ちょっと一息         (12) STEREO RECORDS


「STEREO RECORDS」とは、モノ、ステレオという録音方式ではなく、れっきとしたコンテンポラリー・レコードの一種のサブ・レーベルである。よく訪問しているサイトの掲示板にこの「STEREO RECORDS」がトピックスとして立った時、最初は意味が解らなかった。しかし、楕円の枠の中の「STEREO」の文字、というコメントに、ピンときた。前からこの‘PORTRAIT OF ART FARMER’のジャケットの「STEREO」マークが気になっていたのです。ずっと昔、ファクトリ−・シールドされた新品で購入した際、このマークはてっきりシールで、また、無粋なところに貼ってあるなぁ、と思っていたが、なんと刷り込みだった。

それに、頭からコンテンポラリー・レーベルと思い込んでいたので、裏ジャケットに録音エンジニアであるロイ・デュナンの名がクレジットされていないのは変だなぁと思いながら、録音がロサンゼルスのスタジオではなく、ニューヨークだからかな、なんて勝手に決め付けていたりしていた。兎に角、僕にとって長年の間、ミステリアスなLPだったのは間違いない。それが、掲示板のトピックスで氷解したのわけだ。なお、コンテンポラリーは初期のステレオ録音のS7001からS7030あたりまで、「STEREO RECORDS」というレーベル(黒地に金文字)を使用し、S7030以降「CONTEMPORARY」レーベルに戻しているそうです。

さて、今回、本盤のジャケットとレーベルを調べると、ジャケットの裏表共に、確かに「STEREO RECORDS S7027」と正規に表記されています。レーベルもそうなっていました。まったく気が付かず、観察力の無さが露呈されました。それにしても、思い込みとは恐ろしいものですね。思考回路がストップしてしまう。

ここで、不思議なのは、僕の持っているレーベルの色は
黒でなくグリーン(たしか2nd?)なんです。と言うことはこの「STEREO RECORDS」レーベルはかなり後年まで再発・継続されていたと、解釈できる。ただ、ジャケットは額縁仕様のニス仕上げになっている。まぁ、ジャケット、レーベル、レコード本体を同数作るワケではありませんので、特別不可解とは思いませんが・・・・・・・・・・・・。

さて、音質ですが、NY録音のせいか、「STEREO RECORDS」だからか、判りませんが、あの明るく、乾いたコンテンポラリー・サウンドと異なり、ややウエットながら芯が有り力強い音質なので、ファーマー、ジョーンズ達にはむしろこちらの方が合っていると思う。ヘインズのdsの出方もナチュラルである。但し、アジソン・ファーマーのbは引っ込んでいる。それと、コンテンポラリー初期のステレオ録音に有り勝ちな中抜けはあまり感じられない。ただし、SP間が180cm位と狭いので正確ではありません。

内容については、メンバーから察しが付く様、大人のジャズが演じられ、特にハンク・ジョーンズのpについて、彼のベスト・プレイと評する方が多いと聞きます。
あまり話題に登らないが、
隠れたtpのワン・ホーン・カルテット演奏です。それにしても、ヤケに自信たっぷりのファーマーの顔だなぁ。タバコの煙と全然合ってない。


本作も今回、改めて調べたところ、レーベルは「STEREO RECORDS」でしかも黒地であった。しかし、ここで奇妙な事に気が付いた。ジャケットは「CONTEMPORARY」のS7530に対し、レーベルでは「STEREO RECORDS」のS7017である。?????である。

昔、同じコンテンポラリーの‘THE CONTEMPORARY LEADERS’の英文ライナーノーツにこの‘WAY OUT WEST’がC3530、stereo S7017と記載されているのを見て、これはミス・プリントとずっと思っていたが、どうやらミス・プリントではなかったのです。が、不可解です。これもジャケット、レーベル、レコード本体を同数作るワケではありません、という事でしょうか。

そうすると、こうも推測できるワケだ。本作のステレオ盤には、4種類のレコードが存在するはずです。(1)ジャケット、レーベル共にS7017(STEREO RECORDS)、(2)今紹介しているケース、(3)、(2)と反対のケース、(4)共にS7530( CONTEMPORARY)となる。

こうなるとモノラルのC3530がオリジナルであることには別として、ステレオ盤のオリジナルは(1)となる。しかし、果たして実際に4種類存在しているのかは疑問だし、これをいざ購入する際、明確に判別することは並みのレコード・ファンではちょっと困難ではないでしょうか。だが、コレクターの方々はそれを知っているし、出来るんですなぁ。これが。恐ろしいほどの知識と気力、否、執念に近いであろう。「それがどうした」と言われる筋も有るかと思いますが、僕なんか素直に尊敬の念すら懐いちゃいます。
イヤー、「アナログ」は奥が深い。入口でオロオロしている自分の姿に・・・・・・(涙)。


(2004/7/2)

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WAY OUT WEST IN STEREO   (STEREO RECORDS S 7017)

先日、本レコードのオリジナル・STEREO RECORDS盤(スタンパーNo.D1)をお持ちのあるコレクターの方から、ジャケット画像(左)を送って頂きました。やはり、有るんですね。僕は初めて見るジャケットです。よく見るとコンポラ・ジャケット(上)と文字の配色が異なっています。WAY OUT WESTが白→黒、それから、A・ファーマー盤(上)のようなSTEREO・楕円マークではなく、白字でIN STEREOと印刷されています。

僕が所有している盤はカッティングレベルが低く、通常よりもややボリュームを上げて聴いているので、ちょっと気になってスタンパーNo.を見たら、D2となっている。つまり1stではなく、2nd?である。ひょっとしたら、このあたり、D1と違うのかもしれません。急に1stスタンパー・D1の「音」が聴きたくなりました。

また、このコレクターの方は、他にも、
ペッパーの‘ミーツ・ザ・リズム・セクション’のSTEREO RECORDS盤(S 7018)をお持ちとの事。
ある方がある本の中でこのSTEREO RECORDS盤(D1)の「音」を絶賛されていたことを思い出しました。だから、WAY OUT WESTもかなり違うのではないでしょうか。

‘ミーツ・ザ・リズム・セクション’ですが、僕のは一般的なコンポラ・S 7532でも、かなりいい「音」と思っていましたが、S 7018の「音」はやはり「抜群」とのコメントも添えられていました。
イヤー、羨ましい限りです。
C○A○○さん、いい情報、ありがとうございました。大変、参考になりました。
ホント、アナログの世界は広くて、深い。
あぁ、また、宿題が増えてしまいました(笑)。

(2004/11/11)

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