思い出のレコード vol.1
ATLANTIC SD1473
まだJAZZを聴き始めた頃、ハバードと言えば、「フリージャズ」や「アセンション」に参加した‘前衛ジャズの闘士’として、専門雑誌に紹介されており、初心者の僕のイメージはあまり良くなかった。
ある日、いつものように‘しぁんくれーる’にいると、ちょっと感じの違う演奏が流れ始め、それまでの暗い空気が一変され、皆の目が一斉にジャケットに注がれた。
ジャケットを取るには、結構勇気がいるが、恐いもの知らずの初心者、2曲目の幻想的なテーマが流れると、たまらず手にとった。これが、その後、長い付き合いとなるハバードとの出合いの始まりであった。64〜65年にかけてハバードは、リーダー作、サイドマンとして当代随一のソロイストして先鋭的なプレイを見せるが、その実、心の中では、所謂、新主流派と呼ばれる演奏が徐々に煮詰まっていくジレンマを既に感じとっていたのではないか。
このレコードには、大型コンボに、或いはコンガを入れたり、そしてコンポーザーとして、新しいSOUNDを模索する一歩も二歩も進んだフレディの姿勢を見い出すことができる。
確信の手応えを得たかのように映るフレディーの横顔は、ラストナンバー、‘Jodo’での押えても押えきれぬ自信の迸りの表れであろう。
惚れ惚れするジャヶツトだ。2ヵ月後、モーガンとのライブ2枚組を最後のリーダー作にして、ハバードは「ブルーノート」を去っていく。
因みにこの年(1965)1月、マイルスは「ESP」を、6月にはコルトレーンが「アセンション」を録音し、フレディーも参加している。ハバードは意外に、一歩進んでいたのではないか。
CRESCENT / JOHN COLTRANE
S・ROLLINS AND THE BIG BRASS / SONNY ROLLINS
METROJAZZ E1002
SONNY ROLLINS (ts) NAT ADDERLEY (cor) CLARK TERRY (tp)
REUNALD JONES (tp) ERNIE POYAL (tp) BILLY BYERS (
tb)
JIMMY CLEVELAND ( tb) FRANK REHAK (tb) DICK KATZ (p)
RENE THOMAS (g ) HENRY GRIMES (b) ROY HAYNES (ds)
ERNIE WILKINS con&arr
SONNY ROLLINS (ts) HENRY GRIMES (b) CHARLES WRIGHT (ds)
1958
1968,9年頃と思うが、四条通りの高倉小路?を南へ一、二筋下がった所に‘シロ・ハウス’というジャズ喫茶ができ、結構通っていた。マスターはロリンズばりのモヒカン刈で、一風、変わった?感じの人でした。このレコードのB面のトリオ演奏が隠れた名演奏という記事を、何かの本で読み、当時、フリーぽいレコードが巾を利かせ、50年代のリクエストなんか、バカににされそうな雰囲気が有ったけれど、リクエストしてみた。
大口径のスピーカーからいきなりロリンズのテナーが鳴り響いた。こんな入り方って、ありかヨ、まぁ、ビックリした。それからワイルドに、時にはユーモラスにグングン、ドライブしていく。これは、エライこっちゃ、と思っていると、すぐ3曲目になって少し我に返り、、最後の無伴奏ソロの「BODY
& SOUL」のころはKO状態だった。
‘掟破り’というか、‘禁じ手’を犯してしまったレコードがコレ。
確か69年と思うが、このレコードが初めて日本へ輸入された内の一枚を僕はいち早く手に入れた。しかし、下宿アパートには、ステレオはおろか、プレイヤーなんぞ無いため、一刻も早く聴きたく、考えた末、‘シロ・ハウス’へ持ち込んだ。
マスターは、目を白黒させ、「どこで手に入れた?」と尋ねたので、適当な返事をした。
「メチャクチャ、いい」と、入手元から聞いてはいたが、やはり、不安だった。なにしろほぼ10年間、まともなレコードがリリースされていなかったから。
だが、ピアノのイントロの後、ウッズの一音が出た瞬間、これは、やはり凄いな、と直感した。感情たっぷりにスローで入り、余韻を残し一気のトップギアにぶち込む、ドラマチックに。
まるで長年の不遇の鬱憤を吹き散らすかのように疾走するウッズ。
僕がウッズの演奏が好きな理由の一つは、多くののサックス奏者が、善悪は別にして、多かれ、少なかれ、コールマン、コルトレーン等の影響を受け、揺れていたにも拘らず、ウッズは、パーカーの遺伝子をそのまま持ち続け、進化はしている点だ。勿論、フリージャズの影響を全く受けていない訳ではないが。
PATHE 340−844
PHILL WOODS (as) GEORGE GRUNTZ (p) HENRI TEXIER (b) DANIEL HUMAIR (ds)
1964
1968
19・26/2/1965
(2003.2.7)
(2003.2.7)
(2003.2.7)
時の審判を経て、最後まで心に残るものは、案外、最高傑作と呼ばれる作品の影でひっそりとした存在のこの「クレッセント」かもしれない。
あの、となりの住人は、いまどうしているのだろう。ぼくの恩人だ。あの夜が無かったら、きっと、今でもコルトレーンに迷っているだろう。