ちょっと一息       (17)  「ブルー・トレィン」 腕時計の謎

BLUE TRAIN / JOHN COLTRANE

BLUE NOTE  1577

LEE MORGAN (tp) JOHN COLTRANE (ts) CURTIS FULLER (tb)
KENNY DREW (p) PAUL CHAMBERS (b)  PHILLY JOE JONES ('ds)

1957.9.15

この年になると、この種の雑誌(PLAYBOY)を手に取るに躊躇い、レジに行くにもちょっと勇気が要る。でも、この表紙ならば、何故か大手を振って?行ける。当初は買うつもりが無かったが、パラパラをページを捲っていた手が38ページの一枚の写真とそのコメントの所で止まった。

フラー、コルトレーン、バードと並んだ「ソニーズ・グリッブ」の録音時(1967.9.1)の写真(A)とその「ブルー・トレィンに使われた写真はこの時に撮影されたものだった」と言うコメントが載っている所だ。僕は瞬時に?と思った。そう、
左手の腕時計の存在だ。

見慣れているジャケットのコルトレーンの左手には腕時計はないはずだ。耳に隠れているがまず、していないと思って間違いないであろう。そこで、チョット遊んでみようと考え、大手を振ってレジに行った。

手元に97年にリリースされた‘THE ULTMATE BLUE TRAIN  ENHANCED COMPACT DISC’(輸入盤)がある。そのリーフレットにブルー・トレインの録音時の写真が数点、載っている。
当時、僕は、コルトレーンは録音の途中でポロシャツを着替えた(白と黒?)とばかり思っていたが、よく読んでみると、これらの撮影は録音本番時とリハーサル時と注釈されている。但し、どちらが本番、リハーサルかは明記されていない。また、リハーサルは別の日(通常は前日?)と考えていいだろう。

さて、もうお解りのように、白のポロシャツの時には、腕時計はある。だが、
ジャケットと同じ黒?(濃色)のポロの時(B)は、そう、腕時計はしていない。つまり、両方の写真(A)、(B)だけから推測すると、「ブルー・トレィン」のジャケット写真はやはり、「ブルー・トレィン」の録音本番orリハーサルの時となる。


しかし、プレイ・ボーイの38ページに書かれているコメントは信憑性ある内部資料に基づいているはずなので、コメント通り、このジャケットの写真は「ソニーズ・グリッブ」の録音(or リハーサル)時の休憩中、またはプレイ・バックでも聴いている間、
コルトレーンが腕時計を外し、キャンディを口に含んだ瞬間の時に撮られたものと思って恐らく間違いないであろう。

でも、僕はその内部資料がはたして本当に正確かどうか?ふと疑問に思うし、思いたい。

ここでちょっとフラーとモーガンの服装を見てみよう。フラーはどの写真(ソニーズ・グリッブ、ブルー・トレイン共に)でも、ストライプのボタンダウン・シャツ。一張羅だったんでしょうかね。それに引換えモーガンは、なんと白のシャツにレジメンタルのネクタイ、それに袖を少し折って伊達男ぶりを発揮している。撮影を意識しているのでしょう。
本当はもう一枚、コルトレーンが一人で大きく写っている写真がある。襟がヨレヨレのポロ・シャツ(黒)姿なので、敢えてカットしました。
だが、大きく開かれた目が「オレはジャズに夢中なんだ」と凄んでいる。

さて、実はこの「プレイボーイ」を買った大きな本当の理由は別に有る。「ブルー・トレィン特集」の執筆陣の中の一人に以前、ワケ有って弊サイトにメールを頂いた方が居られたんです。その名を見た瞬間、懐かしく、こうしてご活躍され、嬉しく思いました。今後の更なるご発展、ご活躍を祈念して購入しました次第です。


(戯言・番外編)

「資料・データ」は果たして正確なのか?

先日、最近、発刊された「コルトレーンを聴け!」を立ち読みならぬ座り読みしてしまった。この書店は自宅から近いところにオープンしたばかりで、最近のトレンドのせいか椅子やベンチが設置されている。まぁ、その内にどこでもそうだが?撤去されるだろうが。

結構分厚い本に仕上がっていて、つまみ読みだが、なかなかの力作のようである。まず興味のあるアルバムの所を拝見したが、?の箇所がとりあえず2ヶ所あった。と言っても、資料、データ面である。
「データはウソをつかない」と、ある物書き屋が述べており、正にその通りで、興味が尽きない。
例えばである。この「ブルー・
トレィン」と「ソウルトレーン」(PRESTIGE)と、どちらの録音が早いか、と聞かれても、意外に間誤付くファンもいるのではないか。「ブルー・トレィン」の方が約5ヵ月も早い。僕だけかもしれないが、イメージでは、「ブルー・トレィン」の方が遅いような気がしませんか?(全然、しないって。そりゃ、どうもすいません)

話を元へ戻そう。まず、1ヵ所目は‘GIANT STEPS’の発売時期の箇所。著者自身も資料の60年1月・発売に些か疑問を持っているが、僕が持っている資料とは言えない代物の‘Schwann’のレコード・カタログ・1969年8月号では60年3月となっている。それなら‘Naima’を「1959.12.2」のテイクに差し替えても4ヶ月あれば可能だ。

2ヶ所目は‘OM’のこれも発売時期。70年代初頭とやや曖昧に書かれてあるが、僕は学生時代、京都「しゃんくれーる」でモダン・ジャズとそれこそガチンコの時代(67〜70年2月)によく聴いた記憶があり、年のせいかなと思ったが、‘Schwann’の同号に月までは明記されていないものの既に記載されている。つまり、レア・ケース(発売延期等)を除き、69年8月号が発行されるまでにやはりリリースされているのだ。当時の「しゃんくれーる」はエア・メールによりリアル・タイムで新譜が入荷していたので、まず間違いはないと思う。著者が参考にした資料はなんなのだろうか?


