Jazz Men 探訪


ANDREW HILL

Andrew Hill On Blue Note

(8/11/1963)

(8/1/1964)

(13/12/1963)
(25/6/1964)
(3/10/1965)
(5/8/1968)
(16/5/1969)
1.Black Fire (BST 84151)
2.Judgment (BST 84159)
3.Smoke Stack (BST 84160)
5.Andrew! (BST 84203)
6.Compulsion (BST 84217)
7.Grass Roots (BST 84217)
8.Lift Every Voice (BST 84330)

4.Point Of Departure (BST 84167)

(31/3/1964)
   *9.Dance With Death 
        (LT 1030)
(11/10/1968)
*10.One For One
(BN−LA 459H2)
   (10/2/1965,
1/8/1969,16&23/1/1970)
*11.Involution
(BN-LA 453H)
Andrew Hill Qintet
  (7/3/1966)
 が含まれている

その類まれな作曲能力と独特のリズム感から繰り出されるピアノ・プレイをA・ライオンに見込まれたA・ヒルは、ブルーノート時代に後年になって、発表された未発表(*)ものを含め12枚分のレコードを録音し、わが国でも、ジャズ評論家や町の辛口マニアの間で高く評価されている一人。
初リーダー作から約半年間で5枚という離れ業をやってのけたり、12枚分、全曲、オリジナル、という特異体質の持主です。
これ程の才能がありながら、巷では、それに見合った人気を得ていなのも不思議な話です。

1〜5
までの五連発シリーズは、脇を新・旧の実力者でがっちり固め、新主流派的演奏で其々評価も高い。はコンガ、パーカッションを加え、アフリカン・リズムをベースにした野心作。はオーソドックスにtp(モーガン)、ts(アーヴィン)を従えた2管編成、はコーラスを交えた異色作、と続きます。
未発表シリーズでは、
がtp(トリヴァー)、ts(ファレル)と新世代の2管編成、、10ではハバード、ヘンダーソンとのクィンテット(65年)とB・モウピンのtsが入ったセクステット、カツテット+ストリングス・カルテットのカップリング、11はS・リバースを加えたカルテット、となっている。

さて、中身はどうかと言えば、
1〜11まで共通して言える事は、どの作品をとっても志というか、高い楽想で構成されている。されど、よく聴くとどれもこれも大差ない、と言えなくもない。これが案外、A・HILLのウイーク・ポイントかもしれない。
このあたりの事情は、65年2月ハバード、ヘンダーソンという当時最高のメンバーを揃えながら‘おくら入り’した演奏
10を聴くとその理由が解ります。
世評では、初リーダー作ながらダウンビート誌で五つ星を獲得した
とドルフィーが参加したが代表作とし挙げられていますが、僕は、それほど買っていない。の評でよく‘黒い情念’という表現が使われるが、‘黒い情念’って、一体、何なのだろう。言葉のお遊びなら、やめてもらいたい。
もし、それらしきものがあるとすれば、
10ストリング・カルテットが加わった69年録音に聴かれるヒルならではのリリシズムではないでしょうか。
また、
はドルフィーが参加すると、何でも評価が上がる風潮がありますが、説得力にいま一つ欠けると思います。

‘モダン・ジャズとは、こういうものだ’と、ヒルとハッチャーソンをグイグイと引っ張るエルビンの王者のドラミングがきかれる
Judgment」こそ数あるヒルの作品の中でも、ピカ一の存在。

つづいて、一つのコンセプトに基づき、新しいサウンドを探求せんと全員が一丸となる「Compulsion」は、までの詰込み録音がら生ずる「特異性のマンネリ化」を払拭する野心作で、ヒルの音楽性の全貌を知る上で避けて通れない作品となっている。また、ハバードのtpも聴きもの。ただし、最初はとっつきにくいかもしれない。

決して、恵まれることのないHillの音楽人生にあって、このブルーノート時代は、一番輝いていたことでしょう。
            
  

(注)ヒルの生まれ故郷は、ハイチではなく、シカゴのようです。
   また、最近、新しく発掘されたマテリアルがCDでリリースされている。

PS:ヒルの作品について、録音日、レコード番号、発売時期等、興味深い点があります。AとBは録音順と番号順が逆、しかも連番。DとEでは、Eの方が先に発売されたかも。と、いうのは、Dのジャジットの裏に既にEのジャケット写真が<Last Release>として掲載されています。


(1)

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 (2) STANLEY COWELL
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(6) Compulsion (BST 84217)

こちらで紹介しています。

(9) Dance With Death (LT 1030)

CHARLES TOLLIVER (tp)  JOE FARRELL (ts ss)  ANDREW HILL (p)  VICTOR SPROLES (b)  BILLY HIGGINS (ds)

