思い出のレコード vol.1

ATLANTIC  SD1473

Charles Lloyd (ts&fl) Keith Jarrett (p)   Cecil Mcbee (b) Jack DeJohnette (ds)
1966


ジャズの世界にのめり込むきっかけとなった記念すべきレコード。

大学2年の春、初めて今はなき‘しぁんくれーる’(京都)の扉を開いた時、このレコードに出会った。
薄暗く、紫煙たちこめ、轟音の鳴る閉ざされた空間にあって、このフォレスト フラワーは、場違いな、まさに花、そのものでした。

野外ライブものなので、途中、ヘリコプター?の音が入ったりして、リアリティも充分。キースの、チョット前衛ぽいソロも印象的。

ジャケットを見るだけでも、あのメロディが流れてきそうです。後で解かった事は、このレコードが、エアーメール便で入っていたため、他のジャズ喫茶はもとより、レコード店にも、無かった。直輸入盤として入手できるようになっのは、随分後になってからです。

‘しぁんくれーる’は、やっぱり、偉かった。 
FOREST FLOWER / CHARLES LLOYD
BLUE SPIRITS / FREDDIE HUBBARD
BLUE NOTE  BST 84196
Freddie Hubbard (tp)  James Spaulding (as fl) JoeHenderson  (ts)           Kaine Zawadi (eup)  Harold Menbern (p)  Larry RIDLEY (b)                Cliford Javis (ds)  Big Black (conga)
Freddie Hubbard (tp)  James Spaulding (as fl)  Hank Mobly  (ts)          Kaine Zawadi (eup)  Mccoy Tyner (p)  Bob Cranshaw (b)  
Pete La Roca (ds)

まだJAZZを聴き始めた頃、ハバードと言えば、「フリージャズ」や「アセンション」に参加した‘前衛ジャズの闘士’として、専門雑誌に紹介されており、初心者の僕のイメージはあまり良くなかった。

ある日、いつものように‘しぁんくれーる’にいると、ちょっと感じの違う演奏が流れ始め、それまでの暗い空気が一変され、皆の目が一斉にジャケットに注がれた。
ジャケットを取るには、結構勇気がいるが、恐いもの知らずの初心者、2曲目の幻想的なテーマが流れると、たまらず手にとった。これが、その後、長い付き合いとなるハバードとの出合いの始まりであった。64〜65年にかけてハバードは、リーダー作、サイドマンとして当代随一のソロイストして先鋭的なプレイを見せるが、その実、心の中では、所謂、新主流派と呼ばれる演奏が徐々に煮詰まっていくジレンマを既に感じとっていたのではないか。

このレコードには、大型コンボに、或いはコンガを入れたり、そしてコンポーザーとして、新しいSOUNDを模索する一歩も二歩も進んだフレディの姿勢を見い出すことができる。

確信の手応えを得たかのように映るフレディーの横顔は、ラストナンバー、‘Jodo’での押えても押えきれぬ自信の迸りの表れであろう。
惚れ惚れするジャヶツトだ。2ヵ月後、モーガンとのライブ2枚組を最後のリーダー作にして、ハバードは「ブルーノート」を去っていく。


因みにこの年(1965)1月、マイルスは「ESP」を、6月にはコルトレーンが「アセンション」を録音し、フレディーも参加している。ハバードは意外に、一歩進んでいたのではないか。


CRESCENT / JOHN COLTRANE

IMPULSE   A−66
JOHNE COLTRANE  (ts)   McCOY TYNER  (p)  JIMMY GARRISON  (b) ELVIN JONES  (ds)                                    
ある夜、突然、となりの部屋から、素晴らしいコルトレーンが流れた。その頃、山科のアパートで学生生活をおくっていたが、隣の住人は学生運動家、たまに寝に帰るぐらいだったから、本心、ビックリした。

しかし、それよりも今まで、そのレコードは聴いたことがなかった事の方のショックだった。
聞くのはシャクだから、ジャズ喫茶で目星をつけ、リクエストをしたけど、全部ハズレばかり。最後に残ったレコードがコレ。つまり、一番地味な存在だったのだ。
紛れも無く、あの夜流れたコルトレーンだった。
聴き惚れた。2曲目の‘Wise One’のtsの入り方はどうだ、今までこんな感情、経験したことがなかった。


それまで、至上の愛、だとかヴィレッジ・バンガードとか、知ったかぶりして、どこか消化不良していた胸のつかえが一気に消えたのだ。
元A&Fの大西氏が以前、こう語っていたことを思い出す。「深夜、一人で店のシステムのチューニングをしながら、これをかけたところ、‘Wise One’が流れ始めると急に涙が出て、止まらなかった」と。氏のフェイバリットアルバム、No.1がこれ。そう言えば、店内の壁は、コルトレーンのジャケットで全部飾ってあつたっけ。