ここで、曲解されては困るが、別に重箱の隅を突付いているワケではなく、僕が言いたいことは、資料・データは必ずしも正確ではなく、記憶の方が合っているケースもある、ということだけで他意はない。しつこいようだが、少なくとも僕の頭の中では、「腕時計の謎」は解かれていない。

さぁ、ここで問題です。本作「ブルー・トレィン」(1957.9.1録音)がリリースされたのは果たして「いつ?」たっただろうか?
もし、これが本当に事実ならば、驚く方も少なくないだろう。

まぁ、この続きは次回のお楽しみに。


(A)

(B)

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(2006.2.11)

(戯言・番外編 vol.2)
「BLUE TRAIN / JOHN COLTRANE」のリリースは「いつ」だったのか?
ナンバー アルバム / ミュージシャン 録 音 日 発売時期(年・月)
(8)1575  CITY LIGHTS / LEE MORGAN   1957. 8. 25    1958. 6
(8)1576  SONNY’CRIB / SONNY CLARK   1957. 9. 1    1958. 3
(8)1577  BLUE TRAIN / JOHN COLTRANE   1957. 9. 15      ?
(8)1578  THE COOKER / LEE MORGAN   1957. 9. 29    1958. 1
(8)1581  A NIGHT AT THE VILLAGE VANGUARD / SONNY ROLLINS   1957. 11. 3    1958. 2
(8)1588  COOL STRUTTIN’ / SONNY CLARK   1958. 1. 5    1958.10
(8)1598  SOMETHIN’ ELSE / CANNONBALL ADDERLEY   1958. 3. 9    1958. 7
  *(8)4001  NEWK’S TIME / SONNY ROLLINS   1957. 9. 22    1959. 3

ここで、本作の前後に録音された主な音源のリリース時期を調べてみよう。
「Schwann’のレコード・カタログ・1969年8月号」では既にステレオ盤のナンバー(頭に8が付く)で掲載されているが、ステレオ盤の最初の発売は59年8月(サムシン・エルス、モーニン等)とされているので、その音源自体のリリース時期が記載されているのが判る。
例えば‘THE COOKER’、‘A NIGHT AT THE VILLAGE VANGUARD’、‘SOMETHIN’ ELSE’などは早くも約4ヵ月程でリリースされている。
ライオンは出来の良さに感激し、一刻も早く、発表したかったのが手に取るように解る。

なお、‘NEWK’S TIME / SONNY ROLLINS’は、新しい4000番シリーズのトップを飾るために、敢えてリリースを控えていたのだろう。

ところで、ご存知の方もおられると思いますが、タイトル曲‘Blue Train’はテープ編集されている。‘THE ULTMATE BLUE TRAIN’にはオルタネイト・テイクが2曲プラスされており、マスター・テイクとして収録されている ‘Blue Train’(take9)のドリューのソロは実はオルタネイト・テイク(take8)のソロに差し替えられ、しかもカットされたドリューのソロは残っていないとコメントされている。つまり、完全なオリジナル・マスター・テイクは変な話だがこの世に存在しないワケだ。
それに、これは僕の思い過ごしかもしれないが、コルトレーンのソロでもハサミが入っているようなやや不自然な箇所が感じられます。皆さんはどうですか? まぁ、どうでもいいっか。夢が壊れるだけだから。


録音に先立つある日、ライオンはモーガンを呼び、耳元でこうウィスパーした。「奴は所詮、借りもの、本当のリーダーはモーガン、お前だ」と。プレイはマセているが、まだ、19才になったばかりで根はウブ?なモーガンは意気に感じ、白のシャツにネクタイという出で立ちで現れ、コルトレーンを凌ぐほどのプレイを披露した。
そして、ライオンは録音し終わったテープの保管ケースにこう印した。‘リーダー、リー・モーガン’。だが、思い直して‘ジョン・コルトレーン’と書き改める。「そう言えば、月末にモーガンを予定していたっけなぁ・・・・・・・・・・・・・」   
イャー、冗談、冗談ですよ。


で、‘BLUE TRAIN’(1577)がリリースされた時期は?、というと‘Schwann’ではなんと「1960年8月」となっている
チョット信じられない。誤入力だったのだろうか? 3年近くも「お蔵」にされていたなんて聞いた事がありません。
でもその可能性が全くゼロではない。プレステージとの契約条項だ。リリース時期に関しての決定権をプレステージが握っていたかもしれない。また、コルトレーンがプレステージとの契約終了後、BNではなく、メジャーのアトランティクと契約し、その第一弾‘GIANT STEPS’の後というのも何か匂いませんか? いろんな思惑が交錯していたのかもしれない。インパクトはこの時期が1番ありますし。でも「1577」がそのままというのも気になるなぁ。

うぅーん、本当は「いつ」だったのだろう? 「謎」がまた一つ増えた。


(2006.2.18)

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