「幻の名盤」を聴く 3

AND FRIEND / BOOKER LITTLE

BETHLEHEM  BCP 6061
BOOKER LITTLE  (tp)  JULIAN PRIESTER (tb)  GEORGE COLEMAN (ts)
DON FREEDMAN (p)  REGGIE WORKMAN (b)  PETE LA ROCA (ds)

1961

「幻の名盤読本」には、リトルの単独リーダー作、四枚(UA,キャンディド、タイム、ベツレヘム)が全部掲載されており、四作目となる本作はリトルのラスト・アルバムでもある。リトルのあの哀感ある「音色」とひたむきな「フレージング」は23才で夭折してしまったこともあって、多くのジャズ・ファンの胸に永遠に刻まれている。
本作は人気の点ではワン・ホーン・カルテットの「TIME盤」に一歩譲るも、内容は互角以上と思います。ハイスクール時代以来の僚友、G・コールマンを含む分厚い3管編成と、次世代のリズム・セクションを背景にリトルのtpは斬新なソロを繋いで行く。1曲を除き、リトルのオリジナルで占める本作からは、
この後1ヵ月足らずで病魔に倒れる姿は予測できない。それほどにこの演奏は充実しています。なお、2ヵ月ほど前にはあの‘FIVE SPOT’の名演も残している。
引き締ったトーンで歌うコールマンのts,バップ・ピアノとは根底から異なるフレーズを弾き出すフリードマンのp、新しいりズム感覚のロカのds、など聴き所も多い。とは言うものの、やはりリトルの憂いに満ちたソロは群を抜いています。

ドラマチックにジャズ人生を翔けぬけたリトルの最後の勇姿がここにある。

ps B・リトルは1938年4月2日、メンフィス生まれ。その5日後の7日に、インディアナポリスでは、F・ハバードが、同年7月10日にはフィラデルフィア(一説には、ピッツバーグ)でL・モーガンが生れています。1938年はトランペッターの当たり年で3人の「神童」が誕生しました。


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(2003/6/8)

WEST COAST WAILERS / C・CANDOLI & LOU LEVY

ATLANTIC  1268

CONTE CANDOLI (tp)  BILL HOLMAN (ts)  LOU LEVY (p)
LEROY VINNEGAR (b)  LAWRENCE MARABLE (ds)

1955

ちょっと、‘キモイ’ジャケットです。この二人ひょっとして・・・・・? でも、このジャケットが‘イイ’って言う方がいるそうで、世の中、解らないものです。さて、本作の目玉は、所謂「ラヴァ・カン」と言われる‘Lover Come Back To Me’であります。ビッグバンドで経験豊かなカンドリにしてみれば、御茶の子さいさい、ったわけではないが、「技あり」といったtpが最大の聴きものです。全篇、職人芸的なレヴィのp、珍しいB・ホルマンの意外に歌う?tsの好演もあって、なかなかのレベルを保持しています。
しかし、それを支えるのは、やはり、ヴィネガーとマーブルの「黒いリズム」ではないでしょうか。全員、白人であったら、アッサリし過ぎて、本作はそれほど、評価は得られなかったかもしれない。
それと、カンドリのtpは、ビッグバンド出身もあって、勇ましく、元気溌剌としていて、一聴、いいねー、言いたい所ですが、例えば‘Lover Man’、‘Flamingo’など、スローで聴かせる曲では、コンボで鍛えたイースト・コースト派と比べるとエモーションの掘下げが少々浅く感じます。まぁ、そう思うのは僕だけかもしれませんが。
L・モーガンの‘Flamingo’と聴き比べるのも、面白いかもしれない。
僕の全体の印象は、ウエスト・コースト派によるハード・バップというよりビ・バップに近い感じです。1955年から来るものかも知れません


(6/28)

JACK MONTROSE WITH BOB GORDON / JACK MONTROSE

ATLANTIC  1223

JACK MONTROSE (ts)  BOB GORDON (bs)  PAUL MOER (p)
RED MITCHELL (b)  SHERRY MANNE (ds)
                                               1955

ヨアヒム・E・ベーレント氏が名著「ジャズ」の中で、「ウエスト・コースト・ジャズを代表する屈指の名盤」と挙げている一枚。うす味のアレンジを抜ってスムーズなモントローズのts、夭折したゴードンの豪快でキレのあるbsは聴くほどに味わい深いものがあり、サブタイトルにあるようにアレンジ、プレイ、作曲とモントローズのジャズマンとして全貌がここに凝縮されている。
だが、正直に申し上げて僕如きチンピラには、本作の真髄など判るはずもない。「幻の名盤読本」では、かって元祖辛口評論家で鳴らした粟村氏がコメントをお書きになっており、わずか400字以内で本作の価値をいろいろな角度から的確に述べられています。こういうコメントは恐らく40,000字以上を書くだけの知識がないと書けないであろう。本作の内容を一言で言い表すと、
有能な二人がアイデアを出し合って吹いた時、1+1=2以上のsamethigが生れる、ということです。
僕にとって本作は聴解力と表現力を試される一種のバーみたいな存在で、とても超えられません。なんともはや、とりとめの無いアルバム紹介となってしまいましたが、一度、お聴ききされたし。
できればどなたかにコメントの代筆をお願いしたい。メールで送って頂ければ、当HPで紹介いたします。

