気ままに一枚 Vol.8








THE GIGOLO / LEE MORGAN





BLUE NOTE BST 84212


LEE MORGAN (tp) WAYNE SHORTER (ts) HAROLD MABERN (p) BOB CRANSHAW (b) BILLY HAGGINS (ds)


1965. 6.25,7.1



髪を油でなで付けたモーガンらしくない?、否、BNらしくもない平凡なカヴァ。リアをみるとデザインはお決まりのREID MILESではなく、某デザイン会社?の名がクレジットされている。なぜ、わざわざ、そうなったのか知る由もありませんが、ディープなモーガン・ファンから見ると「何じゃ、これは!」となりかねない。

手持ちのリバティ盤は奇妙な事に、リア・カヴァに‘LAST RELEASE’として‘DELIGHTFULEE(4243)’(1966年録音)のアルバム・カヴァが掲載されている。と言う事は、‘THE RUMPROLLER(4199)の後、、本作の三ヶ月後に録音された‘CORNBREAD(4222)〜‘DELIGHTFULEE(4243)’〜本作の順でリリースされていることになる。この時期、録音時期、aAリリース時期がバラバラなので要注意と言えども不可解ですね。

そこで、ちょっと調べてみると、GOLDMINE誌では、やはり、66年にNY盤がリリースされ、68年7月に直ぐリバティ盤で再発された事が判明した。多分、再発時にリア・カヴァの‘THE RUMPROLLER’が‘DELIGHTFULEE’に差し替えられたのでしょう。但し、GOLDMINE誌の記載が正しい、とすればですが。

それに、このリバティ盤、あのゲルダー・サウンドとは程遠い「音」ですね。
 
でも、本作のNY盤って、ホント、見たことがないなぁ、まぁ、自分だけなのだろうけど。


話を本線に戻すと、フィラデルフィアからニューヨークに戻ったモーガンは再び、ブルーノート、ライオンの前に姿を現した。そして、モブレーの‘NO ROOM FOR SQUARES’、モンカーの‘EVOLUTION’でサイドとして参加、助走期間を経て本格的な再起を図る。なお、この2作でのモーガンは「さすが」と言わしめるに充分なプレイを聴かせてくれる。

だが、ものの本によると、ライオンの前に現れた時、再起に当り、まったくノー・アイディアだった、という。モーガンらしいと言えば、それまでですが、たまたま耳にしたハンコックの‘TAKIN' OFF’をヒントに、あのヒット作‘SIDEWINDER’が生まれるワケだ。そして、再び、ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズにハバードと入れ替わる。


そうした、一見、順調な復帰を果たしたように見えるが、ジャズの環境変化は、それを許してはくれなかった。ジャズ・メッセンジャーズはかっての光を失い、モーガン自身、リーダー作で時代の変化に追いつけず、マンネリ作品を乱発、お蔵入りする作品も多くなる。そして、かっての天才少年が「むかしの名前で出ています」レベルにまで成り下がってしまったのだ。
‘SIDEWINDER’をヒットさせた才覚が逆に徒になってしまった。

で、所謂、後期モーガンの作品群の中で、一番、モーガンらしいtpを全編に亘り聴かせてくれる一枚と言えば、本作ではないでしょうか。
好きなアルバムです。

勿論、トップの‘Yes I Can,No You Can't’はロック・ビートのキャッチャーな演奏だが、決して悪くなく、他の4曲も、しっかりジャズの土台に足を降ろした好演奏が続きます。
中でも、2曲目の‘Trapped’では獰猛なショーターを相手にtpを吹き切り、自信と輝きに満ちたプレイは圧巻! ベストの出来。‘Speed Ball’も好演です。B面のタイトル曲、シルバーの作風に似た‘The Gigolo’でも、モーガンはなかなかのソロ・ワークを聴かせてくれます。

メーバーンのチャラチャラ・ピアノとヒギンスのバカ叩きがチョット気にはなるものの、ま、大らかに聴き逃しましょう(笑)。

ただ、惜しむらくは、ラスト・ナンバー、スタンダードの‘You Go To My Head’、出来自体は悪くないのですが、このルーズなテイストでアルバムを締めくくるのは勿体ないと思います。
それまでの好演が、なんとなく緩んでしまいます。ここは、キリッと仕上げて欲しかった。



でも、ここがモーガンの「限界」だったのでは・・・・・・・・・・・  




(2012.12.15)






SWEET HONEY BEE / DUKE PEARSON

 
 


 
 BLUE NOTE BLP 4252

 
FREDDIE HUBBARD (tp) JAMES SPAULDING (as,fl) JOE HENDERSON (ts) DUKE PEARSON (p) RON CARTER (b) MICKEY ROKER (ds)


