愛聴盤

FULL VIEW / WYNTON KELLY 
Milestone  MPS 9004
WYNTON KELLY (P) RON McCLURE (b) JIMMY COBB (ds)

1967

60年代後半、ジャズ界が大きな転換期を迎えた頃、ケリーは、トリオで久々に、さりげなく、新作を発表した。
リバーサイド、ヴィー・ジェイ時代のあの飛び跳ねるようなケリー節は、さすがに影を潜めているものの、まるで、光り輝いていたころを思い出しながら、一音一音、綴るように歌い上げるケリーのプレイに、ふと、もう二度と帰ることのない‘あのころのjazz’への惜別の歌を感ずるのは、僕だけだろうか?
ジャケットに見せる物寂しげに、遠くを見るケリーの眼差しのむこうにあるものは一体何だったのだろう。
1971年、39歳の若さで急ぐようにして、静かにこの世を去ってしまう
ケリーが最後に残した宝物がこれだ。
「What A Diff’rence A Day Made」を聴くたびに僕はいつも思う。
‘ケリーって本当にいいピアノを弾くなぁ’と。
「枯葉」も最高!

ps 最近、B面もよく聴くようになり、ラストのバカラック作、D・ワーウィックのヒット・チューンでもある‘WALK ON BY’の洒落たケリーのプレイが好きです。ケリーみたいなピアニストはもう二度と出てこないだろう。

LEE WAY / LEE MORGAN

BLUE NOTE  BST 84034

LEE MORGAN (tp)  JACKIE McLEAN (as)  BOBBY TIMMONS (p)
PAUL  CHAMBERS (b)  ART BLAKEY (ds)             

ここで聴かれるモーガンは、それまでの天腑の才まかせとは一味も二味も違うプレイを見せている。
ただ単に60年という節目がそうさせたのではなく、ハードバップとは違う流れを敏感に感じとったのだろう。
アルバムの作りも2管編成の定番スタイルとは異なり、ソロの構成を一ひねりしている。
肝心のモーガンの鳴り具合はどうか、と言えば、絶頂期と比べ、調子は下降気味だが、
特にA面2曲の良さ、共演者の好演が、このレコードを魅力あるものにしている。
同年10月「エクスブービデント」の後、63年、「サイドワインダー」で復活するまで、Jazzlandの一枚(62年)を除きリーダー作はなくなるが、ラスト曲で、マックリーンのソロを遮るように、一気にロング・ソロを吹き切るモーガンのプレイは、まるで、この後の2年ちかい充電期間を暗示するかのように、凛として、真っ赤なジャケットのように燃えている。

余談ながら、オリジナル盤は、マニアの間では「CANDY」より、人気があるという。
僕もオリジナルが欲しい。
でも、おそらく?00ドルは下らないだろう。嗚呼、遠ざかる‘リー・ウェイ’かな。

LEAPIN’ AND LOPIN’ / SONNY CLARK

BLUE NOTE  4091

(BNJ 71010)

TOMMY TURRENTINE (tp)  CHARLIE ROUSE (ts)  SONNY CLARK (p)
BUTCH WARREN (b)  BILLY HIGGINS  (ds)   IKE QUEBEC * (ts)
     

いつの間にか‘一家に一枚’と言われるまで超有名盤に登りつめてしまった感のある「クール・ストラッティン」の影で、ブルー・ノート最後のリーダー作(本人としても)となった本作は、どこかしこ苦悩を漂わせるジャケットのように泣いています。
メンツは確かにひとまわりもふたまわりも小粒。
だが、
30pの黒い円盤に秘められた、ジャズ・スピリッツは、一歩も引いてはいない。
ドスの効いたラウズのts、線は細いが、芯のあるトミーのtp、まるで絶好調かの如き名フレーズを弾き出すクラークの指さばき、そして、曲の良さが聞き手を離しません。
アイク・ケベックの入った1曲を殊更、褒める評を見かけるが、もの書屋の宿命と流せばいい。有ると無かろうと、クラークの肝は据わっています。
クラークのオリジナル3曲、どれも魅力的だが、トミーの‘ミッドナイト・マンボ’が聴く度に何故か惹かれる。タイム盤の自己リーダー作でも良い曲を書いている。意外な才能の持主。
「クール・ストラッティン」との対決は如何に?
真打は、‘Melody For C’ x ‘Deep Night’だが。
他の3曲ならともかく、この演奏だけは相手が良すぎる。
それはともかく、この2枚、決定的な違いがある。それは、演奏から感ずる時代性です。50年代と60年代、3年以上の差だ。最後は好みの問題でしょうか。


