JAZZ・・・IT’S MAGIC!/ C・FULLER & T・FLANAGAN
REGENT MG 6055
CURTIS FULLER (tb) SONNY REDD (as) TOMMY FLANAGAN (p)
GEORGE TUCKER (b) LOUIS HAYES (ds)
1957
後年、SAVOYからの再発(12209)時には、さすがにピアノの鍵盤をモチーフにしたシャレたジャケットに変更されている。昔は、あちらのモデルさんも結構、太い?足をしているんですね。
さて、こんなジャケットだから、中身も・・・・・・・、と思いきや、これが、いいんだなぁ。掘出し物です。フラーとフラナガンの双頭セッションの形を採っているが、デビューしたばかりのフラーの中低域を駆使したスケールの大きいtbが際立っている。ジャズ・トロンボーンはこうでなくちゃ。彼のベスト・パフォーマンスの一つに違いない。勿論、フラナガンもいつもより重心の下がった音色で心地よいソロを繋いでいく。もう一つ驚きなのは、ジャズランド、ブルーノート盤では、チョット線の細い面を見せるレッドが、意外?にも図太いasを聴かせている点です。
とにかく、骨太のG・タッカーのベースに乗って、全員がキビキビとハード・バップというフォーマツトを謳歌している姿が清々しい。少なくともこの演奏からは、その後のハード・バップの行き詰まりを予測するのは、些か困難でしょう。自分達の演っているジャズに何ら疑問を持たず、ベクトルを一つにすれば、芯をある演奏になるのも必定かな。今、聴いても、少しも色褪せていない。タイトル通り、まさに「マジック」です。
ps タッカー(30才)を除き、全員がデトロイトの出身です。因みに、当時、フラナガン(27才)、レッド(25才)、フラー(23才)、ヘイズ(20才)でした。
(2003/6/1)
BLACK HAWK BKH 51101
STAN GETZ (ts) KENNY BARRON (p) GEORGE MRAZ (b)
VICTOR LEWIS (ds)
1986
恥ずかしながら、ゲッツの良さが本当に判ったのは、本作を聴いてから。勿論、ルースト・セッションやヴァーブでの活躍は聴いていましたが、やや古めかしさも感じており、本作のようにモダンなゲッツにより魅力を感じる。
少し前、コンコード・レーベルへ「PURE GETZ」、「THE DOLPHIN」等の傑作を録音しているだけに、好調さをキープしています。
本作では、pをバロン、bをムラーツに替え、新興レーベルの「BLACK HAWK」に吹き込んだもので、タイトルが意味するように何か新しく立向かおうとする強い意志みたいなものが充分に感じ取れます。バロンの2曲、ルイスの1曲と若手の作品を多く取り入れているのもそのあたりの心境を物語っています。全篇に渡ってメロディスト、ゲッツの本領が遺憾なく発揮されていますが、特にこの若手の3曲が素晴らしい。
前任のマクニーリー(P)も優秀ですが、ここでのバロン、水を得た魚のようにゲッツと渡り合いします。イキが合うとは、この事なのでしょう。死の3ヵ月前吹き込まれたゲッツとバロンの感動作‘PEOPLE TIME」の原点がここにある。
クール・ジャズとか、ボサノバのイメージで語られるケースが多いゲッツが、生粋のハードバッパーとしての真価を世に示した「知られざる名盤」と思います。
この頃のゲッツは以前のような俗臭も薄まり、演奏家としての極みに達しているのではないでしょうか。
LIVE AT THE HAIG / BUD SHANK
CHOICE CRS 6830
BUD SHANK (as fl) CLAUDE WILLIAMSON (b) DON PRELL (b)
CHUCK FLORES (ds)
なんともしょぼいジャケットであるが、これが、珍盤、しかも好盤なんです。まず、どこが「珍」と言うと、1956年1月でありながら、[STEREO]録音である点です。しかもライヴ・レコーディング(ロス・アンジェルス、クラブ・ヘイグ)です。プロデューサー<GERRY MACDONALD>のコメントでは、当時[STEREO]録音は、まだ商業的には、使われてはいなく、一部の映画?(動画)のサウンド・トラックで使われていたに過ぎないようです。
シャンク自身もジャケットで(1985年発売)、「1956年には、ステレオは存在していない」と、語っているぐらいです。といっても後年のような高音質には、程遠いのも、致し方ないですが。なお、全員だれひとり、この録音を憶えていなかったそうです。シャンクの奥さん、‘Lynn’だけが憶えていて、29年振りに発表されましたが、やはり「カミさん」はエライですね。
さて、中身と言えば、日本では過小評価されているシャンクですが、‘ライブ’ならではの思いの丈を自由奔放に吹くプレイはなかなかの聴きもので、本国では、人気、実力ともにペッパーと同等に認められている事実を、如実に証明している。シャンクの力量を等身大で納めている本作は、彼の魅力を再認識するにもってこい1枚でもあります。
1956
ps A・ペッパー偏重気味のこの国のジャズ業界、ファンにとって、B・シャンクの存在は、どうでもいいのかも知れないが、
時には、こんな一作を耳に通すのも如何でしょうか?
