気ままに一枚 vol.3

CHARISMA / LEE MORGAN

BLUE NOTE  BST 84312

LEE MORGAN (tp)  JACKIE McLEAN (as)  HANK MOBLEY (ts)
CEDAR WALTON (p)  PAUL CHAMBERS (b)  BILLY HIGGINS (ds)

1966

「死んで蘇った男」、それがリー・モーガン。60年代後半からリアルタイムでダンモを聴いていた方なら、このニュアンスが解ると思います。72年凶弾に倒れたモーガンのニュースを聞いた際、そのショツキングさは別にして、モーガンの死については‘あっ、そお’程度であった。今の人気ぶりから想像できないが、もう過去の人だったのです。
だから、最近、株が急上昇している‘At The Lighthouse’もあまり注目されなかった。

‘ジゴロ’(65年)あたりから始まったマンネリ作品の連発によるもので、モーガン・ファンの僕でも残念ながら認めざるを得ませんでした。この時期、お蔵入りになった音源が多く見られるのもその事実を物語っている。本作はフロント陣3人とdsが同じ‘コーンブレッド’の1年後(66年9月)に録音されていながら、ジャケットから推察されるように69年7月までリリースされていません
さて、内容はどうかと言えば、期待して聴くと、「変わり映えしないなぁ」、軽い気持ちで聴くと「結構、イケるじゃないか」、つまり気合の入ったWジャケットの割りには水準作止まりです。

今春、東京、京都の中古レコード店で1万、2万というプライスが付けられているのを見ました。人気が上がるのは、モーガン・ファンの一人として嬉しいが、リバティ盤がオリジナルという‘こじつけ’は如何なのもでしょうか? あまり気持ちの良いものではありません。因みに僕は4年ほど前、3千円台で購入しています。

ps モーガンの60年代後半の作品はレコードNo.、録音日、リリース時期がかなり交差(混乱?)しているので要注意です。因みに、ジゴロ・4212(65..6.25&7.1)のリリースは66年(68年7月)、コーンブレッド・4222(65.9.18)は、67年3月、カランバ・4289(68.5.3)は68年8月、シックスス センス・4335(67.11.10)は69年です。

なお、‘コーンブレッド’は「ビル・ボード」(米国週間音楽業界紙)のジャズLPベスト・セラー表(67年3/11付)でいきなり、9位にランクされ、ヒットしています。因みに1位は、‘マーシー・マーシー・マーシー’(C・アダレイ)、2位は‘スペルバインダー’(G・サボ)、4位に‘ゴーイング・ラテン’(R・ルイス)、5位、6位にモンゴメリーの‘カルフォルニア・ドリーミン’、‘テキーラ’、3、7、8位はルー・ロウルス(vo)、10位はJ・マクダフが入っています。


(2003/10/28)

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INVITATION / MILT JACKSON

RIVERSIDE  RM 446

MILT JACKSON (vib)  KENNY DORHAM (tp)  *VIRGIL JONES (tp)
JIMMY HEATH (ts)  TOMMY FLANAGAN (p)  RON CARTER (b)
CONNIE KAY (ds)

1962

このメンツ構成を見ると、派手さはないもののなかなか味のある人選で、聴く前から期待が膨らむ。その期待が大きすぎるのか、或いは期待の仕方が悪いのか、肩透かしを食ってしまう
タイトルにもなっている‘Invitation’を含め‘Ruby My Dear’、‘Stella By Starlight’など収録曲も魅力的だが、どこかすかした演奏だ。例えば本作の目玉とも言える‘Invitation’をとってみてもミルトはメロディを弾くだけでアドリブらしきソロはほとんどなく、バックの2管が煩く、しかもケイのdsがポッカポッカとまるでロバのパン屋さん(古いねー)では、バラードの名手、ミルトといえどもこの名曲を充分に弾き熟せていない。
聴き手の大きな期待の一つは、燻し銀揃いの名手達の中にあって、ミルトのソウルフルなバラードやグルヴィーなバイヴ・ソロのはず。他の曲でもメンバー同士の交流が希薄で、些かインパクトに欠ける演奏が続く。
そもそも本盤の制作コンセプトに問題が有ったのではないでしょうか。このあたりの事情は裏ジャケットの3カットの写真が物語っている。不機嫌そうなミルト、小難しそうに譜面に見入るフラナガン、ドーハム、ヒース、そして無力感?漂うカーター。
つまり、本盤はレコードにするまでもなかった作品と聴きました。
妙手より俗手を打って欲しかった。


(2003/12/13)

LAST DATE / ERIC DOLPHY

LIMELIGHT  LS 86013

ERIC DOLPHY (as bcl fl)  MISJA MENGELBERG (p)  
JACQUES SCHOLS (b)  HAN BENNINK (ds)

