この人のこの一枚、この一曲

LIVE AT JIMMY’S / MICHEL LEGRAND
RCA  BGL 1-0850
PHIL WOODS  (as&c)  lMICHEL LEGRAND (p)  RON CARTER (b)
GRADY TATE  (ds)  GEORGE DAVIS  (g)
                                             1973

ジャケットの顔写真に怖じ気づいて、エサ箱から、このレコードを放しては、いけません。P・WOODSの名ソロが聴かれるんです。
B・EVANSのアルバムタイトルにもなった
「You Must Believe In Spring」がそれ。
WOODSは全曲では、フューチュアーされてはいないが、
この曲でのソロは素晴らしい。
音を、フレイズを溜めて聞き手の心をもてあそぶようなプレイは、WOODSの本領発揮とするところ。
にくい!
NYのジャズ・クラブ<Jimmy’s>でのライブ録音だが、
実に聴き応えある内容に仕上がっており、ルグランの愛嬌あるVOも交え、まるでクラブに自分もいるような錯覚に陥ってしまう。
こんな楽しいレコード、そうザラにはない。
それも、これもすべてルグランの品格とエスプリからくるものでしょう。 凄い人だ。


INVOLVEMENT / JOHN KLEMMER

CADET  LSP 797

John Kllemmer (ts)  Jodie Christian  (p)  Sam Thormas (g)Melvin Jackson (b)  Wilber Campbell  (ds)  

下宿生活の楽しみの一つにNHKのFM放送で流される児山きよし氏解説の「ジャズ・フラッシュ」がありました。週一回、2時間番組でその日がいつも待ち遠しいかった。
ある夜、新譜紹介のコーナーで、このレコードと、確か、G・バーツの「リブラ」が新人sax奏者として取り上げられた。
この「INVOLVEMENT」からスタンダードナンバー‘You Don’t Know What Love Is」ともう一曲紹介されたが、21才とは思えぬ堂々としたプレイに腰をぬかした。
その後、このレコードを手に入れ、聴いてみるとクレマーのtsに独特のイントネーションがあり、うまい言い方が出来ないが、どことなく「卑猥」な節回しが、こちらの正常感覚をやけに刺激した。おまけにS・トーマスのチンピラ風のギターが煽ってきて、これはもう、悪女の誘い、と解っていても逃れられない、そんな情況に嵌ります。
特にS・トーマス作の‘Will ’N’ Jug’なんかはたまりません。そう言えば、「CADET」ってシカゴの会社ですね。

クレマーは、しばらくして「インパルス」から、フュージョンぽい作品を連発し、ガッカリさせたが、79年、「アリスタ」から、何を思ったのかロリンズに挑戦するかの如きデュオ・トリオからなる硬派2枚組作品「NEXUS」を発表し、驚かした。この作品でも、あの節回しはやはり健在だった。
なお「INVOLVEMENT」は決して「きわも
の」ではなく、真っ当な作品である。念のため。


SANFRANCISCO SUITE  / FREDDIE REDD

RIVERSIDE RLP 12−250

FREDDIE REDD (p)  GEORGE TUCKER (b)  ALL DREARES (ds)

1957

名物のケーブルカーの写真を使ったこのジャケット、よく見ると、アレ、と思う。FREDDY、となっている。‘IE’ではなく‘Y’になっているが、どうゆう場合にそうなるのかは、残念ながら知らない。
さて、本レコードは僕の愛聴盤の一枚だが、組曲仕立てのタイトル曲が特に良いのでこのコーナーで取り上げてみた。
サンフランシスコ湾を飛び交うかもめをイメージした印象的なフレーズは、なにかで聴いたことがあるが、ハッキリと思い出せない。
ひょっとしたら「リターン・トゥ・フォーエバー」かも。僕は、このレコードを持っていないので自信は有りませんが。
それはともかく、全篇にわたって、タッチのしっかりしたレッドのピアノ・プレイが聴かれ、つい最後まで聴き続けてしまう。そういうレコードって意外に少ない。
マクリーンとの「コネクション」がレッドの代表作みたいに言われるが、そんな生臭いテーマとは無縁にして詩情豊かなこの「サンスランシスコ組曲」にこそ、レッドの本質が宿っていると思う。
後年、フランス録音の、一時‘幻の名盤’と騒がれた「Under Paris Skies」の原点がこのレコードにあるような気がします
。 