MODE FOR JOE / JOE HENDERSON
BLUE NOTE BST 84227
LEE MORGAN (tp) CURTIS FULLER (tb) JOE HENDERSON (ts)
BOBBY HUTCHERSON (vib) CEDER WALTON (p) RON CARTER (b)
JOE CHAMBERS (ds)
1966
ブルーノート最後となる本作は、他の4作と比べてどうも1,2ランク低い評価を受けているようだが、そのワケをチョット考えてみると、どうやらメンバーの多さとメンツが問題のようです。もし、フラー、ウォルトン(ゴメン!)の替わりにモンカー、ハンコックが入っていれば、と思う方がいるかもしれない。
しかし、ご心配は、無用。前4作までは、ドーハムやエルビンといった先輩達が脇を締めていたが、本作は同世代ばかりもあって、ヘンダーソンはセッションのリーダーとしてその才能を遠慮することなく披露しています。ジャケットの3カットが会心の出来映えを物語っています。
それにしても、ここでののジョー・ヘンのキビキビとしたプレイはどうだ。他のメンバーもつられて随所に好プレイを聴かせ、メンツの多さを全く感じさせない。
特にJ・チェンバースのドラミングの熱いこと!また、意外?な人選のフラーもさすが、いいソロを聴かせてくれます。また、選曲(ヘンダーソン・3、ウォルトン・2、モーガン・1)の妙もあり、全篇、ダレる事がない。この日のスタジオの中は、恐らく熱気でムンムンしていたことでしょう。
中でもジョー・ヘン作の‘A Shade Of Jade’、‘Granted’での分厚いサウンドで、しかもスピード感溢れるパフォーマンスは本作のハイライト。また、ウォルトン作のタイトル・ナンバーでは、tsの後、ハッチャーソンのvibが出てくる辺り、あの‘アイドル・モーメント’を思い出し、ニンマリしてしまう。
‘ブルー・ボッサ’、‘ナイト&デイ’といった目玉はないものの、批評家サイドはともかくジャズファン・サイドから聴いてみて、こんな美味しいレコード、そうザラには無い。
(2003/6/29)
BLUE NOTE BST 84206
FREDDIE HUBBARD (tp) SAM RIVERS (ts ss fl) HERBIE HANCOCK (p)
RON CARTER (b) JOE CHAMBERS (ds)
1965
‘アヴァンギャルドに最も近いハード・バップ’なんてワケの解らない表現がピッタリの怪作(4184)を半年前に吹き込んだリバースが、今度は、当時の精鋭達と一戦を交えた一作。マイルス・クインテットを短期間でクビ?になったという風評のせいかどうか、判らないが、わが国での一般的評価・人気もそれ以来あまり上がらないのは、不思議です。
演奏コンセプトは、ドルフィに通ずる点や、掴み所のないフレージングは、後任のショーターに似ている所など、力量的には、そんなにヒケを取らないだけに、気の毒である。
さて、本作では、tsのほか、ss、flも披露してリバースの音楽性の全貌を聴き取ることができます。しかし、ここでは、リーダーよりもハバードとハバードに触発されたハンコックのプレイがすばらしく、本作を快作の名に恥じないものにしています。
この日のハバードの素晴らしい事! 今までのトランペッターでは、誰も吹いた事のないフレージングで次々に鋭くスケールの大きなソロを繋いでいくハバード、お見事! 例えば、ラスト曲での、ハンコックの研ぎ澄まされたソロの後、b、dsだけを従えたトリオ演奏からハンコックも入ってくるあたり、まるで鬼神に化したようなフレディに思わず息を飲んでしまう。全篇にわたり、ハンコック、チェンバースもブールーノート仲間で、イキが合うというか、素早いレスポンスでテンションを高めています。
あの‘Maiden Voyage’の2ヶ月後の録音だけに容易に想像できると思います。四人の精鋭達に交じってリーダーのリバースもその怪人ぶりを遺憾なく発揮しています。
ブルーノートの隠れた名盤の一枚です。
(2003/7/12)
(2003/6/16)
(2003/7/26)