JAZZLAND JPL 19
BLUE MITCHELL (tp) CHARLIE ROUSE (ts) WALTER BISHOP (p)
EARL MAY (b) ART TAYLOR (ds)
1960
ラウズの作品では、「幻の名盤」にもリスト・アップされたエピックの‘YEAH!’が有名ですが、内容は本作のほうが数段上です。メンバーを見ただけで何となく期待してしまう。
入手はちょっと難しいかもしれませんが、モンク・カルテットでの欲求不満?の鬱憤を吹き散らすかのようなラウズの骨太でドスの効いたtsが堪能できます。
曲ではR・ウエストンが提供している個性的な2曲が特に良い出来で、割りと有名な‘204’は、大排気量の車で海岸線をゆったりとクルージングするような図太いラウズのtsが心地よく、‘Pretty Strange’では、まるで夜のしじまに染み渡っていくボイスのようなテナー・サウンドが印象的です。コワモテの感じがするラウズがこんな瞑想的なプレイするなんて、驚きです。イヤー、聴いてみないと判らないものです。
tpのB・ミッチェルも上り坂の時期だけに端正ながら、溌剌としたプレイを聴かせてくれます。また、リズム・セクションも‘YEAH!’よりも遥か強力にドライブしています。
人気の‘YEAH!’、実力の‘TAKIN’ CARE OF BUSINESS’と言ったところでしょうか。
それにしても、アドリブの発展性にやや欠ける面がありますが、〇丸?まで響いてくるラウズのドスの効いたts、ハマリます。
B級テナーのA級ハード・バップ盤として、僕のイチオシです。
なお、本作はラウズの初リーダー作でもあります。
ps モノのオリジナル盤(オレンジ)を聴いていますが、少し細身ながらキレのあるサウンドの好録音(J・HIGGINS)です。少しボリュームを上げても崩れず甘さのない「音」ででビンビン迫ってきます。
「入手はちょっと難しいかもしれません」と書きましたが、都内でしたら、そうでもないと思いますし、あまり知られていないせいか、ステレオ盤は比較的値ごろです。但し、モノほどラウズのtsのドスが効いているかは、判りません。
イヤイヤ、ひょっとしたら、ステレオ盤の方が、何によく響くかもしれませんね。なにしろダブルですから。
(2003/7/27)
SAVOY MG 12021
NAT ADDERLEY (cor) JEROME RICHARDSON (ts fl) HANK JONES (p)
WENDELL MARSHALL (b) KENNY CLARKE (ds)
1955
いかにも「SAVOY」らしいサダさというか、センスが無いというか、あまりにもストレートすぎるジャケット。しかし、経験上、こういう作品は聴き手を裏切らないケースが意外に多い。ナットの初リーダーとなる本作は、兄、キャノンボールのこれも初リーダー作の‘PRESENTING’(12018)の10日ほど後に録音された。サボイの粋な計らいであろう。リズムセクションもP・チェンバースがW・マーシャルに替わっているだけ。
ナットと言えば、いつも兄、キャノンボールの半歩、否、数歩後の存在で、オーバー・ファンク?のイメージがつきまとうが、本作では初リーダー作とは思えぬ実に堂々としたコルネットを聴かせてくれます。フロントを務めるもう一人のJ・リチャードソンは、名は良く知られているわりには決定打のないマルチリード・プレイヤーであるが、ここでは、実力のほどを充分に披露しており、好ソロを展開しています。彼の代表作といわれる‘Roamin'’より本作の演奏の方が遥かに上です。このあたり、損をしている感があります。
誰も見向きしない一枚ですが、ステディなサポートをバックに、ナットとリチャードソンがじっくりと朗々と、緩やかな川の流れのような聴き心地のよい大人のハード・バップを演じてくれます。
これといって特出したナンバーこそないけれど、聴いた後、不思議に耳に残る「知られざる好演盤」。つい「初リーダー作に勝るものなし」という諺を思い出してしまう一枚です。それでは、チョットかわいそうかな?