JACK MONTROSE SEXTET / JACK MONTROSE

CONTE CANDORI (tp)  JACK MONTROSE (ts)  BOB GORDON (bs)  
PAUL MOER (p)  RALPH PENA (b)  SHERRY MANNE (ds)
                                               1955

PACIFIC JAZZ  PJ 1208

本作はATLANTIC盤が吹き込まれる少し前にPJに録音されたモントローズのもう一枚の代表作。ここでもアレンジを担当しているが、コンドリのtpが加わっている分、サウンドに厚みというか、色彩感が高まり、躍動的です。
ウルサ方からは、アレンジが効き過ぎてソロが負けているとの意見もあります。確かに部分的にそうした箇所は見受けられますが、逆にしっかりした枠組みのなかで、安心して生き生きとしたソロをとる3人のプレイは、十分に魅力的です。モントローズのts、ゴードンのbsに交じってコントロールの利いたコンドリのtpは彼のリーダー作の‘WEST COAST WAILERS’より個人的に好きです。
判り易さでは本作のほうが‘‘With Bob Gordon’より上です。
でも聴き方が甘いのかな? また、一連のアーティスト・シリーズのジャケツト(日本人のSueo Serisawa氏)もなかなか秀逸。
なお、
本作は「幻の名盤読本」には、掲載されていない


ps ‘The Message’(JARO)で知られるJ.R.MONTEROSEとは、別人ですのでご注意。綴り(Eの一字)もちがいます。

MEET Mr.GORDON / BOB GORDON

PACIFIC JAZZ  PJLP 12

JACK MONTROSE (ts)  BOB GORDON (bs)  PAUL MOER (p)
JOE MONDRAGON (b)  BILLY CSHNEIDER (ds)
                                               1954

将来を嘱望されながら1955年8月28日、交通事故により27才で夭折したbsの逸材、ボブ・ゴードンが残した唯一のリーダー作が本作。オリジナルは10インチだが、数年前(40年ぶりに)オリジナル仕様で12インチ化、再発された(世界初)。
ここでも盟友、モントローズのアレンジにより典型的なウエスト・コースト・サウンドが聴かれる。元々、10インチ盤で制作されたため、全8曲、それぞれ、2〜3分台で仕上げられており、12インチ盤に慣れた耳には、やや短い感は否めない。とは言うものの、bsの持つ重々しいイメージとはかけ離れ、モントローズのtsよりキビキビと能動的に吹き上げるゴードンのパフォーマンスは、大きな可能性を秘めていただけにその若死にが惜しまれる。
曲目では、
W・ケリーの名演(ロリンズも‘+3’で採り上げている)でも知られる‘WHAT A DIFFERENCE A DAY MADE’に目が行くがユニークなアレンジが施されている。
54〜55年の僅か2年間に集中してレコーディング活動を共にしたしたゴードンの存在は、モントローズにとって人間的にも音楽的にもあまりにも大きく、ゴードンの死後、急速に創作意欲を失っていったようです。二人の演奏からは、やはりゴードンが兄貴分であったことが判ります。

(9/4)


(9/4)

ps 上記3枚のLPから聴こえるB・GORDONの挑戦的なモダン・バリトン・Sax、聴き応え、存在感、共に充分です。

SONNY ROLLINS PLAYS / SONNY ROLLINS

PERIOD  LP 1204

SONNY ROLLINS (ts)  JIMMY CLEVELAND (tb)  GIL COGGINS (p)
WENDELL MARSHALL (b)  KENNY DENNIS (ds)

1957

かって「幻の名盤」の中でも随分騒がれた一枚。理由はマイナー・レーベル‘ピリオド’からリリースされたからであろう。もともとクラッシックが専門分野の‘ピリオド’がプロデューサーにレナード・フェザーを迎えジャズを手がけるようになったのは50年代の半ばで、カタログ数も少ない。A・ヘイグの‘カルテット’もピリオドが原盤である。

さて本作は
録音日があの「ヴィレッジ・ヴァンガード」の翌日である事も重要。L・フェザーのプロデュースとあって前日のトリオでのスリリングな演奏とは打って変わって実にオーソドックスなプレイが納められている。まぁ、一言で言えば、月並みですが、悠揚迫らざるスケールの大きいという表現がピッタリのロリンズのプレイが堪能できます。でも、チョット違う所は王者の薫りというか、格調が高い。
但し、
A面の3曲だけがロリンズのクインテットでB面はサド・ジョーンズのアンサンブル・バンドの演奏となっており、ロリンズ・ファンとしてはやや残念です。
その3曲とは、‘Sonnymoon for Two’、‘Like Someone in Love’、そしてチャイコフスキーの<悲愴交響曲>の第一楽章のテーマをモチーフにした‘Theme from Pathetique Symphony’です。このあたり、クラッシック・レーベルの特徴が感じられます。

左上がオリジナル・ジャケット(72年・国内盤)、左下は67年に再発された輸入盤のジャケットです。音質はオリジナルを聴いたことがありませんが、再発輸入盤は決して悪くなくアナログ・サウンドが結構楽しめます。その点、国内盤は中域がやや薄く感じられます。
再発輸入盤は当時、随分売れてヤマハのBEST SELLER集計でも上位に入っていました。

なお、
本作はW・ショーターのお気に入りの作品で、昔も今もアイドルはロリンズ、豪快にして繊細なサウンドにずっと憧れているとのことです。

(11/11)


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