「愛聴盤」とは、月に何回、聴くのか?なんて、野暮な話ではなく、仕分けされたレコード棚に整理されず、雑然とでもいいから何時でも手の届く所に、いつの間にか置いてあるレコードで良いのではないか?
マイルスのこの1枚はそういう意味で愛聴盤のひとつである。硬派の人たちは、眉をひそめるかも知れない。
このレコードは、禅問答ではないが、遠いようで、近く、近いようで、遠い、、ジャズ史上最高のカリスマ性を持つマイルスの本音を解りやすく、具現化した作品でもある。要するに、最上のアーティストであり、同時に最上のビジネスマンと言っていいと思う。
甘く流れてしまいそうなタイトル曲に、ハードボイルドなコルトレーンにもソロを吹かせ締めたと思えば、、ケリーにシングル・トーンで愛くるしいソロを二度も弾かせて終わる。その間を縫ってミュートで迫る、これは、
もう悪魔の仕業だ。
聴き手の心理をここまで読んだ仕掛けができる人は、マイルスを除いて他にはいない。
他の曲もバラード、コルトレーン入りのスパニッシュ等、マンネリ化を避けた心憎いプレゼンテーション。
それと、ジャケットだ。こんな風に女性をバーンとメインにしたのも彼としては初めてではないか?
ブルーノートのジャズぽさ、プレステージの男ぽさ、とはかけ離れ、タイトルに合わせたヴィジュアルは、明らかにジャズ以外の音楽ファンをもターゲットにしている。
恐ろしい男だ。
だから‘空前にして、絶後のレコード’と、僕は評価し、愛聴している。

SOMEDAY MY PRINCE WILL COME / MILES DAVIS

COLUMBIA  CS 8456

MILES DAVIS (tp)  JOHN COLTRANE * (ts)  HANK MOBLY (ts)
WYNTON KELLY (p)  PAUL CHAMBERS (b)  JIMMY COBB ( ds)
   



このレコードは、その昔、「幻の名盤」読本で紹介され、ずっとオリジナルを狙っていた。ある時、都内の廃盤屋で、これを見つけたが、レーベルは勿論、、[DAWN]だったが、裏ジャケットでレコード会社が、[SEECO(シーコ)]となっていた。
[DAWN]と[SEECO]の関係をしっかり覚えていなかった事と、[SEECO]が結構、他レーベルを再発している事が頭の中でこんがらがってしまい、結局、買うのを止めてしまった。
でもやはり、それがオリジナルのようだ。その後、一度だけ他の店で見かけたけれど、程度が悪かったので諦めたが、それから、なかなか‘縁’がない。
だから僕の持っているのは、国内盤だけど、結構、音が良いので今のところ不自由はしていない。
さて、肝心の中身は?と言えば、評判通り、素晴らしい。硬派の人は、たいした事ない、と言うが、聴き方のスタンスの違いと思う。よく、ズート・シムスと比較されるけれど、シムスの書体でいう楷書体ソロと違って
コーンのソロは、行書体だ。
楷書体の方が解り易く、一般的にインパクトが強いので人気はズートのほうがあるが、アルのソロは垢抜けしており、野暮ったく?もなく、軽妙なのだ。このあたりが分れ道。
力量がどうのこうの、と言っている訳ではないので、ズートファンの方、悪しからず。
例えば、スタンダード曲‘Softly as In ・・・・・’のスタートやソロの組立て方なんかを聴けば、その違いが顕著だ。
「ON THE SAXOPHONE」は、コーンがやはり一級のミュージシャンだと認識させる紛れも無い名盤として愛聴している。また、オリちゃんを捜そーと。

COHN ON THE SAXOPHONE / AL COHN

DAWN  DLP 1110

(SL−5133−ch)

AL COHN  (ts)  FRANK REHAK (tb) HANK JONES (p)
MILT HINTON  (b)  OSIE JOHNSON  (ds)

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(2003.2.7)

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