(2003/4/14)
BORN TO BE BLUE / BOBBY TIMMONS
RIVERSIDE RS 9468
BOBBY TIMMONS (p) SAM JONES (b) *RON CARTER (b)
CONNIE KAY (ds)
1963
陰影のあるシビれるようなジャケット。ティモンズがリバーサイドへ吹き込んだ最後の六作目(レギュラー作)がこれ。ファンキーブームの立役者の一人でもあるティモンズが、「うたかたの夢」のように過ぎ去ったあの熱気を引きずりながら、ピアニストとして、新しい境地を開かんとチャレンジする姿は、まるで迷える羊のように、どこかしこ切なくも痛々しい。
わずか一年前に録音した「Sweet And Soulful Sounds」の自信と輝きはどこへ行ってしまったのか。まだ、27才のこの青年に何が、起こったのだろう? それだけ、当時のジャズ・シーンの変化が激しかったのだろう。
熱狂の渦の中、時折、見せる端正なピアノを愛する人は、少なくないはず。畑違いとも思えるC・ケイをdsに起用し、新しい門出を図った本作は、何とも中途半端で残酷な結果となってしまった。けれど、山が高ければ高いほど、斜面は急、谷は深い。されど、その急斜面を、谷を愛してこそ本当のジャズ・ファンと言えるのではないでしょうか。
視界を遮るように紫煙で自らの顔を隠すこのジャケットは、まるで、ティモンズの先を見出せない心境を物語っているかのようだ。あぁ、切ない。
(2003/5/16)
SAVOY MG 12127
WILBUR HARDEN (flh) JOHN COLTRANE (ts) TOMMY FLANAGAN (p)
DOUG WATKINS (b) LOUIS HAYES (ds)
カラフルでモダン?なこのジャケットは、ちょっとダサイ感じの多いサヴォイの中では、異色の存在。全曲、初リーダーのはずのハーデンのオリジナルで占められていながら、タイトルを始め、扱いは、気の毒にもメンバーの均等となっている。
マイルスのエピゴーネンと、あまり評判の宜しくないハーデンだが、本作のマイルドでリッチなフリューゲルホーンは、才気は感じられないものの、それなりに聴けます。注目は、勿論、コルトレーンだが、サイドに廻った事が幸い?して、気張ることなく、自由奔放(練習ぽい?)に吹いている。と言っても「SOULTRANE」と「SETTIN' THE PACE」(隠れ名盤)の間だけに、力感溢れるプレイが楽しめます。
とりわけ、‘West 42nd St.’における完成手前の、<シーツ オブ サウンド>演奏は、同じようなフレーズを繰り返しているにもかかわらずのびのびとドライブするコルトレーンのts、気分爽快です。リズムセクションでは、ワトキンスの強靭なベースワークも聴きものです。サブタイトル通り、当時のイーストコースト派の典型的で、良質の「ダンモ」が納められています。
ps ハーデンが全篇で吹くフリューゲルホーンがゲルダーの手によって、実にふくよかに録音されている。音色だけなら、本作のハーデン、ピカイチではないでしょうか。
1958
IMPULSE A 63
McCOY TYNER (p) JIMMY GARRISON (b) AL HEATH (ds)
1963
THAD JONES (tp) FRANK STROZIER (as) JOHN GILMORE (ts)
McCOY TYNER (p) BUTCH WARREN (b) ELVIN JONES (ds)
1964
コルトレーン・カルテット絶頂期中に録音された、二つのセッションから構成されるタイナーのインパルスでの4作目。目玉はピアノ・トリオ・ヴァージョンの中でも人気のある‘Autumn Leaves’。この頃のタイナーは、未だ、後年のようにバァーン、バァーンと鍵盤を叩きつけるスタイルではなく、むしろ、フラナガンにも通じる玉を転がすような美しいフレーズが持ち味の新鋭ピアニストで、本作の‘Autumn Leaves’もそのフレッシュな演奏が評判でした。
