ちょっと一息         (14) 謎の怪人? SAHIB SHIHAB

レコード・コレクターの中でも、特にヨーロッパ・ジャズのマニアの間では、舌を噛みそうな名の「サヒブ・シハブ」の作品は垂涎の的として人気が高い。
その代表盤が下の2枚、“JAZZ PARTY”(Debut/Fontana原盤)と“and THE DANISH RADIO JAZZ GROUP”(OKTAV原盤)である。

先日、ふと、随分昔手に入れたSAVOY盤を思い出し、棚を探すと、有った。ジャケットを引っ張り出すと、ずっしりと重いではないか。中袋から出す際に円盤の縁に指を掛けると何となく分厚い。「ひょっとして」と淡い期待でレーベルを見ると、残念ながら、やはり「マルーン」(3rdプレス以降)であった。まぁ、ジャケットも巻きではなく、貼りなので当り前なんですが。

さて、メンバーがA、B面でpとbが異なっている。ウッズ(as)、ゴルソン(ts)の組合せも興味深いものがあるが、目を引くのは何といっても、B面に入っているまだ新人の域のpのエバンスである。

ユニークなカヴァー・デザインの割りに演奏自体は、至ってジェントルであり、インパクトのある内容ではない。ソロイストの中では、ウッズが群を抜いており、若々しくエモーショナルなasが聴きものである。また、Bー1の‘Blu-A-Round’でのエヴァンスのフレッシュで凛としたピアノ・ソロを聴くとこの人の本質めいたものが感じ取れる。

ところで、本作の録音はR・V・ゲルダーによると、クレジットされているが、本盤を聴くと、ゲルダー・サウンドと全く異なるので、レーベルと溝部分のと間の無録音部分を調べてみると、RVG の刻印が無い。つまり、ゲルダー自身の手によるカッティングがされていないのである。こうした点に拘る事を快く思わない方々が居られますが、音質面でこれだけ差が出ると、無視するわけにはいかない。
まぁ、ファクトリー・シールドされた状態では、確認できず、当るも八卦、当らぬも八卦、とでも言うのでしょうか。 

JAZZ SAHIB / SAHIB SHIHAB

SAVOY  MG 12124

* SAHIB SHIHAB(bs) PHIL WOODS(as) BENNIE GOLSON(ts)
  HANK JONES(p) PAUL CHAMBERS(b) ART TAYLOR(ds)

* SAHIB SHIHAB(bs) PHIL WOODS(as) BENNIE GOLSON(ts)
  BILL EVANS(p) OSCAR PETTIFORD(b) ART TAYLOR(ds)

1957

この“JAZZ PARTY”(Debut/Fontana原盤)と“and THE DANISH RADIO JAZZ GROUP”(OKTAV原盤)は勿論、国内盤である。オリジナル盤の入手難易度は極めて高く、その筋では、高値を呼んでいて、並みのアナログ・ファンでは、手も足も?出ないようだ。国内盤でも、新譜扱いが終ると、中古市場で、所によってはすぐ3〜4倍近い値段が付くと言う。こうしたレコードは発売されたら、後から泣きを見ないよう直ぐ購入するのが、この世界の掟と、知るべし。
“JAZZ PARTY”は当時17歳のペデルセンの躍動的なbが見事に捉えられた高録音盤として著名である。また、“and THE DANISH RADIO JAZZ GROUP”はヨーロッパ系ジャズらしく、緻密な計算が施され、実にスリリングでドラマティックな組曲風に仕立て上げられている。
それでいてアレンジ臭さが全く感じられない点が聴き所である。嵌りそうです。 

(4/6/’05)

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