幻の名盤 Vol.9







REACHING OUT / DAVE BAILEY





JAZZTIME JT 003


FRANK HAYNES (ts) GRANT GREEN (g) BILLY GARDNER (p) BEN TUCKER (b) DAVE BAILEY (ds)


1961. 3. 15



B級名盤にして、A級コレクターズ・アイテムの一枚。ブレイキー、エルビン、ローチと言った強い個性を発揮するタイプに対し、没個性とも言えるベイリーのドラミングは、我が国では「通好み」として支持され、本作はJAZZLINEの‘BASH!’やエピックの3枚と共に人気が高い。
そして、「幻の名盤読本」にリスト・アップされた‘REACHING OUT’と‘BASH!’の2枚は一流コレクター達のマスト・アイテムと囁かれている。


「幻の名盤読本」のコメントでは、内容は‘BASH’と比べ、やや劣り、理由として、メンバーのネーム・バリューとヘインズのやや単調なテナーが挙げられている。
確かに、‘BASH’のドーハム、フラー、トミフラに比べ、本作は数段、格下のメンバー構成、また、ヘインズ、グリーンにしてもデビューしてまもなく、知名度の差は歴然としている。そうした点から、一般的な人気も、オリジナル盤(NM盤)の入手難易度も‘BASH’の方が高いようです。



で、この手のアルバムを聴き比べるなんてナンセンスですが、個人的な好みでは本作に軍配が上がる。

理由は、ザックリ言って‘BASH’は本作の数ヶ月後の録音にも拘らず、ややコンサバ色が濃く、想定内の演奏に終始している。その点、本作は61年という時代性をきちんとプレゼンしている。
 
具体的に言うと、TOPのタイトル曲‘REACHING OUT’で決まる。50年代のハード・バップとは全く異なるモーダルな演奏がかっこ良い!
先陣を切るヘインズのスムーズなtsに驚かされるし、続くグリーンの新人らしく溌剌としたシングル・トーンも聴きもの。そして、高音を多用し、ガーランド風にブロック・コードを織り交ぜ、嫌味になる寸前で止まるガードナーのチョイ派手なpも妙に嵌っている。

また、B-1、ガードナーのオリジナル‘ONE FOR ELENA’も‘REACHING OUT’と同様、スピード感が心地よい。

その他では、B-2、作曲したタッカーのしなりを利かせたbが活躍する‘BABY YOU SHOULD KNOW IT’のアーシーさが、これまたご機嫌です。

そして、ラストが、スタンダードの‘FALLING IN LOVE WITH YOU’。テーマからソロまで続けてグリーンに弾かせ、その後、ヘインズにtsを飄々と吹かせるアイデアはなかなかのもの。この曲を取り上げたのは、グリーンの提案によるもので、それなりに自信があったのではないでしょうか。



いすれにしても、スター・プレイヤーが居ない分、リーダー、ベイリーの信念が隅々まで行き渡った好作品です。


なお、所有する盤は残念ながら、否、当然ながら国内盤で、普通に聴く限り特に不満はありません(但し、ガードナーのpはややキラ付く)。恐らく、オリジナルの録音(T・NOLA)がよほど優れているのでしょう。



(2013. 8.18)


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