久しぶりに改めて聴いてみても、その余韻は悪くない。しかし、当時はあまり関心の無かったストロージャー、ギルモアといったマイナーなミュージジャンの演奏の方が気になるとは、なんと皮肉な事か。関心度の基軸が変わってしまったと言えば、それまでだが、タイナーの持つ音楽性それ自体の問題かもしれない。
(2003/6/9)
ARCHIE SHEEP (ts) GRACHAN MONCUR V (tb) JIMMY OWENS (tp)
WALTER DAVIS,JR (p) RON CARTER (b) ROY HAYNES (ds)
BEAVER HARRIS (ds)*
1968
(2003/7/8)
先日、仕事で京都に行ったついでに、河原町四条を高瀬川に沿って南にちょっと下がった所にある‘ろくでなし’に寄ったみた。あのころのジャズ喫茶の雰囲気にすっかり浸ったせいか、つい、ウトウトとしてしまい、目が覚めると、懐かしい「ドナウエッシンゲン」が鳴っていた。そこで今日のようなジメジメした日は、熱いシェップでもと思い、本作を選んでみた。
シェップは、フリー・ジャズの闘士という一般的なイメージ以上に、風貌からして‘大物’の風格さえ漂わせています。
さて、本作は、メンバーの中でアヴァンギャルド派は、曲によって入るB・ハリスだけとあって、当時のシェップにしては、意外に聴きやすく、チョット評判になった記憶があります。万華鏡をあしらったジャケットのようにバイブレーションを効かせた塩辛いシェツプのtsは他のメンバーと共に色彩感溢れるサウンドで聴き手に迫ってきます。
注目すべきは、師と仰ぐコルトレーンの死後、半年で吹き込まれたこの‘前進’は、早くもシェップの心境の変化を見逃してはいない点です。ソウル・ファンクさえ感じさせるトップの‘Damn If I Know’なんかがそうだ。また、本作でもお得意い?のエリントン・ナンバーも取り入れ、フリー・ジャズのチンピラ達とは、ものの違いを感じさせる強かさも持ち合わせている。
最近、すっかり角が取れ、円熟の境地を聴かせているが、一度、熱いシェップを、とお思いの方は、この作品から入ると火傷しないかもしれません。火傷しないシェップなんて・・・・・・・・・・、ウゥーン、それも事実。さぁ、困った。
VEE JAY SR 3013
LEE MORGAN (tp) WAYNE SHOTER (ts) FRANK STROZIER (as)
BOBBY TIMMONS (p) LOUIS HAYES or ALBERT HEATH (ds)
1960
当時の俊英達をライオンに見立てたこのジャケットは、一見、陳腐に思えるが、ローカル(シカゴ)の新興レーベルの思い入れのストレートな表現と考えれば、一笑するわけにはいかないのが人情というものですね。
特定のリーダーを置かない一種のブローイング・セッション形式であるが、モーガン、ショーター、ティモンズは泣く子も黙るジャズ・メッセンジャーズ、ストロージャー、クランショーはMJT+3のメンバーとあって、決めるところははビシッと決っている。ボスのいない分のびのびと時代を謳歌している姿は完成度うんぬんとは別次元にして気持ちが良いというワケだ。
ここで注目なのは、今ではマイナーな存在のasのストロージャーですが、このセッションでは、モーガン、ショーターにそれほどヒケを取っていなく、むしろ馴れ合い防止のスパイシーのような重要な役割を果たしています。聴き方によっては、ショーター独特のまだぎこちないtsよりスムーズに歌っている。
ショーターはここでも3曲のオリジナルを提供していて、モーガン、ティモンズと全く異なる作風が際立っていますが、モーガン作のその名もずばり‘Blues’では、ティモンズ、ストロージャー、モーガンの滑らかなブルース・フィーリングに比べ、それまで先頭に立ってガンガン吹いていたショーターが借りてきた猫のようにおとなしくなり、得手不得手が鮮明に出ているあたり可笑しくもあります。
なんの仕掛けも無い1960年の等身大のモダン・ジャズが聴こえてくる本作は角度を変えて聴くとなかなか興味深いものを含んでいます。
(2003. 8. 4)