なお、この「サンフランシスコ組曲」は「幻の名盤読本」にも掲載されている。


LINE FOR LYONS / S・GETZ & C・BAKER

SONET SNTF889

STAN GETZ (ts)  CHET BAKER (tp)  JIM KcNEELY (p)
GEOGE MRAZ (b)VICTER LEWIS   (ds) 

泣けます。GETZのレギュラー・コンボにベイカーがゲストとして参加し、ライブ録音されたもの。「ヤク」という障害を乗り越えた二人と言えども、その後の人生は大きく異なった。
GETZは、ボサノバでヒットを飛ばし、順調な人生をまっとうしたのに比べ、ベイカーはそうでもなかったような気がします。死に方もジャズマンらしかった。このあまりぱっとしないジャケットの二人からも容易に推察できます。
日本では、手抜きする、とあまり評判のよろしくないGETZがベイカーを懸命に引き立てている。男の友情からであろう。それに答えるかのように、73年、第一線に復帰してからのBAKERのベスト・プレイは聴き手の心を揺さぶる。

栄光と挫折、光と影、ドラマチックに一生を駆け抜けていったベイカーの不屈のスピリッツは、お馴染みのスタンダードナンバーのなかに溢れんばかりにちりばめられている。
アンコールでの名曲
‘DEAR OLD STOCKHOLM’でのBAKERのソロは、まるで彼の人生そのもののように語りかけてくる。それに万雷の拍手で答える聴衆。目頭が熱くなってくる。そして最終曲‘LINE FOR LYONS」は素晴らしいデュオで締め括る。万感胸に迫るものがある。


なお、同日にベイカーを抜いた
「the stockholm concert」が録音されている


AND HIS ALL STARS / BOBBY JASPAR

EMARCY  36105

BOBBY JASPAR (ts、fl)  RENE URTREGER (p)  SACHA DISTEL (g)
BENOIT QUERSIN(b)  JEAN LOUIS VIALE

1955

1967

「KELLY BLUE」、「DIAL J.J.5」、「BYRD IN PARIS」などでお馴染みのジャスパーがパリで録音したもの。
原盤名は「Modern Jazz au Club St.German」。 63年、惜しくも37才で若死にしている。この当時は、まだL・ヤング、S・ゲッツの流れをを汲むスタイルで、このレコードでもフランスの名手達となかなか渋味のあるプレイを聴かせている。

選曲も‘BAG’S GROOVE’、‘NIGHT IN TUNISIA’と言ったJazzナンバーや、
‘I’LL REMEMBER APRIL’、‘I CAN’T GET STARTED’等のスタンダードを演奏している。
その中で、彼のオリジナル
‘MEMORY OF DICK’は夭折のピアニスト、D・Twardzikへの想いを綴ったもので聴きものです。
哀愁を帯びたメロディをスウィンギーに歌うジャスパーのtsは、非凡な才能を持ちながら、志半ばでこの世を去ったディックを惜しんでも惜しみきれない無念さで溢れ、聴き手の心まで締めつけてくる。
知られざる名曲、名演です。一度、聴いて欲しい。

共演者では、やはりRENE URTREGER (p)  SACHA DISTEL (g)が優れており、特にRENE URTREGERの瑞々しいピアノ・プレイが傑出している。


1983  at stockholm

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ps 本レコードが‘MEMORY OF DICK’のタイトルに変更され、輸入CD盤で
リリースされました。(10/18)

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(2003.2.7)

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