1966.12.7



とにかく録音がイイ!たまたまリバティのモノ盤(VG入り)と、音がいいと評判だったキングのステレオ盤、2枚を所有していて、画像(モノ盤)では右上の「BLP 4252」の文字が丁度、カバァの背まで廻り込んで、隠れている。


今となっては、中年男のストーカー紛いのカバァは些かサエない(ボケ気味で助かっている)が、中身はなかなか良いんだなぁ、コレが。

1曲目のタイトル曲に、針を落とすと、素晴らしい音色のflに「ハッ」とする。スポールディングのflってこんなに良かったっけ、と誰しも自分の耳を疑うでしょう。
この時代の「お約束事」とばかり、ジャズ・ロック曲のスタートで、硬派の方にとっては、「またか!」と針を上げてしまうかもしれません。でも、tp、tsはバックに徹し、ソロを取らない構成が、ニクイ!
 
 
で、ここを少しばかり我慢して、2曲目、‘Sudel’に入ると、がらっと変わる。3管アンサンブルと心地よいスピード感が、「音」の良さと相俟って、聴き手を演奏にググッと引き込む。
また、ピアソンは頭の部分で味のあるアレンジも施している。そして、後半、自分のソロ・パートで3管のアンサンブルをバックにする手法は、どことなくH・ハンコックの‘SPEAK A CHILD’(1968年3月録音、ピアソンのプロデュース)の雰囲気を連想させます。
カーターとローカーも同じで、ひょっとして、本作でアイディアが芽生えたのかもしれません。


全7曲、アレンジも含め全てピアソンのペンによるもので、彼の小粋な音楽センスが横溢している。ただ、気になるのは、彼の基本的スタンスは、言葉は悪いが「甘め」、だから、甘めの曲になると、かなり「しんどい」のも事実です。
例えば、バラード曲、‘After The Rain’ではスポーディングの出色のflで随分、助けられている。

個人的には、B−1の‘Big Bertha’が一番です。


で、もう一枚の、キング・ステレオ盤ですが、こちらも「音」がいいです。要するに「録音」自体がいいワケです。


ところで、本作がリリースされたのは1967年、BNがリバティの買収された時期と微妙に重なり、ひょっとしてリバティ盤がオリジナルでは?と淡い期待をしていましたが、ちゃんとNY盤がありますね。

巷では、本アルバムは結構、人気があり、当てにならないけれどキング盤のタスキ帯に、コレクターズ価格:¥5,000と記載されている。

その要因は、キャッチ・コピーに書かれている「愛らしいメロディ・センス」ですが、やはり、ハバードの存在だろう。彼にしてはオーセンテックなプレイで、全曲ではソロは取らないものの、その存在感は群を抜いている。まさに「王者」のtpですね。甘さに流れ勝ちになる所を、一本、ビシっと筋を通している。

因みに、N・ヘントフのライナー・ノーツの中で、ピアソンがこう語っている。
「ハバードは驚くべきテクニックとトーンはもとより、この若さでこんなにブリリアントなサウンドを持つなんて、信じられない。多くのトランペッター達はこのレベルに達するに、何年もかかるだろう」と。

出る所、押さえる所を弁えたハバードがいなかったならば、本作の魅力は半減しただろう。

とはいうものの、リーダー、ピアソンのpは絶好調です。



(2014.3.11)




 

IMAGES / CURTIS FULLER




SAVOY MG 12164


LEE MORGAN (tp)  YUSEF LATEEF (ts、fl) CURTIS FULLER (tb) McCOY TYNER (p) MILT HINTON (b) ROY HAYNES (ds) 

1960. 6. 7

 

ちょっと胡散臭いアルバム。演奏は真っ当ですが、リリース時期とパーソネル等にはっきりしない所があります。

まず、リリース時期、Goldmine誌では1960年にリリースとなっており、ライナー・ノーツの文面からしても、そうかもしれませんが、70年代半ばリアルタイムで入手した本盤(カヴァとレコード本体に1975年と記載されている)は、確証はありませんが、再発盤ではなくこれが初出ものではないか、と疑問が残ります。
 

それから、ライナー・ノーツの中でパーソネル(上記)が紹介されていますが、bとdsはともかく、ラスト曲、‘New Date’のtpは限りなくモーガンではありません。
  
そこで、SAVOYのディスコグラフィを調べると、同曲ではtpが
Wilbur Harden、bがJimmy Garrison 、dsClifford Jarvis 、録音日は前日の6日になっている。しかも、他の曲でもdsはROY HAYNESではなくBobby Donaldson となっている。でも、自信はありませんが、全曲Clifford Jarvisが叩いているように聴こえますが ・・・・・・・・・・・・・・・・


