独 り 言
LAST RECORDING / ALBERT AYLER
SHANDAR SR 10000・10004
1970年11月25日、アイラーは、ニューヨークのイースト・リヴァーで死体となって発見された。享年34才。自殺か他殺さえ明らかにされなかったいう。
アイラー個人というよりジャズ史上、最高のパフォーマンスを記録したこの‘ラスト・レコーディング’は、今もずっと「暗流」の中を漂っているのではないでしようか。
‘Kind of Blue’、‘Ballads’、‘Waltz for Dabby’といった「名盤」達が何度も再発され、何時でも?入手、聴く事ができるというのに、それらに勝るとも劣らない本作の存在が、ジャズ・ファンの記憶から、だんだん遠ざかっていくような気がしてなりません。
というのも、最近、発行された‘天才たちのジャズ’を本屋で見つけ、パラパラと目を通したところ、なぜか、アイラーの項が無いのである。‘ジャイアンツ・オブ・ジャズ’の改訂版なのでやむええないのかもしれないが、追加して欲しかった。
同氏の別刊‘ジャズ・オブ・パラダイス’の中で平易な文章で、核心をずばり突いた評は数あるアイラーに関する文のなかで最高のものだっただけに、残念です。
ただ、それが、現状のジャズ・シーンの様相から、生じたものならば、嘆かわしい限りであります。一体、誰が、こうした名作を後世に伝えていくのだろう。
ジャズ業界も売れるからと言って同じようなBEST作?ばかりに力を入れず、こうした作品にもっと目を向けて欲しいものです。
VOL 1
(ビクター国内盤)
VOL 2
(SHANDAR盤)
VOL 2
アイラーは、自分の「即興演奏」の定義として、
‘無意識の内に自己の中に注入された苦痛感を通じて、自己の感情を表出する事、つまり、気づかぬうちに内面に生じた苦痛によって、感情が突然ホーンのバブルを押し開げて、音として飛び出してくるといった衝動です。’と語っている
1970年7月27日、南フランス、ニースの近郊サン・ポールのマグー近代美術館が主催した前衛音楽祭でライブ・レコーディングされた本作は、一般的な前衛ジャズの既成概念を根底から覆すような、ナチュラルで、心の奥深くまで染み込んでくるような感動の一作である。ジャズが到達した一つの極みと言ってもいいだろう。
もう一つの代表作「スピリチュアル・ユニティ」を初めて聴いた時、正直なところ、全く受け入れられなく、理解できる人達が羨まく思えました。でも、「BELLS」なんかは、結構、好きでよく聴いていた記憶があります。だから、このレコードは、ストレートに僕の胸を打ったのでは。
先入観なしに、まずは、本作に耳を傾けてみては、いかがでしょうか。とりわけ‘スピリッツ・リジョイス’のヒューマンな演奏,は、おおげさではなく、魂まで揺さぶられる。
誰かが、‘すべては、アイラーから始めねばならない’と言っていたが、けだし、名言。あたかもこの‘ラスト・レコーディングを聴かずしてジャズを語ることなかれ’、と言っているように聞こえるのですが。
(25/03/’03)