1968

BNがリバティ/ユナイテッド時代(1980年)、未発表シリーズの一枚としてリリースされたもの。画一的なアルバム・カバーと評判宜しくない青ベタ白おたまレーベル(左)とあって、円盤屋ではクズ盤同様?の扱いを受けているが、なかなかの好盤である。

まず
、「音」がイイ。青ベタ白おたま、とバカにしてはいけない。往復ビンタを食らったかのように、目、いや、耳が覚める。録音はヴァン・ゲルダー、リ・ミックスがTony Sestanovichとなっている。リ・ミックスとはリ・マスターと思いますが、ここがポイントに違いない。フロントの2管、tp、tsがビシバシと鼓膜に突き刺さってくる。
オーディオ的にはどうかと思いますが、このエッジの効いた「音」、好きですね。

演奏内容もこの次世代の2管・二人(前作4303はモーガン、アービン)の攻撃的なプレイに支えられ、ヒルのpがいつになく大らかに聴こえる。デビュー当時に比べ円熟度が増し、聴き易く、曲もよりメロディアスに変化している点も見逃せない。しかし、それらを割り引いてもこの時代あまりにも「オリジナリティ」な作風がお蔵入りした主因であろう。
それだけに実力盤、大穴盤である。


(10/29)

(5) Andrew !!!  (BST 84203)

JOHN GILMORE (ts) BOBBY HUTCHERSON (vib) ANDREW HILL (p) RICHARD DAVIS (b) JOE CHAMBERS (ds)

1964

アンドリュー・ヒルを語る上で、まず聴いておかねばならない作品がある。BN初リーダー作‘BLACK FIRE’ではない。ヒルの初リーダー作‘SO IN LOVE’(WARWICK 2002)である。

この作品は当初のデータでは1955年に録音されたことになっていたが、そうすると37年生まれのヒル、17、8才の時となる。たいした内容でもないが、不自然さは拭えず、後年、ヒルが語るには59年だったそうだ。それなら納得がいくが、それにしてもBNのヒルしか知らない方が聴いたら、まず誰でも驚くだろう。とても同一人物とは思えない。(なお、2007年4月20日死去した際に1931年生まれと判明しました)

真っ当にスイングしているどころか、‘Body & Soul’、‘That's All’ではA・テイタムにも通ずるスイング・タッチでラブリーに聴かせるほどです。まぁ、それもそのはず、ヒルはD・ワシントンやハートマンの歌伴をしているのだ。それから僅か3、4年で大変貌、そりゃ、もうビックリですわ。何が、誰がそうさせたのか? 興味深いのは、その間に‘TO MY QUEEN / WALT DICKERSON(1962年)に参加している点です。

さてBNでの初録音はヘンダーソンの‘OUR THING’(4152)、続いてモブレーの‘NO ROOM FOR SQUARES’(4149)、そして初リーダー作‘BLACK FIRE’(4151)、後はご存知のように詰込み録音が開始される。

前置きが長くなったが、本作の注目点は、サン・ ラ ・グループで知られるtsのギルモアの参加。ヒルとボビ・ハチは‘JUDGEMENT’でエルビンのdsに引っ張られたとは言え、抜群のコラボレーションの良さを聴かせているが、そこへ曲者、ギルモアが入るとどうか?が本作の聴き所。勿論、ライオンの狙いはそこだろう。ギルモアのドスの効いたサウンドでフレーズを短く打った切る独特の奏法はなかなか迫力があるものの、残念ながらボビ・ハチのメタリックでクールなヴァイブとあまり上手くブレンドしているとは言い難い。
それを肌で感じ取ったのか、ヒルのpも何時になく饒舌になっていて、あの独特のリズム感、フレージングがやや単調になっているようだ。

本作を高く評価している方も多いと聞くが、僕は乱発?のツケが回っていると思う。「鉄は熱いうちに打て」という諺がありますが、約半年の間に5作、しかも全てオリジナル曲とは、編制をいくら変えてもチトやり過ぎではないでしょうか?その証拠と言うワケではないが、ライオン(とウルフ)は作品のナンバー、リリース時期にかなり腐心している。とは言うものの、聴き手に「聴く力」を要求するレベルは有しているので甘く見ると火傷する。

なお、僕の記憶では、本作がリリースされたのは68年頃になってからではないでしょうか?(ちょっと自信はないですが)


(2005.11.28)

(4) POINT OF DEPARTURE (BST 84167)

KENNY DORHAM (tp) ERIC DOLPHY (as, fl, bcl) JOE HENDERSON (ts) ANDREW HILL (p) RICHARD DAVIS (b)ANTHONY WILLIAMS (ds)

