愛聴盤 3

THE KERRY DANCERS / JOHNNY GRIFFIN

RIVERSIDE  RLP 9420

JOHNNY GRIFFIN (ts)  BARRY HARRIS (p)  RON CARTER (b)
BEN RILEY (ds)

1961、1962

正直な所、僕はグリフィンが大の苦手なんです。あの、忙しく、猪突猛進していくプレイを聴くと3分と、もたない。例えば、「リトル・ジャイアンツ」のトップ曲の‘Olive Refractions’や、「ブローイング セッション」の‘The Way You Look Tonight’を聴くとチョット辛い。しかし、グリフィンは、結構、人気があるので、その理由を捜していていたところ本作に出会った。

ここでのグリフィンはまるで別人だ。その訳は、フォークソングとブルース、バラードにまとめ、各曲の演奏時間をほとんど5分以内にしている点、それにpにB・ハリスを配し、無駄なブローイングを避けたところでしよう。中でも‘Black Is The Color’、‘251/2 Daze’、‘Oh Now I See’での深みのあるソロは今までの僕のグリフィンのtsのイメージとまったく違います。お馴染みとなる‘Hush-A-Bye’のうす味のグリフィン節も心地よい。

B面のほうが聴き応えが上かな。相変わらず、R・カーターのブヨブヨ・ベースには、閉口するが、グリフィンの素晴らしいソロがカバーしている。グリフィンが大の苦手の僕が愛聴するだけに、本作の良さ、保証付?です。   

ps グリフィンの出色のソロ以上に驚くのが、録音の良さ。特にグリフィンのtsの「音」のリアリティ、ゾクとします。バラード曲‘Oh Now I See’では、最低音まで、締まった「音」で生々しい。エンジニア、RAY FOWLERの手腕、恐るべし。


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(2003/6/1)

TAKIN' OFF / HERBIE HANCOCK

BLUE NOTE  BST 84109

FREDDIE HUBBARD (tp flh)  DEXTER GORDON (ts)  
HERBIE HANCOCK (p)  BUTCH WARREN (b)  BILLY HIGGINS (ds)

1962

ハンコックの初リーダー作とか、ヒット曲‘Watermelon Man’だけで語られるケースが多い本作は、聴けば聴くほど、その魅力が増す数少ない傑作である。全篇に渡って流れるハンコックのゴスペル・フィーリングを湛えたピアノが素晴らしい。また、作曲と編曲にも非凡な才能を持ち合わせている。
例えば、‘driftin'’では、コーナリング?のイメージをストップ効果によりユーモラスに描き、そのスムーズさをハバードにtpではなくflhを吹かせ、その後、ゴスペル・タッチでノリのいいピアノ・ソロでドライヴする、という高度なテクニックをさりげなく演っている。他の曲でも注意深く聴くと、この男の並外れた才能に舌を巻く。
僕の一番好きな‘
The Maze’では、シンプルなテーマの後、ハバード、ゴードンのソロの入る前に、短いピアノとヒギンスのシンバルの掛け合いを入れるという発想なんか、カッコ良すぎます。それにしても、ここでの、ゴードンのts、凄いです、圧巻です。この一曲、イチオシの名演です
また、ハバードの好演も見逃せません。特に‘Watermelon Man’でのソウルぽい音の溜め方なんぞ、ゾクッとします。とにかく、こんなに中身の濃い作品、「BLUE NOTE」のなかでもピカイチの存在です。単なる初リーダー作とか‘Watermelon Man’作品と思ったら大間違いです。

ps WARRENのb、HIGGINSのdsも素晴らしい。このリズム・セクションの出来の良さ(ゴスペル・フィーリング)に気を良くしたライオンは半年後、このメンバーにパーカッションを加え、G・グリーンの「FEELIN’ THE SPIRITS」を録音する。


INSIDE HI-FI / LEE KONITZ

ATLANTIC 1258

side1 LEE KONITZ (as ts)  BILLY BAUER (g)  ARNOLD FISHKIND (b)
     DICK SCOTT (ds)
side2 LEE KONITZ (ts)  SAL MOSCA (p)  PETER IND (b)
     DICK SCOTT (ds)

1956

数あるコニッツの作品の中で、ベスト作は、「サブコンシャスリー」と思いますが、一番好きなレコードと言えば、この「インサイド・ハイファイ」を挙げたい。本作は、コニッツのベスト作としても専門雑誌等で、時々紹介されていますが、思いのほか、聴かれていないのではないでしょうか。むしろ「MOTION」の方が、良く知られているのかもしれない。E・ジョーンズの参加がもの書き屋達には、紹介し易いのでは?

本作ではコニッツがtsも吹いており、これが、逆に本作のイメージをやや損なっているやもしれません。しかし、ご心配無用、asであろうとtsであろうとコニッツのインプロヴィゼーションは、冴え渡っている。更に、タイトルが示すように録音をあの、R・V・ゲルダーが担当、売りの「音」も彼のプレイの神髄を漏らす事なく録っており、ドキッとするほど芯のある好録音です。
本作のもう一つの目玉は、トップ曲‘ケリーズ・トランス’のイマジネイション溢れるソロです。コニッツの‘クレオパトラの夢’とでもいえる快演。まぁ、スノビーな人達には無縁のものでしょうが。
トリスターノ一派とか、クール派とか、いろいろな注釈が付くコニッツがスタンダードを中心にジャズ・ミュージシャンとして裸の自分を曝け出した名演として日頃、愛聴している。


(2003/6/17)

(2003/6/14)

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