「なめたら、あかんぜよ」とでも言いたげなNATです。
PS 僕の聴いている盤は、ジャケットが薄くコーティング加工された2ndプレス盤(あずき色)ですが、ゲルダー・サウンドが結構楽しめます。
シールが被っている状態で撮影したため、反射して少し見苦しくなってしまいました。悪しからず。
(2003/8/4)
PACIFIC JAZZ PJ 1
DONALD SLEET (tp) DANIEL L.. JACKSON (ta) TERRY TROTTER (p)
HERBIE LEWIS (b) LENNY McBROWNE (ds)
1960
このクラスのレコードを聴くようになるまでには、かなりの授業料を払っているケースが多いのではないでしょうか? つまり、当たるも八卦、あたらぬも八卦の覚悟でないとなかなか見つけられない。メンツを見てもB級か、無名に近い人ばかり。しかし、ちょっと聴きこんでいるファンならば、SLEET
、LEWIS、そしてMcBROWNEに目がいくというもの。
リーダーのMcBROWNEのdsはM・ローチの直系正統派だけにオーソドックスすぎて面白みに欠けると思いきや、これが大間違い。エルモ・ホープが全部ではないが編曲(Invitationn、Deary
Beloved)を担当しており、独創的な幾何学模様のアレンジは本作を「当たり作」にしている。他の曲も少しもアレンジ臭さを感じさせないところが大きな魅力です。
ソロイストでは、何といっても輝きに満ちたトーンで伸びやかに吹き上げるD・SLEETのtpが、出色の出来映えです。普通の音量なのに鼓膜に突き刺さってきます。「音」に芯(心)があるからなのでしょう。他のメンバーもMcBROWNEの味のあるドラミングをバックに持てる力を十二分に発揮している。
それに、もう一つ、本作を「当たり作」に押し上げている要因は「音」。Audio
Engineeringは‘ Dino b.Lappas’と記載されています。
所謂ウエスト・コースト・ジャズとは、異なるサウンドです。
なお、オリジナル盤は皆無に近いとの噂。ホントかな。
そうであれば、僕のはオリちゃんなのか、2nd盤〜なのか、チョット気になります。
ps DON SLEETは「JAZZLANND」レーベルに初リーダー作、‘ALL MEMERS’
を1961年に録音している。メンバーがチョット凄い。ケリー、カーター、コブのリズム・セクションをバックにJ・ヒース(ts)とフロントを務めています。最近、レア盤との評判です。
また、 この‘4 SOULS’はリヴァーサイドにも一枚録音しています。
(2003/9/18)
モノラル
* コレクターの方から、‘オリジナルにまず間違いなく、bery rare’とのメールを頂きました。
ありがとうございます。 大事にします。(9/24)
IMPERIAL LP 9247
CARMELL JONES (tp) HAROLD LAND (ts) JOHN HOUSTON (p)
JIM BOND (b) MEL LEE (ds)
1961 or 1962
時々、クズ盤と同じエサ箱で見かける本作は本当にクズ盤なのか? タイトルがマズイのだ。それにジャケット裏のメンバーを見ても、シンプル過ぎるライナーノーツの中にしか記載されていないので購買意欲が湧かないのかもしれない。
また、もしジャズ喫茶でかかったとしても(まず、ないなぁ)、一曲目の‘TOM
DOOLEY'の出だしで大半の人が「またぁ」と舌打ちするであろう。
しかし、ランドのソロが始まるやいなや、その人達は恐らく腕組みをして、そっとジャケットに目を遣るにちがいない。
さて、本作はタイトル通り、聞きなれたフォーク・ソングをハード・バップ演奏した作品。でも、tsの隠れ名手、ランド、なめてかかってはいけない。軟派ものではありません。ランドのtsがハスキーな音でグイグイと迫り(時々、ミス・トーンを発するほど)、相棒のC・ジョーンズ(tp)も美しいソロを聴かせます。例えば、‘ワインより甘いキス’での短いながらも伸びやかなソロなどC・ブラウンを彷彿させます。全8曲、予想を遥かに上回る好演で、ラストの‘HAVA NAGILA’はエスニック・モードで一層モダンさを演出しています。
あまり、知られていませんが、66年のSJ誌臨時増刊号「ジャズ・レコードのすべて」の巻末の‘傑作LP304選’にも選出されている位です。、67年にSJ誌で中村とうよう氏がレヴューを書かれており、「ランドのプレイには、四つ星半だが、ソロがイカしているからと言っても、この時代、何の主張もなければ、半星減点の四つ星」、としている。イヤー、当時はかなりシビアだったのですね。まぁ、今が甘い過ぎるのかもしれない。
因みに63年、米国でリリースされた時、DB誌では、四つ星半とかなりの高得点を得ています。
ps 本作は所謂「名盤」、「問題作」ではありませんが、決して‘クズ盤’ではない事は確かです。
それにC・ジョーンズ(僕のフェイバリット・トランペッター)の素晴らしいtpが聴けるのも価値があります。
(2003/9/25)
DRAGON DRLP 73
SONNY ROLLINS (ts) HENRY GRIMES (b) PETE LA ROCA (ds)
1959
1984年にリリースされた本作は、ジャズファンにとって衝撃の一枚であり、とりわけロリンズ・ファンは随喜の涙を流したものです。なにしろ、実際には本作(3月?)の後の秋からのようですが、58年の‘コンテンポラリー・リーダーズ’を最後に62年の‘ザ・ブリッジ’までジャズ・シーンの表舞台から消えたとされるロリンズのこんなに充実した演奏の音源が残されていたとは驚き以外何ものでもない。
トップの‘St Thomas’(NALENでの別ライヴ)を除き、Swedish Radioにおけるスタジオ・ライブ(6曲・放送用?)である。心配なのは、音質であるが、‘St Thomas’とサウンド・チェツク用に演奏された‘How High The Moon’でのロリンズのtsの他は、さすが、放送局のスタジオで収録されただけに、充分以上に聴けます。
さて、内容ですが、これが、素晴らしい。お馴染みのナンバーが続く中、ロリンズのアドリブの神髄が凝縮されている。この後の所謂「音楽的行詰り?」なんて微塵も感じさせない自信に溢れたプレイの連続です。
これは、僕の勝手な想像ですが、ロリンズがこれを最後に二度と‘あの頃のジャズを歌わない’と心に決めた演奏ではないでしょうか。ラストの自作の2曲、‘Oleo’、‘Paul's Pal’での熱いパフォーマンスの余韻を残しながら、ロリンズは50年代を去っていった。
(2003/11/6)