S・ROLLINS AND THE BIG BRASS / SONNY ROLLINS

METROJAZZ   E1002

SONNY  ROLLINS (ts)  NAT ADDERLEY (cor)  CLARK  TERRY (tp) 
REUNALD JONES (tp)  ERNIE POYAL (tp)  BILLY BYERS ( tb) 
JIMMY CLEVELAND ( tb)   FRANK REHAK (tb)  DICK KATZ (p) 
RENE THOMAS (g )     HENRY GRIMES (b)  ROY HAYNES (ds)     
ERNIE WILKINS    con&arr

SONNY ROLLINS (ts)  HENRY GRIMES (b)  CHARLES WRIGHT (ds)

1958

1968,9年頃と思うが、四条通りの高倉小路?を南へ一、二筋下がった所に‘シロ・ハウス’というジャズ喫茶ができ、結構通っていた。マスターはロリンズばりのモヒカン刈で、一風、変わった?感じの人でした。このレコードのB面のトリオ演奏が隠れた名演奏という記事を、何かの本で読み、当時、フリーぽいレコードが巾を利かせ、50年代のリクエストなんか、バカににされそうな雰囲気が有ったけれど、リクエストしてみた。

大口径のスピーカーからいきなりロリンズのテナーが鳴り響いた。こんな入り方って、ありかヨ、まぁ、ビックリした。それからワイルドに、時にはユーモラスにグングン、ドライブしていく。これは、エライこっちゃ、と思っていると、すぐ3曲目になって少し我に返り、、最後の無伴奏ソロの「BODY & SOUL」のころはKO状態だった。


‘掟破り’というか、‘禁じ手’を犯してしまったレコードがコレ。

確か69年と思うが、このレコードが初めて日本へ輸入された内の一枚を僕はいち早く手に入れた。しかし、下宿アパートには、ステレオはおろか、プレイヤーなんぞ無いため、一刻も早く聴きたく、考えた末、‘シロ・ハウス’へ持ち込んだ。

マスターは、目を白黒させ、「どこで手に入れた?」と尋ねたので、適当な返事をした。
「メチャクチャ、いい」と、入手元から聞いてはいたが、やはり、不安だった。なにしろほぼ10年間、まともなレコードがリリースされていなかったから。


だが、ピアノのイントロの後、ウッズの一音が出た瞬間、これは、やはり凄いな、と直感した。感情たっぷりにスローで入り、余韻を残し一気のトップギアにぶち込む、ドラマチックに。
まるで長年の不遇の鬱憤を吹き散らすかのように疾走するウッズ。

僕がウッズの演奏が好きな理由の一つは、多くののサックス奏者が、善悪は別にして、多かれ、少なかれ、コールマン、コルトレーン等の影響を受け、揺れていたにも拘らず、ウッズは、パーカーの遺伝子をそのまま持ち続け、進化はしている点だ。勿論、フリージャズの影響を全く受けていない訳ではないが。


ALIVE AND WELL IN PARIS / PHIL WOODS

PATHE 340−844

PHILL WOODS  (as)  GEORGE GRUNTZ  (p)  HENRI TEXIER  (b)      DANIEL HUMAIR  (ds)                                   

1964

1968

19・26/2/1965

BACK

NEXT

INDEX
TOP

(2003.2.7)

(2003.2.7)

(2003.2.7)

時の審判を経て、最後まで心に残るものは、案外、最高傑作と呼ばれる作品の影でひっそりとした存在のこの「クレッセント」かもしれない。

あの、となりの住人は、いまどうしているのだろう。ぼくの恩人だ。あの夜が無かったら、きっと、今でもコルトレーンに迷っているだろう。

(2003.2.7)
(2003.2.7)
この、‘血沸き、肉踊る’演奏は、当時、先の見えないジャズシーンの中で、ジャズファンが、渇望していたものに他ならない。そういう意味では、このレコードは「歴史的名盤」と言っていいだろう。
ただ、リアルタイムでこれを体験した者と、そうでない者とでは、このレコードの持つ意味合い、価値感は想像以上の差があるかもしれない。


‘シロ・ハウス’を出る時、マスターが「こういう物を持ってきてもらっては困る」といった。ごもっとも。ジャケットの右上に貼ってある‘24,25F(フラン)’のシールを見る度に、あのマスターの顔が浮かぶ。
マスターがこれをかける前に「ロリンズのいやらしさが出ているよ」と言ったのを思い出しが、こんな「いやらしさ」なら大歓迎だ。駄じゃれになるが、ワイルド・ターキーの8年もの、50.5度のストーレートを一気に飲んだ感じ。体がかっか、かっか熱くなってくる。恐れ入りました。コルトレーンが10人、束になってかかっても敵わないな、と正直、そう思いました。と、ところが、あのマスター、この後とんでもない、レコードをかけよった。

まぁ、それは、またの時に。 → → → 
そのレコードとはコレ。(7/19)  

ヴァーヴからリリースされている「BRASS & TRIO」は再発もの。これが、オリジナル。スタジオ風景がレトロ調でそれなりの味は出ているが、もう少し何とか成らなかったのだろうか。
でも、
若き日の、絶頂期のロリンズが写っている。いいネー