1964

死の直前にライブ・レコーディングされた正にラスト・デイト。勿論後から付けられたタイトルだが、このジャケットの水彩画のイラストはドルフィーの儚い人生を見事に描き出していて、オリジナルのフォンタナ盤より好きです。
ドルフィーはジャズ史における存在価値とは別に聴き手の好みがハッキリと分かれるタイプであろう。例の「馬のいななき」とでも揶揄されるasのトーンとダイナミックに上下して予測を超えるフレージングが生理的に受け容れられるか、否か。それを色彩感豊かと感ずればもう立派なドルフィー・フリーク、掴み損ねれば無用の長物と言えるでしょう。しかし、如何なる場面・状況に於いてもドルフィーの肉体から放出される真摯なインプロヴィぜーションに気が付けば、自ずと彼の偉大さが解ると言うもの。
彼の特異性は時として、アヴァンギャルド一派と勘違いされるケースがあるが、本盤はドルフィーが所謂「体制派・主流派」であることを立証している。そこを聴き取れば、恐れることなどない。
世界中で恐らく日本ほどドルフィー・ファンが多い国はないと思う。本盤の最後に収録されているドルフィーの名セリフに心酔する人も多いだろう。だが、それ以前に、異邦人・ドルフィーのインプロヴィぜーションに純粋に耳を傾けるべし。

(2003/12/30)


INDEX

THE SOLO SESSIONS VOL.1 / BILL EVANS

MILESTONE  M 9170

BILL EVANS (p)

1963

ヴァーブへの移籍契約後、リーバーサイドに契約消化のため、エバンスが1月10日にソロで吹き込んだもの。曲数にして17曲分。しかし、当時はすぐにリリースされず、後年‘Complete Riverside Recordings’としてBOX・セットの形で日の目を見た。そして、89年にこのソロ演奏だけの単独アルバムで初めてリリースされました。但しvol.2も同時にレコードでリリースされたのかは失念してしまい、vol2は92年にリリースされたCDで所有しています。

録音当時、発売されなかった理由は、プロデューサー、O ・キープニュースもエバンス自身も芳しい出来ではないと判断したそうですが、その後、キープニュースは「傑作だ」と回顧している。1日で17曲とは、少々多い感がしますが、さすがエバンス、ダレた箇所はまったくありません。それどころかピーンと張り詰めた緊張感と力強いタッチのピアノ・プレイから描かれた世界はバラード演奏でさえ研ぎ澄まされ、あのリリシズム、ロマンティシズムを期待する向きには、無縁の境地。ここが「お蔵」にされた主因と考えてほぼ間違いないでしょう。また、リバーサイドの経営状態が思わしくなく「売れるか?」の判断基準が最大のネックになったのではないでしょうか。それほどに俗臭のぞの字もない。
vol.1とvol.2の内容の差はほとんどありませんが、僕の好みでは、vol.1です。‘MEDLEY’の中で
‘My Favorite Things’から‘Easy To Love’へ繋がって行くあたりが特に好きです。

それとは別に
B・エバンスの本質が「ロマンティシズム」ではなく、実は「ハード・ボイルド」であることを本作は見事に立証している。

ps 本作のエバンスの「音」、いいです。録音自体良いと思いますが、マスタリング(George Horn)も良かったのではないでしょうか。アコースティック・サウンドが満喫できます。


(2004/2/3)

TENORMAN / LAWRENCE MARABLE

JAZZ WEST  JWLP 8

JAMES CLAY (ts)  SONNY CLARKE (p)  JIMMY BOND (b)
LAWRENCE MARABLE (ds)

1956

コレクター好みのレコードである。オリジナル盤の相場のランキングでは恐らく大関級は十分にあるのではないでしょうか。その理由は、「JAZZ WEST」というマイナー・レーベル、WARABLE(ds)の唯一のリーダー作、それなのにジャケット、タイトルでは恰もクレイのリーダー作に見えるそのギャップのおもしろさ等が挙げられるが、狙いはクラークである。ホント、日本のジャズ・ファンのクラーク好きの多いこと。
こんな作品にまでもご執心なのである。こんな、とは、その言葉どおり、
なんてことのないありふれたレベルの作品である。別にクラークのせいではない。‘featuring James Clay’とクレジットされたクレイのtsが本作の価値を貶めている。ロリンズまがいのコピー・テナーを吹かれては聴く気も、語る気にもならない。ミストーンもプロらしくなく、ソロの後半になるとアイデアが詰まってしまう。自分の語法を持たない者の結末である。

雑誌等で本作を褒める評、コメントを読むとこの人は本当に演奏を聴いているのだろうか、とさえ疑問を憶える。クラークの人気とレーベルの希少性を背景にした安っぽいスノッブ精紳の持主であろう。

さて、肝心のリーダー、マラブルのdsはどうかと言えば、存在感が薄いなぁ。クラークも西海岸時代のせいか何処と無く明るく、後年のようなブルーさがまだ、滲み出ていない。なお、メンバー序列でも、最後にクレジットされており、まだ、無名に近かったのだろう。その意味では貴重盤と言えるかもしれません。


また、僕はフレッシュ・サウンド盤で持っているが、「音」は充分以上に聴けます。BONDの弾力のあるbが冒頭から迫ってきます。ただ、dsはやや引っ込んでいる。
要らぬお節介かもしれないが、ずっと昔、適価で入手した方は別にして、自己満足と虚栄心を満たしたい人以外、オリジナル盤に大枚を叩くまでもない。


(2004/7/12)

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