呟 き


(19)  ZOOT SIMS うわさ?のデュクレテ・トムソン盤

ON DUCRETET THOMSON / ZOOT SIMS

ODEON EOJ 70105

JOE EARDLEY (tp) ZOOT SIMS (ts) HEANRI RENAUD (p) BENOIT QUERSIN (b) 
CHARLES SAUDRAIS (ds)

1956.3.16

レコード(CD)がある程度、集まってくるとチョットしたミスを犯してしまう。同じものを気にしながらもダブリで買ったり、或いは買ったつもりでも探し見ると無かったりする。ところが、購入した記憶がまったくないのに、何故か棚にある、というケースが稀にあります(といってもダブリ買いの変形なんですが)。

本作が正にソレ。駄盤ならともかく、国内盤でも今ではチョットしたレア盤なら「そんなバカな」と思われるやもしれませんが、本当なんです。バック・カヴァの日本語ライナー・ノーツと中に挿入されている「ホット・サマー・ジャズ・ベスト80」というカタログから推測すると、どうやら本盤は70年台半ば?に発売されており、その頃、僕にとってズートは興味の対象外だったので、恐らく、珍しいからと他のレコードと一緒に買ったままだったのだろう。

本盤をレコード棚で見つけたのは、今から20年ほど前、分類の仕方を変え整理した時、発見。その筋ではかなり以前から評判だったようですが、この時でさえ、一度?針を降ろした位でそのまま仕舞い込んでいた。
だから、今でも、カヴァ、本体共に新品同様、ピカピカです(嫌味ぽくってすいません)。

それからしばらく経った頃、モノラル盤はモノラル専用のカートリッジで聴くと「音」が良くなるという情報を得て、国産のカートリッジを購入し聴き始めた。僕のプアな耳では、やや骨太の音に変化したかな?程度でしたが、あるオーディオショップの閉店or改装セールでユニークな形状をしたシェルのリード線を見つけた。
素材は高純度銅リッツ線だが、太さが目測上2ミリ近くもあり、おまけに両サイドはチューブを被せてあるが、中央部分は剥き出しの裸である。ビニールの小袋に入っていただけで、素性は全く解りませんでした。でも、値段はそこそこしていたので、ひょつとしたら、と淡い期待で買い込んだ。しかし、いざ、装着しようとしたら、これが結構難しい。硬くて扱いにくくオバーハングとリード線同士の接触問題が生じ、そのためシェルを3、4個買い替え、なんとか収まった。

で、音出しをしてみると、なんか寝惚けた音が出てきて、こりゃ、失敗だなぁ、と思っていたが、しばらく使っていくに従い、その都度、音の表情が変わっているのに気がついた。つまり「エージング」といつやつですね。その後、この「素性不明」の極太リード線は力強い味方になっているのは言うまでもありません。

それ以来、このODEON盤の「音」は国内盤としてはイケル、否、かなりイイ部類に入ると密かに思っていましたが、オリジナルの「音」を聴いていない以上、比較する術を知らなかった。
だが、3ヵ月ほど前、紙ジャケ・24bitリマスターCDを入手して、この国内ODEON盤の「音」の良さを漸く確信した。

例えば、感涙の名バラード演奏として定評のQ・ジョーンズ作‘Evening In Paris’を聴いてみよう。このアナログ盤はズートのtsが持つザラッとした質感のみならず微妙な音の強弱まで理想的とは言わないまでも高いレベルで聴かせ、夕暮れ時のパリの情景をやるせなく見事に描写している。こんなことを言うと、CDをお持ちの方の怒りを買うやもしれませんが、CDではズートのtsの音がややマイルドで音の強弱が平板に聴こえます(大汗)。

また、アードレーの入ったトラックでも華やかさは乏しいけれど金管楽器・tpの芯のある質感をきちんと聴かせてくれます。‘My Old Flame’では短いソロながら、妙に心を衝いてきます。音が活きている証拠です。

それにカッティング・レベルが国内盤にしては異例に高い。

とはいっても、本盤に問題が無いワケではありません。B面の2曲目、‘On The Alamo’、特に続く‘My Old Flame’の最後にテープ・ノイズ、また、ラストの‘Little Jon Special’でアードレーのtpが何かに反響?しているように聴こえる部分があります。ひょっとしたら、ディスク・ダビングをしたのかな?と勘違いしたほどです。
それに内容とは無関係ですが曲と曲の間が長過ぎ、初めて聴くとちょっと不安になります。
また、カヴァの顔がつぶれて酷ですね。その点、CDは立派です。なお、ODEON盤で黄色の文字が赤になっている。多分、オリジナルがそうなんだろう。

本作のオリジナル・タイトルは‘ZOOT SIMS-HENRI RENARD’ですが、一般的には‘ON DUCRETET THOMSON’で通っている。ライナー・ノーツによると60年前後?にデュクレテ・トムソンの日本代理店からニホン・ディスクというレーベルから10インチ盤(オリジナル同様)で発売されていたが、この12インチ・ODEON盤はそれ以来、初めてだそうです(また、最後?)。ただ、収録曲数は同じなのだろうか?残念ながら知りません。


巷では本作はズートの最高傑作と呼び声が高いけれど、果たしてどうだろう?フランス・ レーベルや国内盤(アナログ)のリリース回数が極めて少ないため、噂が噂を呼んでいるような気がしないでもありません。ひょっとすると、ズートよりアードレーの地味ながら説得力あるペットに耳を傾けているファンもいるのでないでしょうか。
そうは言いつつ、仄かな哀愁を漂わす‘CAPTAIN JETTER’を始め、快調なズートのソロにはニンマリです。、


下世話ですがオリジナル盤は恐らく30漫前後でしょうが、このODEON盤なら、諭吉一枚プラスα、それも一葉まではいかないと思いますので、‘Evening In Paris’にぞっこんの方は、根気良く探してみてはいかがでしょうか。一晩、鯨飲したと思えば安いかも?


(2007.10.6)

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なお、ブログ・HP仲間の67camperさんとは微妙に異なる点がありますが、大筋では合っているのではないかな、と思っています(冷汗)。

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