1964.3.31

ぼ一年前、モブレーの‘NO ROOM FOR SQUARES’でBNデビューしたヒルの早くも第4作目のリーダー作。そして、フロントを3つのホーンで固めたSEXTET。

注目は、やはりドルフィーの参加でしょうか。それと、ちょっと場違いな感じも無きに疎もあらずのドーハムの存在も興味深いですね。、ヘンダーソンの2作目‘OUR THING’で既に共演しており、b、dsの違いこそ有れ、ザックリ言えば、‘OUR THING’にドルフィーを加え、リーダーをヒルに置き換えたセッションとでも言えるでしょう。だが、出てくるサウンドは大きく異なっている。

ヒルと言うと、その独特のタイム感覚とハーモニーの付け方からやや難解なイメージが付き纏うが、彼のpの本質は至ってナイーブと僕は思う。

そのナイーブさは、本作のような3管が入ることで、より一層浮き彫りにされ、比較的聴き易い事とドルフィーが参加しているというだけで、一作目の‘BLACK FIRE’と共に、世評ではヒルの代表作挙げられている。


でも、果たしてそうだろうか?

ヒルのプレイは恰も水平線を横へ横へで伸びていくソロ構成を特徴とするならば、ドルフィーのソロ構成は垂直型、つまり、ヒルを横軸に、ドルフィを縦軸に、その間をドーハム、ヘンダーソンが飛び交う構図がライオンの狙いだったのだろう。そして、それを背後からプッシュするbにデービス、dsにはウィリアムスを起用、と用意は万端整っている。

然しながら、この3管、テーマ・アンサンブルでは問題ないけれど、ソロになると上手く調和しているとは言い難いですね。例えば、A-1ではドルフィが曲想に対しあまりにも唐突的ですし、A-2ではドーハムがやや苦しげですね。それを察知したワケではないでしょうが、ヘンダーソンはソツのないプレイに終始している。

B面では、ドルフィーに手を変え品を変えさせたり、ヒル流リリシズムを聴かせたり、それなりに演出を利かせているものの、敢てドルフィーを加えた3管効果は期待した程ではない、と聴きましたが、如何でしょうか。


(2009.12.11)


(2) JUDGMENT! (BST 84159)

Andrew Hill (p) Bobby Hutcherson (vib)  Richard Davis (b)  Elvin Jones (d)

1964.1.8

Hillのpには「難解」というイメージが付き纏うけれど、それは従来の「スイング感」とか「乗り」とのズレであって決して難しいpを弾いているワケではない。
ただ、Hillの体臭とも言えるリズム感が生理的に合わない人にとってはなかなか受け入れられないのも事実です。

しかし、その独特のタイム感覚、ハーモニーに惚れ込んだA・ライオンは初リーダー作から約半年間に5枚ものアルバム録音する荒業に出、しかも全て楽器編制が異なるほどの力の入れ具合です。それに、メンバーもなかなか魅力的です。

本作はリーダー・セッションとしてはは3番目ですが、一月先に録音された‘SMOKE STACK’より先にリリースされている。ライオンはリリース時期にかなり腐心しており、録音順ではなく、‘BLACK FIRE’、‘JUDGMENT’、‘POINT OF DEPRTURE’、‘SMOKE STACK’、‘COMPULSION’、‘ANDREW!!!’の順でリリースされたようです。さすが、ジャズの潮流をしっかり読んでいますね。


裁判所と思しきレンガ塀の前で、サーチライトに照らされたヒル、果たして審判は‘Guilty’なのか、それとも‘Not Guilty’なのか?

カヴァに映るヒルの表情は自信満々だが・・・・・・

Hillの特異なタイム感覚を適切な言葉で言い表す事はなかなか容易ではありませんが、例えるならば、句読点のない、或いは段落のない文章を読んでいる感覚に近く、ともすると暗号を解きほどいているような不安感を呼び起こし、それが「難解」に繋がるかも。

そこで、ヒルの体臭を損なうことなく、かといって流されないようにと選ばれたdsがE・ジョーンズ。漂うようなヒルのpに合わせるようで合わせない強力なdsと言えば彼しかいない。

ライオンの目論見を察したエルヴィンは、時には出過ぎと思われるほどこのセッションをリードし、彼のメリハリのあるドラミンは句読点、段落の役割を果たしている。五連発中、一番聴き易い作品となった本作に下った審判は、ヒルの「BEST作」に。


中でも、ライオンに捧げた‘Alfred’は4人によるフリーなアプローチとポエム的響きが沁み亘る絶品。

また、ボビ・ハチのクールなヴァイブもヒルの世界によく溶け込み、同じ編制のMJQと全く違うサウンドになっている点が如何にもBNらしい。


(2016. 6. 29)