています。

どの曲でも会心のプレイを聴かせる中、一番、気に入っているのが、70年の「クロマテック・バナナ」で初めて録音されているB-1の「ザ・ラスト・ページ」。バラード風にスタートし、徐々に白熱化していく中、エモーショナルなアルトを一気に炸裂させるウッズに、もぉメロメロです。ウッズ得意の演奏パターンですね。分かっていても、ヤラレちゃいます。



研ぎ澄まされたエッジの利いた鋭い音色、熱い歌心、豊かなイメジネーションと斬新なアイディア、そして弾けるジャズ・スピリット等、ありとあらゆる角度から聴いても全く隙の無いウッズのパフォーマンスはまさに「完全・完璧」、非の打ち所がありません。


ペッパー、マクリーン、アダレー(故)等、名立たるジャズ・
ルトの名手達が把になって掛かっても、この日のウッズには決して敵わなかった。
カヴァを見よ!鬼神と化したウッズを!ただただひれ伏すのみ。

 

本作は、ウッズのBEST 1アルバムのみならず、ジャズ・アルト、そして数多あるジャズアルバムの中でも屈指の名盤である、と断言して憚りません。




(2011. 10. 31) 







なお、PHIL WOODS and his European Rhythm Machineのリアルタイムで正規リリースされた盤を挙げると、次の五枚です。
但し、街の噂ではもう一枚あるそうですが、残念ながら記憶にありません。



 
ALIVE AND WELL IN PARIS

Pathe' SPTX 340.884


PHIL WOODS(as) GERORGE GRUNTZ(p) HENRI TEXIER(b) DANIEL HUMAIR(ds)


1968.11. 14 & 15



コメントあり
AT THE MONTREX JAZZFESTIVAL

MGM  SE 4695


PHIL WOODS(as) GERORGE GRUNTZ(p) HENRI TEXIER(b) DANIEL HUMAIR(ds)


1969. 6
AT THE FRANKFURT JAZZFESTIVAL

EMBRYO SD 530


PHIL WOODS(as) GORDON BECK(p)
HENRI TEXIER(b) DANIEL HUMAIR(ds)


1970. 3
CHROMATIC BANANA

Pierre Cardin CAR 333


PHIL WOODS(as) GORDON BECK(p)
HENRI TEXIER(b) DANIEL HUMAIR(ds)


1970.7. 5
LIVE AT THE MONTREX 72

Pierre Cardin  CAR STEC 131


PHIL WOODS(as) GORDON BECK(p)
RON MATHWSON(b) DANIEL HUMAIR(ds)


1972. 6.19






(2011. 11.7)


              
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