ALISON’S UNCLE / CANNONBALL ADDERLEY
BLUE NOTE BNJ 27001
MILES DAVIS (tp) CANNONBALL ADDERLEY(as) HANK JONES (p)
SAM JONES (b) ART BLAKEY (ds)
1958
あの「サムシン・エルス」に未発表曲があった・・・・、というキャッチ・コピーで20年ほど前、リリースされたもの。その“ALISON’S
UNCLE”と“AUTUMN LEAVES”のモノラル・ミックス・ヴァージョンをカップリングした本作は、12inch、45r.p.m仕様で出された。45r.p.mならば、さぞ高音質か?というと、僕のオンボロ・装置では、「音」に厚み、特にbの張出しがやや増えた程度で、それほどの向上は感じられない。
さて、目玉の“ALISON’S UNCLE”について、世評では外されても仕方が無いと、あまり評判が芳しくないが、この演奏だけを捉えてみると、そんなことはない。アダレィ作なので、やや、ファンキー・タッチになったことが主因と思われるが、むしろ収録時間の問題や他の曲とのバランス上、そうした措置がなされたのだろう。“Dancing
In The Dark”との入替えはどうか、といえば、契約上の問題を抜きにしても本作をあくまでもアダレィのリーダー作にしたい、という強い制作上の意志が働いたのであろう。おそらく、マイルスの計らいと思って間違いない。
巷では、「サムシン・エルス」は、実質上、マイルスのリーダー作だ、とまるで鬼の首でも取ったかのように騒いでいるが、それがどうした、どうでもいいではないか。アダレィのリーダー作では不都合なことでもあるのだろうか? アダレィだって立派に演っているのに、全く、解せない。マイルスの思いやりがわかっていないなぁ。
VERY R.A.R.E. / ELVIN JONES
TRIO PAP 9173
ART PEPPER (as) ROLAND HANNA (p) RICHARD DAVIS (b)
ELVIN JONES (ds)
1979
タイトル通り、このレコードは、メンツの妙味の他に、もう一つ、注目点がある。それは、ヴァン・ゲルダーが録音からミキシング、カッティングまで全て一人で行っている。ペッパーのasがゲルダーの手になると、どういう「音」になるか、興味津々である。しかも、45r.p.m、そして当時、音響メーカーでもあった「トリオ」の制作となれば、期待のボルテージは自然と上がるというもの。不勉強で間違っているかもしれないが、ゲルダーがペッパーを録るのは、ひょっとして初めてではないでしょうか?
結論から言うと、内容は水準をクリアしているが、期待通りにはなっていない。45r.p.mもあって、1曲の演奏時間が少なく(3〜6分)、もともと、最初はエルビンとディヴィスとのデュオ企画であったが、トリオ側の意向により、ハナ、そしてペッパーが入ることになり、制作コンセプトの途中変更がマイナスに働いたようだ。録音に三日間も要しており、思い通りに進まなかったようです。
また、ペッパーは6曲中、4曲しか参加していない所が、ファンとしてはやや物足りない。
「音」については、ゲルダーの録り方は以前とがらっと変わって、左右の広がりよりも前後の奥行きを重視している。また、ペッパーの音色も、ハイ上がり気味でエネルギッシュだが、残響音が多く、しかも、紙ぽいサウンドで、いつも聞き慣れているペッパーの「音色」ではない。それと、曲によって(録音日の違い?),ペッパーのasの「音」が異なり、ちょっと違和感を感じてしまう。今回はペッパーとゲルダーの相性は良くなかったようだ。ただ、ディヴィスのbは良く録れているので、ディビィス、ベース・ファンには堪らないかもしれない。
ただし、ラスト曲“The Witching Hour”は聴きものである。ペッパーのasが描くこの世界は、正に「ニヒル(虚無)」だ。
絶望と断絶の淵から蘇った者しか、到底、表す事のできぬ世界。後期ペッパーが到達した全てを超越した次元である。
ps なお、タイトルの「R.A.R.E.」はメンバーの頭文字からとってあります。
(12/8)