それはともかく、聴いてみましょう。

本作は、フラー、SAVOY4部作(Blues-ette、Jazztette、Imagination、本盤)のラスト作で、全5曲をフラーのオリジナルで固めていて、さすがテンション漲る充実したtbが聴かれる。
 
モーガンもこの年、VEE-JAYに2枚、BNに1枚、リーダー作を吹き込み、好調さを維持しており、1、2曲目など鮮やかなプレイは全盛時に勝るとも劣らない。ただ、3曲目、B面1曲目になるとクスリが切れかかったのか、調子がダウン気味になっていく。但し、B-1の‘Juoyful’もモーガンではなくハーデンのような気がしますが。
 
タイナーに関しては、フラナガンに通ずる玉を転がすようなウブなピアノで、まだこれといった個性が発揮されていないものの、新しい感性は垣間見えます。


で、問題なのはラティーフの存在。その強烈な個性に、モーガンはもとより、リーダーのフラーの好演までも霞んでしまっている。もう少し、立場を弁えたプレイをしていたならば、アルバム全体の質的バランスは向上していたのではないでしょうか。


いすれにしても、データの曖昧さを除けば、カヴァのイージーさで損していますが、意外に好内容の一枚に違いありません。



(2014.5.16)





MAGGIE'S BACK IN TOWN !!/ HOWARD McGHEE




CONTEMPORARY  S 7596


HOWARD McGHEE (tp) PHINEAS NEWBORN JR. (p) LEROY VINNEGAR (b) SHELLY MANNE (ds)

1961. 6. 26

 

 

TPワンホーン・カルテットと言えば、例の「四天王」、つまりリトル、モーガン、ドーハム、ミッチェルを挙げるのが習慣になっている。いちゃもんをつけるつもりはないけれど、リトルを除くとそれほどの作品ではないと思う。また、人によってはファーマーと入れ替わるかもしれない。

本作はその数少ないTPワンホーンもの。


マギーはビ・バップ時代、ガレスピーに次ぐ大物トランペッターとして名を馳せていましたが、モダン期に入りヤクという悪習を断ち切れず第一線での活動が断続し、散発的にリーダー作を録音するも忘れられた存在に近い。しかし、マニアックなファン、またコレクターの方たちには意外に人気があります。



そのマギーがCONTEMPORARYに吹き込んだ一枚。カヴァからは田舎から麦わら帽子に大根を肩に掛け都会に出てきた人の良いおっさんのイメージが浮かぶ。

タイトルも愛称の‘Maggie’になっていて肩の凝らないセッションが行われたようです。また‘TOWN’とは「娑婆」の意味かも?


スタンダードが3曲、残りはマギーのオリジナル1曲、T・エドワーズのオリジナルが2曲とバランスを取った構成です。エドワーズとは少し前に、旧友セッションを同じCONTEMPORARYに録音している。スタンダード・3曲はミュートとそれなりに趣向を凝らし、サイド・メンも申し分ない。


マギーのtpはW・コーストの明るい日差しの中、NYとは違う安らぎを感じたのだろうか、快調に吹きまくっている。ところが、不思議な事にレアなTPワンホーン・カルテットにしては本作が話題に俎上したためしは未だかってない。マギーのようなマイナーな存在を差し引いても。


理由は多分、マギーに燦々と降り注ぐ太陽と笑顔は似合わないのだろう。やはり、彼の魅力は「裏人生」から滲み出る「翳り」。

そして、もう一つはP・ニューボーン JR.のPではないでしょうか。バッキングは兎も角、ソロになると脇役をすっかり忘れ、得意のオクターブ・プレイで幾何学的フレーズを盛り込み、自分のトリオ演奏になってしまう。この辺り、TPワンホーンでのpの役割は難しく、フラナガン、ケリー、クラークのようにリーダーを上手くアシストする能力が求められる。

W・コーストの気風と風土が合わなかった、かどうか定かではありませんが、NYに舞い戻りこの年の12月8日、‘THE SHARP EDGE’ (BKACK LION)を吹き込み、G・コールマン、J・マンス、J・タッカー、J・コブといったE・コースト派を従え切れ味の中に「陰影」を湛えた好プレイを残している。



‘MAGGIE'S BACK IN TOWN’の出来自体は合格点以上ですが、やはり、マギーにはDUSTYなNYのほうが合っている。伊達男ぶりを見せる一方、時にコートの襟を立て肩を窄めながらNYの裏道を歩む「うらぶれ感」、これがマニアの心を離さないのだろう。


なお、本作の‘Summertime’、3.11と短いアップ・テンポの演奏ですが、マギーのミュートが冴え、名演の一つと思います。



(2015.12.12)


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